2021年最大の出来事は、2018年が終わったことだった 海外YouTuberの趨勢から2022年を占う

予告・総決算

2021年の米YouTube界を一言でまとめると「2018年が終わった」もしくは「2018年の後始末がようやく終わった」でした。「2018年が終わった」とはどういうことなのか、2018年と2021年を振り返りながら説明します。

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2018年に始まったもの:ボクシング

2018年のYouTubeは激震で始まりました。年始(正確には2017年の年末)にローガン・ポールが富士の樹海で撮影した動画がテレビや新聞でも取り上げられる大問題になったのです。

ローガンは出演した映画が公開延期になり1、つかみかけたハリウッドスターへの切符を失いました。キャリアの展望をなくしたローガンが放った起死回生の一手が、ボクシングマッチでした。弟のジェイクとともに、イギリスの人気YouTuber兄弟KSIとデジと戦います。この手は当たり、子ども向けYouTuberだったローガンはやや年齢層の高いファンを獲得し、YouTuberとして延命します。

2021年に終わったもの:ボクシング

ローガン・ポールが始めたボクシングはYouTuberの間で流行し、2021年6月にはThe ACE Familyの父親オースティン・マクブルームが主催するYouTuber対TikTokerのボクシングマッチが行われます。このボクシングマッチは興行的には惨敗に終わり、オースティンは巨額の負債と訴訟を抱えることになりました2

ローガン自身もボクシングマッチを続け、2021年7月には伝説のボクサー、フロイド・メイウェザー・ジュニアと対戦しています。

YouTuberのボクシングが盛り上がったように見えた2021年ですが、これはブームの終わりです。話題性において、メイウェザー以上の相手はいません。YouTuberのボクシングは金になるという伝説をオースティン・マクブルームが崩壊させてしまったのも致命的です。ローガンの弟ジェイクはボクシングマッチを続けてはいますが全く話題にならなくなりました。

ローガン・ポールを復活させたYouTuberボクシング興行は、2021年に至って袋小路に入ってしまった観があります。

ジェイク・ポールとアリッサ・ヴァイオレット(とシェーン・ドーソン)

2018年はポール兄弟の年でした。ローガンの弟ジェイクは兄以上に評判の悪いYouTuberでしたが、古参YouTuberシェーン・ドーソンドキュメンタリーシリーズに出演し、一時、評価を取り戻します。

そもそもジェイクの評判が悪くなったのは、本人の動画撮影に伴う様々な迷惑行為に加えて、女癖の悪さにも原因があります。ジェイクは交際相手のアリッサ・ヴァイオレットと同居していたにもかかわらず、日々違う女性を連れ込んでいました。アリッサはジェイクのもとを離れ、ジェイクの乱行を告発しました。

その後、アリッサはFaZe Clanの創設者FaZe Banksと付き合い、別れます。2021年、アリッサはFaZe Clanを訴えました。FaZe Clanが他社と取り交わした契約で、自分も得られるはずだった取り分が得られなかったからです。訴訟に出るのは、話題性を失い、終わってしまったYouTuberのすることです。アリッサも終わってしまったようです。

ジェイクのボクシングマッチも話題性を失い、一連のドキュメンタリーシリーズで(昔のコメディ動画の人というイメージを払拭し)復活したシェーン・ドーソンも2020年の一連の炎上による謹慎から復帰するも、動画再生回数は最盛期の1/10近くまで落ち込むなど、忘れ去られつつあります。

美容界の大物たちの栄華と失墜のサイクル

2018年、YouTube美容界には二つの星が輝いていました。一つは百戦百勝の巨星、ジェフリー・スター。もう一つは、人気急上昇中の新星、ジェームズ・チャールズです3

ジェフリー・スターが誰しも認めるYouTube美容界の第一人者となったのが2018年です。炎上をたきつけてマニーMUAを蹴落とし、影響力において自分に勝る者はいないことを誇示しました。

2019年、登録者数が急成長し、ジェフリーと肩を並べるに至ったジェームズ・チャールズが美容YouTuberのタティに告発されると、自分もジェームズの悪事を知っているとほのめかし、ジェームズの追い落としを図ります。ジェフリーはシェーン・ドーソンとの動画シリーズでコラボ商品を売り込み、空前の売上を記録しました。しかし、2020年、今度はジェフリー自身の過去の不祥事が掘り起こされ商品の売れ行きは落ち、2021年にはカリフォルニア州を離れてワイオミング州へと移住しました。ジェフリーと最強タッグを組んだシェーン・ドーソンもコロラド州へと引っ越しています。

2020年、ジェフリーの炎上によってジェームズは再び浮上しましたが、2021年、複数の未成年と性的なメッセージをやりとりしていたことが暴露され、名誉は完全に失われました。

2018年から始まったYouTube美容界のブームは2021年に完璧な終わりを迎えたようです。

次に起こることは何か

次にどのようなブームが起こるかを予測するのは至難の業です。本サイトは「次のブームは予測不能」という立場です。

しかし一方、予測可能なこともあります。どのブームが終わるかです。一つのコンテンツ、一つのブームの流行は数年しかもちません。美容YouTuber、ボクシング、炎上系YouTuberが次々と終焉を迎えたのは、2018年に始まったブームが3年で期を同じくして終わったということでしょう。

そうであるならば、次に来るのはその後に始まったブームの終わりです。

2021年は2018年に始まったブームが終わりました。2022年は2019年に始まったブームが終わる年になる可能性があります。

思い返すと、2019年にはピューディパイ(PewDiePie)がマインクラフトの人気を再燃させました。

現在マインクラフトで一番人気のプレイヤーはDreamです。2020年にはDream SMPが話題を呼び、Dreamのスピードランでのチート疑惑も話題になりました(2021年にチートを認め謝罪)。ブームが長く続かないことを考えれば、2022年にはマインクラフトの人気が終わるかもしれません。

また、最近、ハリウッドセレブやインフルエンサーのコスメ商品の発表が相次いでいますが、これは2018年と2019年のジェフリー・スターやジェームズ・チャールズの成功を見て、金の匂いを嗅ぎつけてきた投資家たちが参入しているからです。2021年には歌手のアリアナ・グランデやストリーマーのヴァルクレイのコスメ業界への参入がありました。このブームは続くように見えますが、怪しい兆候もあります。アリアナ・グランデの商品はコスメ好きからは不評で、ヴァルクレイの商品は非科学的だと批判があり異例の速さでブランドの終了が発表されました。今後の動向は予断を許しません。

2019年はTikTokerが急成長した年でもありました。ダミリオ姉妹アディソン・レイが突出した人気を得たのは2019年のことです。2020年に雨後の竹の子のように出現したTikTokハウス(クリエイターハウス)の先駆けであるハイプハウスが結成されたのも2019年です。クリエイターハウスは2021年にはとうに峠を越え、完全に下火になっています。2022年はTikTokブームとクリエイターハウスブームが真の終わりを迎える年になるでしょう。

2021年はダミリオ姉妹とアディソン・レイがそれぞれドキュメンタリー映画へ進出しました。2016年に始まったVinerブームでも、トップランナーが異なるメディアへ露出するときが流行のピークでした4。TikTokerブームは2021年に明らかにピークをつけたものと思われます。おそらく、2022年に公開されるNetflixのハイプハウスのドキュメンタリーがTikTokerの快進撃に弔鐘を鳴らすことになります。

Image: The NEW YouTube Rewind (2021)

  1. 公開延期になった映画は『ヴァレー・ガール』(2020)で、これは『ヴァレー・ガール』(1983)のリメイクである。レビューはこちら。リメイクはミュージカル仕立ての意欲作だったが、時期と話題性を失い、コロナ渦の中で公開されることになった。これに対して同じく学園映画の古典『シーズ・オール・ザット』のリメイク『ヒーズ・オール・ザット』は明らかな駄作だが、Netflixの各国ランキング1位を獲得した。理不尽と言うほかない。
  2. オースティンの弟のランドンは内縁の妻と親権を巡る泥沼の中傷合戦に入り、オースティンの妻キャサリンはスピリチュアル系にはまってオースティンとは前世で57回結婚していると口走るようになるが、これは余談。
  3. 余談だが、美容に興味を持つ人の大半はストレート女性なのに、有力美容YouTuberのゲイ男性の割合が不自然に高いのは何か構造的な問題があるように思われる。
  4. ポール兄弟がテレビ番組や映画に出演していた2017年頃。
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