ファーリー(Furry)とは動物の着ぐるみを好んだり、動物の描かれた漫画やアニメを楽しんだり、動物の姿になった自分を想像したりする人のことです。ファーリーの人々の集まるイベントをファーリーコン(Furry Con)、ファーリーの文化全般をファーリーファンダム(Furry fandom)といいます。日本でケモナーと呼ばれる趣味に近いものです。
アメリカではファーリーはサブカルチャーの一大派閥になっています。本記事では、ファーリーとファーリーファンダムについて紹介します。
ファーリーコンの様子
こちらはテキサスで行われたFurry Fiesta 2019の様子です。MV風の楽しい動画です。
着ぐるみの参加者の賑やかな様子が映っています。参加者は楽しげですが、世間一般のとらえ方は必ずしも好意的ではありません。コメント欄に否定的な見解1が多く並んでいる動画もあります。
こちらの記事でもファーリーコンがネタになっていました。
テック・教育系YouTuberのマークは、いやがらせのため、ある人物宛の偽のポストカードを大量にばらまきました。その中には「性病検査結果のお知らせ」「整形後の調子はいかがですか?」「地球平面説協会へ入会してくれてありがとう」などと並んで、「ファーリーコン参加登録完了」2がありました。ファーリーだと思われるのは恥ずかしいことのようです。
ファーリーのいろいろ
一口にファーリーといっても、いろいろな趣味があるようです。動物の描かれた漫画やアニメ(『マイリトルポニー〜トモダチは魔法〜』など3)を見るのを好むだけという人もいます。自分が人間というよりは動物であると感じている人(therian)もいます。自分は精神的には人間ではない動物だとか、妖精のようなものだと感じている人(otherkin)もいます。
こちらは「ファーリーコンに参加したファーリーにありがちなこと」という動画です。
「ホテルの部屋に引きこもって会場に行かない」「撮影ばかりしてる」「昔はよかったと言う」「風呂に入らないので臭い」などです。
ファーリーがネット上で使うアバターをファーソナ(fursona)といいます。ペルソナ(persona)のもじりです。ファーソナはオオカミ、キツネ、イヌ、ネコなどが多く、ドラゴンや想像上の動物もいます4。草食動物より肉食動物が好まれる傾向があります5。自分の性別とファーソナの性別が異なることもあります6。
ファーリーでも、(ファーリーコンの動画で目立つ)全身を覆う着ぐるみを持っている人は10%程度で、持つ予定もない人の方が多いようです7。ただし、耳やしっぽだけなどのパーツを持っている人は70%に及びます8。また、オンラインの調査ではファーリーコンなどのイベントに参加したことのない人も25%程度いて、潜在的には多くの人がファーリーのようです9。
一般の人々と比べてファーリーの人々は性的マイノリティが多くなっています10。交際相手のある人のうち、60%がファーリーファンダム内で相手を見つけています。交際相手をファーリーにしたり、交際相手の影響でファーリーになったりした人もいます11。
政治的には多様で、左派が多い傾向があります12。
自分は100%の人間ではないと感じているファーリーもいますが、多くの人は100%人間だがファーリーであると答えています13。
自分がファーリーであると家族に伝えていない人は40%ほどいます14。友人に伝えている割合は家族よりは高いのですが、これはファーリーはファーリーファンダムの中で友達になることが多いからのようです。ファーリーはほかのオタク界隈からもよいイメージを持たれておらず、ファーリーもファーリーであることを隠したがる傾向があります15。ファーリーは一般社会からも偏見を持たれていると感じています16。マークの攻撃はもし標的が本当にファーリーだったならトラウマものでしょう。
着ぐるみ入門
こちらの動画は「着ぐるみ入門(Fursuiting 101)」と題して、初心者向けにポイントを説明しています。
- 視野が狭い場合は注意。
- 写真を撮られるときはポーズを決めるべし。
- 歩くときも魅力的なパフォーマンスを。
楽しそうにはしゃぐ、悲しげにする、酔っ払う、怒る、などの感情表現をする様子も見られます。
研究(参考資料)
記事を書くにあたっては下の資料を参照しました。これは心理学者による広範囲かつ詳細な研究の報告です。1万人以上のファーリーにファーリーコンやオンラインでアンケートをとり集計しました。
こちらの動画では報告の筆頭著者のDr. Courtney “Nuka” Planteがインタビューに答えています。インタビュー当時アルバータ大学所属の研究者です。
(2024年9月29日:削除されたYouTube動画をキャプチャ画像で置き換えました。)
自分自身ファーリーで、ファーリーファンダムに入った最初のきっかけはポケモンだったと語っています。
様々なサブカルチャー・趣味がありますが、ファーリーほど自分たちの趣味嗜好に対して自覚的になることはまれです。これだけ大規模な学術的調査を行った例はほかにないのではないでしょうか。報告には、ファーリーコンも調査に協力的だったと書かれています。自己のあり方に対する関心の深さに感銘を受けます。
参考資料:Courtney Plante, Stephen Reysen, Sharon Roberts, & Kathleen Gerbasi (2016) “FurScience! A summary of five years of research from the International Anthropomorphic Research Project.” [Link]
注
- 「キモい」など。
- ちなみにFurry Fiesta 2020。
- 『マイリトルポニー〜トモダチは魔法〜』の愛好者はブロニー(brony)と呼ばれ、ファーリーとは別物として扱うべきという意見もある。参考資料のSection 8を参照。
- 参考資料のSection 3.1。
- 参考資料のSection 3.2。
- 参考資料のSection 3.6。
- 参考資料のSection 2.8。
- 参考資料のSection 2.8。
- 参考資料のSection 2.12。
- 参考資料のSection 5.1。
- 参考資料のSection 5.3。
- 参考資料のSection 1.9。
- 参考資料のSection 4.1。
- 参考資料のSection 10.1。
- 参考資料のSection 10.2。
- 参考資料のSection 10.2。