これまで炎上とは無縁だと思われてきた人気YouTuberが告発される事態が発生しています。そのYouTuberとはデイヴィッド・ドブリック(David Dobrik, 24)。TV番組の司会者を務め、注目のアプリ開発者の顔も持つスターです。
デイヴィッドの動画に出演していた人たちが、2017年頃の撮影中に性的暴行といじめがあったと告発しています。本記事では告発者と告発を拡散したYouTuberたち、告発に反応する人々やメディアの声を紹介します。
筆者は長年デイヴィッド・ドブリックのファンです。そのため、本記事にはバイアスがある可能性があります。ご注意ください。
デイヴィッド・ドブリックとは
デイヴィッドは18歳だった2015年から動画を公開しています。YouTube登録者数は1880万人、TikTokフォロワー数は2630万人、Instagramのフォロワー数は1430万人です。パンデミックが米国まで広がった2020年4月を最後にメインチャンネルの動画投稿を休止しています。
最近はアプリ開発にも進出しています。“Dispo”アプリは撮った写真を見られるのは翌日の朝9時という現代では不便なアプリです。あえてその仕様にしているのは、「今の瞬間を大事にしてほしい」というメッセージを込めたかったからだそうです。Dispoはセコイア・キャピタルから$100M(約100億円)規模の投資を受ける可能性があると報道されています。
デイヴィッドはコメディ動画で人気です。デイヴィッドと彼の友人のグループはファンからはVlog Squad(ブログスクワッド)と呼ばれ親しまれています。ブログスクワッドのメンバーは全員YouTuberです。デイヴィッドとブログスクワッドが人気になったのは、動画のコントやパーティーの様子が面白かったからです。仲良しのYouTuberたちだから可能ないじりやドッキリ企画がたくさん含まれています。
ブログスクワッドのようにYouTuberがグループを作って人気になることは珍しくありません。ジェイク・ポール率いるTeam 10やFaZe Banks率いるFaZe ClanもYouTuberのグループですが、大なり小なり問題行動が批判され、炎上しています。
ブログスクワッドはTeam 10やFaZe Clanなどと比べて批判されることは少ないグループでしたが、問題がなかったわけではありません。ブログスクワッドのメンバーは10代の頃から活動している人も多く、SNSで掘り起こされる過去の問題発言や問題行動はそれなりにあります。今、告発され問題になっているのも過去の行動です。
元友人による告発
ビッグ・ニック(Big Nik)とセス(Seth Francois)がデイヴィッドを告発をしています。彼らは2017年頃デイヴィッドの動画に出演していた友人でした。ビッグ・ニックは初期のブログスクワッドのメンバーと目されることもありました。
ビッグニックの訴え
ビッグ・ニックは小人症のYouTuberです。
デイヴィッドの動画に出演していたときの「いじりがきつく精神的に辛かった」と後に明かしています。「デイヴィッドのグループはカルトのようで、みんなデイヴィッドの言いなりだった。フォロワー数で力関係が決まった。」と話しています。
さらにデイヴィッドの動画視聴者に会ったときに、動画と同じノリで外見をいじられ不快だったとも明かしています。ビッグ・ニックは2018年を最後に、デイヴィッドの動画に出演していません1。
2019年12月にデイヴィッドから私的に謝罪されたと話しています1。
セスの訴え
セスは、動画撮影中に「性的暴行」があったと告発しています。動画の撮影前に、セスはブログスクワッドのメンバーで一番の美人、コリナ・コップ(Corinna Kopf)とのキスを撮影すると伝えられていました。しかしそれはドッキリで、実際にキスをした相手は仮装したブログスクワッド最年長メンバーでおっさんYouTuberのジェイソン・ナッシュ(Jason Nash)でした。
セスは「男性とキスをすることに同意した覚えはないので、ドッキリ内容は性的暴行だ」と話しています。デイヴィッドの動画ではこの手のドッキリがよく出てくるので、動画が公開された当時は特に問題視されていませんでした2。
セスは、2020年にBLM運動の高まりを受け、ブログ・スクワッドの人種差別発言の総集編動画3を作り告発しました。
デイヴィッドとセスは私的に話し合い、デイヴィッドは謝罪して、セスが映っている動画はデイヴィッドのチャンネルから非公開になっています1。
h3h3のイーサン・クライン
ビッグ・ニックのYouTube登録者数は100万人、セスのYouTube登録者数は1万8400人です。彼らは2020年の夏からブログスクワッドでの仕打ちを告発してきましたが、2021年になるまでファン以外から注目されていませんでした。彼らのフォロワーは少なく、影響力が小さいためです。彼らの告発が知られるようになったのは古参の大物YouTuberが大々的に取り上げてからです。その大物YouTuberとはh3h3Productionsのポッドキャストを運営しているイーサン・クライン(Ethan Klein)です。
イーサンは妻イーラと夫婦で活動しているYouTuberです。メインチャンネルの登録者数は646万人です。初期は2人の動画で人気になり、際どいコメディ動画も投稿していたようです。
イーサンはデイヴィッドを告発した2人をゲストに呼び、彼らの主張を報じていました。2021年1月以降、イーサンのポッドキャストチャンネルではほぼ毎動画でデイヴィッドを強い言葉で非難しています。大物YouTuberが繰り返し取り上げたので、告発に注目が集まりました。
ポッドキャストを短く編集したクリップも投稿しています。
デイヴィッドを非難する動画の再生回数が増えている傾向があります。「性的暴行」の告発は注目度が高いので、視聴者の関心を集めているようです。
トリシャ・ペイタス
イーサンのポッドキャストが再生されているもう一つの理由が、ポッドキャストに参加するもう一人のYouTuber、トリシャ・ペイタス(Trisha Paytas)です。トリシャは以前、ブログスクワッドのジェイソン・ナッシュと交際していました。2020年末にトリシャはイーサンの妻イーラの兄(モーゼス)と婚約しています。
トリシャはYouTube動画で自分のことをチキンナゲットだと言いはり4、2020年には境界性パーソナリティ障害と診断された(本人談)1お騒がせYouTuberです。トリシャは精神的に不安定になり、誰かを糾弾する動画をしばしば投稿していますが、そこが共感を呼び、熱狂的なファンがいます。TikTokでも過激な動画を投稿して500万人のフォロワーがいます。
トリシャとイーサンが共同ポッドキャスト『フレネミーズ(Frenemies)』を始めたのは2020年9月です。それ以来、じわじわと登録者数と再生回数を増やしています。こちらはSocial Bladeのグラフです。イーサンのチャンネルの動画再生数(上)と登録者数の増加(下)です。停滞していたチャンネルが再び成長軌道に乗ったことがわかります。
トリシャのチャンネルも同様に成長しています。共同ポッドキャストでデイヴィッドの告発を取り上げるようになった2021年1月から急速に成長しています。トリシャは共同ポットキャストだけでなく自分のチャンネルでもデイヴィッドとブログスクワッドを強く非難する動画を繰り返し投稿しています3。
大手メディアの報道
イーサンとトリシャの動画で注目が集まると、大手メディアのネット記者も告発を報道しました。
ブログスクワッドへの批判が「的確」だとトリシャが注目されると、雑誌Vultureはトリシャを取り上げた記事を出しました。
Vulture誌の記事では、トリシャについて「32歳のスターが成功の秘訣を明かす」と好意的に書かれています。トリシャが最初にバイラルになった動画、テレビに出演した回数、人々がトリシャを話題にし続けるのはなぜなのか、などを紹介しています。
大手メディアの報道もあり、デイヴィッドとブログスクワッドへの批判はさらに強まりました。
SNSにはデイヴィッドやジェイソンを批判する意見が多く投稿されています。イーサンとトリシャの動画視聴者です。
こちらのボストン大学の学生新聞の記事でもこの問題が取り上げられています。
デイヴィッドが責任をとらないなら、デイヴィッドの動画を観たりマーチを買ったりするべきではない。
人気があれば精神的・物理的・性的な暴行が許されるわけではない。デイヴィッドのファンには被害者の側に立ってもらいたい。
暴行をする人は絵に描いたような悪人ではない。愉快で人気者で親切な人かもしれない。YouTuberがどうしてこれまで非難されずにいたのかを知ることは、私たちが社会の中の危険なサインに気づく助けになるだろう。
スコットの反論
現時点で、一連の告発について、私的な謝罪や動画の取り下げを除くとデイヴィッドから公式な声明は出ていません5。沈黙を破ったのはブログスクワッドの一人、YouTuberのスコットでした。2021年3月4日、スコットがセスの告発について新たな証言を投稿しています。
(2021年3月8日:削除されたYouTube動画をキャプチャ画像で置き換えました。)
それでも、2020年にセスがデイヴィッドに不快だったと打ち明けた後、デイヴィッドは動画を削除した。イーサンは、話を誇張して拡散する前に事実確認をした方が良いと思う。イーサンが拡散している話の内容が事実なのか、法廷で証明できるのかな。
スコットの動画内でセスがデイヴィッドに送った2018年のメッセージを公開しています。
スコットの動画は3月8日に削除されました。削除される直前、動画では高評価と低評価がほぼ半々でした。通常のYouTube動画は高評価が90%を超えます。イーサンとトリシャの動画を観た視聴者が低評価を押していった結果と思われます。
コメント欄には、「スコットは被害者の心の傷を無視している」、「ブログスクワッドはカルトだ」、「ブログスクワッドの頭目のデイヴィッドではなく下っ端のスコットがなぜ動画を投稿するのか。お前は黙っていろ。」、などの非難が書き込まれていました。一方、スコットのファンで事情を知らないらしき人々が、何が起こったのかわからず当惑している様子も見られました。
性的暴行なのか?
スコットの動画を受けて、肝腎なセスへのドッキリ動画は「性的暴行」なのかについて弁護士YouTuberのエミリー・ベイカーがツイートしています。
(2021年5月16日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)
2021年3月2日に公開されたエミリーの動画1時間11分から、デイヴィッドの騒動について話しています1。「性的暴行」と立証するのは困難だろう、セスの件は刑法上の「性的暴行」ではない、と話しています。※しかし民事裁判になれば話は別とも言及しています。
エミリーはブログスクワッドの撮影について、出演者がデイヴィッドの言いなりにならざる得ないような状況であったのなら過酷な労働環境だったのではないか、と指摘しています6。
イーサンとトリシャの隠された動機
一連の騒動について、YouTuberたちの意見は割れていますが、告発を正当だとみるのが多数派なようです。しかし、告発者やイーサンやトリシャの動機を疑う声もあります。YouTubeチャンネルTea Timeの意見です。
Gonna be perfectly honest. Trisha and Ethan have questionable motives. We look at anything they present with a discerning eye. Because, it’s the responsible thing to do. Seems manipulative that the only options here are “believe without question ” or “invalidate Seth”.
— Tea “Disappointed but Not Surprised ” Time (@AyeitsTeaTime) March 5, 2021
イーサンとトリシャの動機とは何なのでしょうか? イーサンはYouTube社にも強力なコネを持つ古参YouTuberですが、ここ数年、人気に陰りが出て、再生回数も伸びず、登録者数も頭打ちでした。
2020年には宿敵のYouTuberキームスターをYouTubeから追い出すためにシリーズ動画を投稿するも、失敗しています。反キームスターキャンペーンは他のYouTuberやコミュニティの賛同を得られないばかりか、自分のスポンサーを失う結果になっていました。破れかぶれのイーサンが目を付けたのが、人気YouTuberのデイヴィッドを非難し、ネガティブキャンペーンをすることだったようです。この作戦は当たり、再生回数も登録者数も伸び、みんなが話題にするポッドキャストになり活気が戻りました。
味をしめたのか、最近、イーサンはデイヴィッド以外に美容YouTuberのジェームズ・チャールズも攻撃しています。
しかし、無視されがちな告発者の声に力を与えているイーサン自身も、過去に問題行動がなかったわけではありません。こちらの動画ではNワードを連呼しています。
イーサンと商売仲間になりブログスクワッドを批判しているトリシャも問題の多い人物です。
トリシャはYouTube動画でまともな根拠もなく自分のことを黒人女性だと言い4、トランスジェンダーの男性だと言い、解離性同一性障害と言ったことがあります。トリシャの話には一貫性がなく、ウソが多く、トリシャは動画で不適切な発言をして視聴者に不快な思いをさせ、怒らせることで注目を集めてきました7。
トリシャの自称するアイデンティティーの変遷はこちらの動画にまとめられています。人種的・性的マイノリティーに対する配慮に乏しいコンテンツを投稿していることがわかります。現代の感覚からすると、なぜトリシャがYouTuberとして活動できるのか不思議です。
さらに、トリシャ・ペイタスは「炎上に口を挟むのは、金のため」と公言しています。
(2021年8月1日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)
トリシャはジェイソンとの破局後、粘着的にブログスクワッドを動画で攻撃してきました。トリシャは破局の理由をデイヴィッドのせいにしていますが、過去にジェイソンの元妻を「クソ女」と呼んだのが原因だったと話しています8。ジェイソンの子どもたちの母親である人を数十万人の視聴者が見ている動画で中傷するのは問題でしょう。
イーサンとトリシャはスコットがデイヴィッドのタトゥーを入れているのは「カルト」さながらだと批判していますが、トリシャが交際中にジェイソンにトリシャのタトゥーを入れさせたのは「カルト」にはならないようです。
(2024年8月5日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)
最近の私生活でも問題があるようです。トリシャは現在の婚約者で、イーサンの義理の兄であるモーゼスを暴行した証拠も出回っています。ポッドキャストでイーサンから状況を説明するように言われるも、ごまかしています1。
How did i NOT know Trisha was abusing her boyfriend?
I just found out about this. YIKES! Seems like she admitted to it here & next tweet the pic of the damage to his arm. pic.twitter.com/nEnonz41MK
— KEEM 🍿 (@KEEMSTAR) March 5, 2021
これはモーゼスが暴行された後の写真だとされるものです。
— KEEM 🍿 (@KEEMSTAR) March 5, 2021
トリシャと一緒になってデイヴィッドの動画を批判している視聴者がトリシャの暴行に嫌悪感を持たないのは解せません。
トリシャは金目当てで炎上を引き起こす人物ですが、このトリシャに群がりセンセーショナルな報道をしようとするメディアにも問題があります。どんなに炎上しても「無傷の(immune to cancellation)トリシャ・ペイタス」と評したVulture誌もトリシャの炎上商法の片棒を担いでいます。
このようなVulture誌の姿勢には批判が出ています。
Is this article celebrating Trisha’s blatant and intentional trolling w/ absolutely no regard for the communities she’s touching? Is this a Michael Douglas “greed is good” social irresponsibility is the new wealth thing? Is this satire? Are we missing the joke? https://t.co/gM4lv0KjMS
— Tea “Disappointed but Not Surprised ” Time (@AyeitsTeaTime) March 4, 2021
ブログスクワッドの問題を暴く記事を執筆中だというInsiderの記者の一人はトリシャのファンだとTwitterで公言しています。2020年7月から9月のTwitterプロフィールにも書かれていました。
イーサンとトリシャが金儲けに告発を利用し、メディアも炎上に加担しているのはなぜでしょう?
You wanna know why the community is so corrupt? Follow they money. This community thrives on monetized attention span. Unscrupulous creators study the social landscape, figure out what you want to hear then feed you that on loop.They don’t ask you to think, they ask you to feel.
— Tea “Disappointed but Not Surprised ” Time (@AyeitsTeaTime) March 6, 2021
視聴者が性的暴行やいじめの告発で義憤に駆られるのは自然なことです。金儲けの道具として視聴者の義憤に駆られる感情が使われてしまっているのです。ティーチャンネルもイーサンとトリシャと同じように、デイヴィッドの批判動画で稼いでいます10。Here For The Teaの投稿です。
i think it’s *funny* that trisha paytas talked shit about drama channels for YEARS and now she’s using them to support her narrative
— here for the tea (@HereForTheTea2) March 5, 2021
イーサンやトリシャの動画視聴者の感情的な意見に疑問を抱く人もいます。
“Believe all victims” comes from a good place but that’s also the mindset that got Johnny Depp painted as an abuser when he was actually the abused. Amber Heard was a “victim” until the facts were produced. Evidence, research, facts – that’s what matters in these situations.
— Cat 🍓 (@cat_cav) March 7, 2021
ジョニー・デップとアンバー・ハードは壮絶な法廷闘争を繰り広げています。当初はジョニーがアンバーに暴行するDV夫だと報道されて、バッシングを受けていました。しかし、徐々に証拠が明らかになり、形勢が逆転しました。アンバーが不倫をしていた疑惑も持ち上がり、アンバーがジョニーに酒瓶を投げつけて、ジョニーが指先を失ったことも明らかになりました。
YouTuberのボーブラックスです。
if David apologized to Seth and he took down the kissing prank video already, prior to Seth coming out with his story. What does Seth want David to do? What more can David do?
— Josh (@Bowblax) March 5, 2021
エンターテインメントとしての怒り
この騒動の告発は、エミリーの指摘するとおり、法的には問題と言えるか微妙です。道義的にも、これまで大きな問題になったローガン・ポールの樹海事件、オニシオンの性的暴行疑惑、ジェームズ・チャールズのタティとの仲違いと比べて大きいとは言えません。しかし、デイヴィッドとブログスクワッドへの圧力は日に日に高まっています。
その理由の一つが、視聴者が性的暴行やいじめや人種差別などの問題に対して高い関心を持ち、解消を願っていることでしょう。2020年にはBLM運動がこれまでにない大きなうねりを見せました。
「未来のいつか」ではなく「今ここで」正義を求める声が高まっています。正義に反すると目される人物は直ちに影響力を奪い取られます。これはキャンセルカルチャーの一つの形です。
2019年まではあまたの炎上や問題発言にもかかわらず決して力を失うことがないと思われていた美容YouTuberジェフリー・スターと古参YouTuberのシェーン・ドーソンが釈明に追い込まれる事態が2020年に発生しました。現在、彼らの登録者数の減少には歯止めがかかっていません。2020年以降のYouTubeの空気はそれ以前とは全く違ったものになってしまったようです。彼らの謝罪動画もむしろ視聴者の怒りをかき立てるばかりだったことは記憶に新しいところです。
その一因が新型コロナウイルス感染症のパンデミックでしょう。人々の怒りの感情の矛先が向かったのがジェフリー・スターであり、シェーン・ドーソンであり、デイヴィッド・ドブリックだったのです。行動を制限された人々は、YouTube上の怒りをかき立てるコンテンツを享受し、怒りをエンターテインメントとしたのです。このエンターテインメント性に気づいたイーサンとトリシャはある意味で慧眼でした。怒れる視聴者は被害者が謝罪を受け入れたとしても、法的に問題がなかったとしても、「敵」が破滅するまでは追及をやめません1。
イーサンとトリシャが正義の鉄槌をデイヴィッドに下すべしと語る動画を観た時間が長くなればなるほど、視聴者は彼らと強いパラソーシャル関係を持つことになります。彼らに感情移入すると同時に、後に引くことができなくなり、「敵」の破滅を願い怒り続けます。YouTuberはこのカラクリを利用して金を稼ぎうることを視聴者の一人一人が知るべきです。また、少なくともジャーナリストを名乗るならば、YouTuberとのパラソーシャル関係の危うさについて自覚的であるべきでしょう1。
怒りがエンターテインメントになることを見抜き、利用したイーサンとトリシャは勝者となったかのように見えます。しかし、彼らの望みの対象に視聴者が怒り続けるかどうかはわかりません。2019年にジェームズ・チャールズの地位を失墜させることに成功したかに見えたタティとジェフリー・スターは、視聴者の怒りの反転によって、2020年にはむしろその地位を失うことになり、ジェームズ・チャールズは復活しています。
イーサンとトリシャとデイヴィッドに何が起こるのかは、まだ誰にもわかりません。
【2021年3月19日追記】デイヴィッド・ドブリックの過去について、米国で暴露記事が公開されました。デイヴィッドは謝罪動画を投稿する事態になっています。
Image: Kavos The Dark Side Of David Dobrik **shocking footage**, Americas Most Musical Family
注
- 最後の出演動画。
- 当時から「気持ち悪い」「気まずい」「これはひどい」という意見がなかったわけではない。2018年3月21日のYouTuberのコーディー・コーはポッドキャストで、「デイヴィッドがセスにしたイタズラはひどい内容だった!」と話している。
- このようなYouTube動画。
- こちらの動画。
- すでに2020年のポッドキャストで不適切な発言や動画について謝罪はしているが。
- 2021年3月9日の動画で話している。
- 人を不幸にするために活動しているように見えるYouTuberである。
- こちらの動画は再アップロード。動画9分から。
- “Greed is good”(強欲は良きことだ)は映画『ウォール・ストリート』でのマイケル・ダグラス演ずるゴードン・ゲッコーの台詞。
- 筆頭はTea Spill。Tea Spillは過去1年間の再生回数が芳しくないので、騒動に加担することにしたようだ。Insiderの記者と仲が良いYouTuberアダム・マッケンタイヤーも頻々と動画を投稿しているようだ。