Reddit発のGameStop株事件の一部始終をツイート翻訳で紹介 ヘッジファンドが手じまいし取引が止まる中で不思議な意見の一致が話題に 熱狂の行方は?

社会・政治

ヘッジファンドがゲーム店の株を空売りしているのに目をつけたRedditユーザーたちが株価をつり上げ、ヘッジファンドに巨大損失を出させるも取引の強制停止を食らい、政治家を巻き込む大論争になりました。

……わけがわかりませんが、本当に起こった事件です。

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何が起こったの?

発端は、投資情報会社シトロン・リサーチ(Citron Research)1がゲーム販売会社ゲームストップ(GameStop、ティッカーコードGME)の株を「売り推奨」したことです。

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(2023年3月19日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)

近年のゲームはオンラインが主体になってきたことにパンデミックも加わり、実店舗で営業するゲームストップの業績は落ち、株価は低迷していました。

シトロンのゲームストップ株で推奨した戦略は「売り」(「空売り」)です。ゲームストップの株価が今後も下がるなら、株を現在持っている人から借りて売り、今後株価が下がってから買い戻して元の持ち主に返せば儲かります。たとえば今日$30の株を売り、明日$20で買い戻したら差額の$10が儲けになります1。これが「売り」です。しかしもちろん、株価が今後上がったら、損になります。たとえば今日$30で売った株を明日$40で買い戻したら$10の損です。

損をしないためにシトロンがとった手が、自分たちがゲームストップ株を売る理由を公表することでした。ほかの投資家たちがシトロンの説明に納得すれば、彼らも一緒にゲームストップ株を売ります。するとゲームストップ株は下がり、シトロンの売り戦略は成功することになります。一種の自己成就予言です。投資会社メルヴィン(Melvin Capital)はシトロンの戦略に沿って動きました。

これに目をつけたのがRedditのWallStreetBetsに集った個人投資家たちでした。ゲームストップ株を買いまくり、株価をつり上げます。ゲームストップ株を売っていたメルヴィンはいずれ買い戻さざるを得ません。(2021年1月31日追記:当時売られていたゲームストップ株は発行済み株式数を超えていたため、買いが集中すれば売り戦略は破綻する可能性が高くなっていました。)すると、メルヴィンが損をするだけでなく、株が買われるので株価がさらに上がります。株価をつり上げた個人投資家たちには儲けが出ます2

かくして、ゲームストップ株はオモチャになってしまいました3。主戦場はロビンフッド(Robinhood)です。ロビンフッドは株取引ができるスマホアプリです。外出制限で時間をもてあまし、給付金で懐に余裕ができた人々が大量に流入していました4

こちらのツイートで引用されている動画では異常な株価チャートを見られます。シトロンが売りを推奨してから株価がおよそ10倍になったことがわかります1。昨年比では、実に80倍です。Bloombergの記事によれば、1月25日に取引されたゲームストップ株の総額は$17B(約1.8兆円)です5

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(2021年12月6日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)

結果、メルヴィンは大きな損失を出し、資金援助を求めざるを得なくなりました。数千億円規模の損失が出たようです。

wsj.com

WallStreetBetsに集う人々はヘッジファンドをたたきのめしたと快哉を挙げます。ゲームストップの時価総額はふくれあがり、アメリカを代表する企業に並ぶほどになりました。

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(2021年11月23日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)

ゲームストップ以外に、AMCシアターズの株などもRedditユーザーが買いまくり、高騰しました。これらも投資情報会社が売りを推奨していた株です。

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人々の受け止めとその後

Twitter上ではおおむね、ロビンフッドの名にふさわしい、強欲な投資会社から一般人が金を奪い返した事件だと受け取られていたようです1

こちらのツイートではWallStreetBetsに$50K(約500万円)を$22M(約22億円)にした猛者がいると書かれています。

意味不明なツイートをしては株価を動かすので有名なイーロン・マスクがまた変なツイートをしました。

Gamestonkはこの事件を指す言葉となりました7。イーロンのツイートはWallStreetBetsの勝利を宣言したかのように見えました。

ところが、その後、WallStreetBetsは一時的に接続できなくなりました。これはヘッジファンドの仕業ではないかとささやかれます(実際にはアクセス過多でダウンした模様8)。

事態は一般人vsウォール街の億万長者の様相を呈し始めました。

2021年1月26日、米国証券取引委員会(SEC)がこの件の調査に入ると報道され、批判はさらに過熱します。

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(2021年2月15日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)
 

メディアの書きぶりにも批判が出ます1

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(2021年5月2日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)

そんな中、ロビンフッドは突如ゲームストップ株とAMC株の取引を停止します。売りもしくは買いの解消しかできなくなってしまいました。

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(2021年2月15日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)

これを受けて、批判の声はさらに高まります。

 

ロビンフッドでは勝手に売り注文が出て、「あなたのアカウントのリスクを低減するために売りました」と表示されています。

 

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(2024年6月2日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)

今回の取引停止がヘッジファンドの差し金なのか、あるいは別の理由なのかは不明です。こちらの記事にあるとおり、この件でロビンフッドは手元資金がおぼつかなくなっており、そのため取引を制限しようとしている可能性もあります1。(2021年1月31日追記:現在は清算機関に手持ちの株がなくなってしまったからだという説明がされています。)

ロビンフッドは2016年に「人々に株取引を開放しよう」とツイートしていましたが、2021年は「買えません」というメッセージが出ます。

ゲームストップ株を買っていた人たちは大挙してApp Storeでロビンフッドに低評価をつけました。

25万個の評価のほぼすべてが星1つになっています。

ロビンフッドを相手取って訴訟を起こす人も出てきました。

 

ウソや詐欺でない限り、どんな考えでどんな売買をしても自由なのが市場のはずですが9、なぜこんな発言が出てきたのでしょうか。この発言や停止措置のせいで、金持ちたちがルールをねじ曲げようとしていると感じた人が多いようです。

政治家も参戦

アレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員も批判の声を上げます。

金持ちの横暴を批判してきた左派のオカシオ=コルテス議員ですから、彼女の信条に沿った行動です。

すると、意外な人からレスポンスがありました。右派のテッド・クルーズ上院議員です。

個人の自由を奪うべきではないという米国の伝統的右派の思想からすれば、確かに取引の制限に反対するのは自然です。しかし、思想的には両極端で、これまでも対立し、先日もTwitter上でバトルしていた二人の議員に共闘の可能性が出てきたので一時騒然となりました。

宗教右派でQ信者の美容YouTuberアマンダ・エンシングが急進左派系ニュースチャンネルTYTのコメンテーター、アナ・カスペリアンツイートをリツイートする椿事も発生しました。左右両極の不思議な一致が生まれています。

バイデン大統領は左右両派に分断された国の団結を訴えて当選しましたが、前途多難です。そんな中、ひょんなことから左右両派がともに問題視する対象がみつかったようです1。それは大企業・大資本による個人の自由の圧迫でした。

オカシオ=コルテス議員の盟友、イルハン・オマル下院議員です。

今後の行方

2021年1月の水曜日は米国では大ニュースばかりだったようです。1月6日は議事堂占拠事件、1月13日はトランプ前大統領の2度目の弾劾、1月20日は厳戒態勢のバイデン大統領就任式、1月27日はゲームストップ株の乱高下でした。

ゲームストップ株が今後もこの水準を維持するのは、業績の見通しからするとあり得ません。ですから、取引が続いていたとしてもいずれ株価は元に戻り、破産する人も出てきたはずです。たとえばこちらのスクリーンショットでは総額が大きく落ち込んでいますが、取引停止がなくても時間の問題だったでしょう。

また、こちらのRedditの書き込みでは、最近妻をガンで亡くしたという男性が、ガンと粘り強く戦った妻のように株を粘り強く持ち続けシタデルやメルヴィンと戦ってくれ、と語っています。実話なら精神的に危ういものを感じさせますし、ウソで買いあおっているだけなら実にひどい話です。

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(2021年5月23日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)

いずれにせよ、バブルの末期によくある阿鼻叫喚のように見えます。こちらの記事にあるとおり、よくあるバブルをSNSが増幅したのでしょう。

チューリップバブルミシシッピ計画南海泡沫事件の時代から、バブルは永久に値が上がり続けるかのような幻想をもたらす一瞬の熱狂の後、多くの犠牲者を残します。今回の犠牲者が多くならないか心配です。ウォール街の億万長者たちに「低評価」ボタンを押すつもりで余剰資金で株を買うぐらいなら、悪くはないでしょうが10

もし取引の強制停止がなければ、この出来事は、金余りの時代に起こった奇妙な事件として記憶されただけだったかもしれません。人々が職と将来の見通しを失い、カネだけが余った時代の奇妙な事件です。

しかし、取引停止によって、ルールを自分たちの都合に合わせてねじ曲げた(ように見えた)億万長者たちへ人々の注目が集まりました。億万長者への目が厳しくなった瞬間として記憶されるのかもしれません。

金余りのもう一つの結果、クリエイターハウスについてはこちらをごらんください。

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  1. シトロンはかつてある会社を「うんこ」と呼ばわりして売り推奨したことがある、「売り」を中心とする会社である。
  2. WallStreetBetsのユーザーたちは現物だけでなくオプションも使っていたらしい。
  3. Voxの記事によれば以前からWallStreetBetsではしばしばゲームストップ株への強気な見方が出ていたようだ。
  4. 取引手数料がゼロなのでロビンフッドでは気軽に株取引できる。米国では日本と違って株式を1株単位で購入できることも障壁を下げている。
  5. 同日の東証一部の総取引額2.1兆円に匹敵する。
  6. 実際にはFortune 500は利益で決まるので仲間入りはしないし、テスラやアマゾンの時価総額には遠く及ばないが。
  7. Stonkはstock(株式)のネットスラング。
  8. ただし、損を100%自分でかぶる覚悟があるなら。
  9. この種のSNSを通じた投資会社への「異議申し立て」は今後も頻発するかもしれない。
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