YouTubeチャンネルのダー・マン(Dhar Mann)が炎上しています。
ダー・マンのYouTube登録者数は1780万人、総再生回数は100億回を超えます。チャンネルには子ども向けの道徳教材のような動画を投稿しています。『貧乏な彼氏を振った彼女が数年後後悔した理由』や『金持ちママが貧乏ママをいじめて後悔した理由』などの動画です。
大人からすると見え見えの展開ばかりなのでよくいじりの対象になっていますが、動画のコメント欄の子どもたちらしき書き込みは概ね好意的です。台詞が単純で、語りもゆっくりなので、英語学習に使っている人もいるようです1。
ダー・マンの動画には毎回複数の俳優が出演しています。出演する俳優は動画の内容によって変わり、何度も出演する俳優もいれば数回だけ出演していなくなる俳優もいます。
今回、ダー・マンの出演してきた俳優たちが「家賃を払えないほどの低賃金」を理由にダー・マンに待遇改善の抗議活動をしています。俳優たちはダー・マンとの話し合いの場を求めていたようですが、ダー・マンが応じる姿勢を見せないので抗議に出たようです。
俳優たちの訴えはTikTokやYouTubeでも紹介され、ダー・マンを批判する人も多く出てきました。
批判の声が高まるとダー・マンはInstagramに釈明を出し、俳優たちの主張に全面的に反論しています。
ダー・マンの常連俳優が声を上げる
ダー・マンへの抗議が広く知られるようになったるきっかけは俳優のコリン(Colin A Borden)1のTikTok動画です。
彼は「ダー・マンのチャンネルに4年ほど出演してきたが、ダー・マンの動画に出演している俳優は誰一人として家賃を払えるような充分な給料を受け取っていない。みんな社員ではなくフリーランサーの扱いで、生活は不安定。同じ悩みを共有している俳優たちと、ダー・マンと直接話し合いをしたいと申し込んだが、何度も延期された。」と話しています。
過去に待遇改善のために意見を出した俳優たちは、クビになったとも告発しています。
コリンと同じく声を上げている俳優はチャールズ(Charles Laughlin)1やメア(Mair Mulroney)1などです。
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彼らの声を集めてYouTuberのジャーヴィス・ジョンソンは動画を投稿しています。
ダー・マンのコンテンツは複数のプラットフォームに投稿され、どれも再生回数が多いようです。収益が増えるにつれ本社ビルのスタジオは巨大になり、社員も大量に雇用しているのに、俳優の待遇は改善しないのはおかしいと指摘しています。
一方、ダー・マンを擁護する俳優も
待遇改善を求め、抗議活動に参加する俳優がいる一方、ダー・マンを擁護する俳優もいます。キャサリン(Katherine Norland)です1。
彼女は自身をC級、D級の俳優だと話しています。映画俳優がA級、テレビ俳優がB級で、その下だそうです。
俳優の下積み時代の苦労を交えつつ業界の状況を説明しています。「1日100件の面接を申し込んで良ければ一週間に1件の面接が入り、仕事につけるのは1か月に1回の生活が俳優の下積み。」だそうです。これと比べると、ダー・マンのスタッフから「このような企画があります」とメッセージが送られ、自分で出るか否かの選択ができる今の状態は夢のようだと話しています。
米国の俳優・芸能人は組合に属して企業側と交渉し、給与の規定を作っています。しかしこの組合に属していても、俳優業だけで食べていけるのはたった3%だそうです。
キャサリンは、「ダー・マンの会社はまともで、給与の振り込みも早いし、撮影現場の問題点を指摘すれば1,2か月で改善されていることもある(例:スナックは健康志向の物を希望、鏡台が欲しい、ヘアセットの場所が欲しいなど)。さらに個人的な話だが、ビーガンなのでお誕生日ケーキをビーガン仕様のもので祝ってくれたり、パンデミックで撮影ができない時期に特製バスケットが送られたりもした。」と明かしています。
さらに「俳優たちは社員ではないので、それぞれの企画に参加する前に給与も拘束時間も明示され、納得した上で企画に参加している。その給与では暮らせないなら副業を入れれば良い、現場が合わないのならならダー・マンの仕事をしなければ良い」という意見です。
ダー・マンの動画に出演した俳優のなかでも、いろいろな意見があります。キャサリンがこれまで参加した現場のなかでは(業界で仕事をして18年)ダー・マンの撮影現場はかなり良い待遇だったとも話しています1。
ダー・マンの反論
俳優たちの賛否両論がSNSに投稿され議論が広がり始めると、ようやくダー・マン本人がSNSに声明を発表しました。抗議をしている俳優たちに全面的に反論している内容です。
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反論はおよそこのような内容です。
抗議活動をしている俳優のなかには数年間ダー・マンで仕事をしていない人がいる。ダー・マン・スタジオはこれまで数千の俳優と仕事をしてきたが、抗議活動をしている俳優はごくわずかである。話し合いの場にはそもそも自分は参加しない予定だった。その後、自分や家族、会社への中傷行為があったので話し合いには応じないと決めた。
俳優たちには撮影終了後72時間以内に給与を振り込んでいるし、セリフがある俳優には時給33ドルから44ドルを払っている。今日、俳優たちと今後の改善点について話し合いをした。
ダー・マン・チャンネルを立ち上げた理由はポジティブなメッセージを広めるためだ。抗議活動をしている俳優へ向けた中傷はやめてほしい。
一方、抗議をしている俳優たちも記者会見を開いています。相変わらず、抗議活動をしている俳優との話し合いにはダー・マンは応じていません。
地域や業界で労働慣行は違うので、どちらが正しいのか判断するのは難しいと感じます。ジャーヴィスはIT業界の常識からするとおかしいと判断しているようですが、俳優業界にいるキャサリンの意見はまた異なります。
今後、抗議をした俳優たちはダー・マンのチャンネルから姿を消すのでしょうか。彼らが望み通り正当に扱われればよいと思います。