やや旧聞に属しますが、NFTアート(クリプトアート)の話題です。
NFT (non-fungible token)アートもしくはクリプトアート(crypoart)とは暗号通貨の技術を応用したデジタル芸術作品のことです。デジタル作品は通常、コピーが簡単にできてしまい、所有権がはっきりしません。NFTアートは所有権をはっきりさせる仕組みです。詳しくはこちらの記事をごらんください。
今回は、デジタル作品に所有権を設定できる画期的な技術としてNFTアートは最近ブームになりました。作品には高値がつくこともあります。NFTアートを売り出したセレブとYouTuberを紹介します。
NFTアートのブーム
ゲーム用のカードやお菓子のおまけなどトレーディングカードは、発売から何十年も経って人気が高まり、当初の何万倍もの価格がつくことがあります。NFTアートはトレーディングカードのように取引ができるので、コレクターアイテムになって価値が上がることが期待されています。
NFTアートには多くの有名な人物や組織が参入しています。NBAは試合のハイライトシーンを集めたNFTアートを販売するサイトTOP SHOTを昨年から運営しています。ゴールデンステイト・ウォリアーズも過去の有名な試合のチケットなどを販売する予定です。
参入するセレブ・YouTuberたち
こちらの記事で取り上げた美容YouTuberのジェフリー・スター以外にも、多くのYouTuberが参入しています1。
ローガン・ポール
ローガン・ポールは自身がポケモンカードのコレクターで、高価なカードボックスも購入し、開封の様子を動画にしています。こちらの動画のタイトルは「ポケモンカードに$2,000,000(約2億円)使った」です。
ローガンのポケモンカードの動画はカナダ急上昇ランキングの1位になったこともあります。
そんなローガンが売り出したNFTがこちらです。
なんと、カードボックスの開封の瞬間の動画を売り出しています。最高で$38,500(約400万円)の価格設定ですが、全て売り切れています。ポクシングをするローガンを描いたポケモンカード風のものも売り出しています。
ジェイク・ポール
ローガンの弟、ジェイク・ポールもNFTを発売しています。
ジェイクが売っているのもローガンと同じようなボクシングに関する画像です。最高額$5,000(約50万円)ですが、こちらも現在は販売が終了しています。兄貴に比べて販売価格が控えめなのは、信用がなく、ファンの年齢層が低いからでしょうか?
ジェイクは「自分がインフルエンサーになった秘密を教えます!」と称して子どもたちに中身のないオンライン講座を売り出した前歴があり、このNFTも荒稼ぎの手段として目をつけたのでしょう。
グライムス
イーロン・マスクとの間に昨年、男の子が誕生したアーティストのグライムス(Grimes)もNFTアートを売り出しました。
こちらのサイトで販売されています。グライムスのきょうだいのマック・ブーシェイ(Mac Boucher)の手になる作品です。NFTアートは絵画に限らず、音声も販売できるのですが、今のところ楽曲はないようです。
アゼリア・バンクス
ラッパーのアゼリア・バンクスが売り出したのは音声ですが、楽曲ではありません。なんと、元婚約者のアーティスト、ライダー・リップス(Ryder Ripps)とのセックスの音声です。
一点もので、約180万円で売れました。その後、購入者は$260M(約300億円)で再度売りに出したそうです。
もしこの額で売れれば歴史に残る高額の芸術品ということになりますが、その後売れたという報道はありません。
その他のセレブたち
そのほか、こちらの記事にNFTに参入したセレブが紹介されています。パリス・ヒルトン、リンジー・ローハンなどです。
セレブではありませんが、こちらのミーム画像で有名な女の子の写真もNFTアートとして$500,000(約5000万円)で売れたそうです。
(2021年5月16日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)
余談ですが、この有名な写真がどのように生まれたかはこちらの動画をごらんください。
ブームは続くのか?
アゼリア・バンクスの売り出した音声は奇抜で話題性もありますが、その他のYouTuberやセレブが売り出した作品はどれもあまり高い価値がありそうではありません。物によってはあっという間に電子紙屑になりそうです。特に詐欺師系YouTuberジェイク・ポールが手を出しているところに危うさを感じます。
とはいえ、ファンなら欲しがるのかもしれません。トレーディングカードも、一見すると無価値そうなただの紙屑のようなものばかりですが、コレクターは高値で買いたがります。価値があると思う人が一定数いて、そこに市場がある限り、価値があることになります2。
しかし、セレブやYouTuberのNFTがポケモンやNBAのカードと違うのは、彼らの人気が何十年も続く保証はないことです。彼らが忘れられてしまえば、彼らの作ったNFTアートにも誰も見向きもしなくなるでしょう。特にYouTuberは、人気の短さを考えれば、やや危ういように感じられます2。それでも売り切れしまうのは、バブル末期の現象のようにも見えます。GameStop株のバブルは記憶に新しいところです。
一部の過熱を見るに、NFTアートは好事家と投機家のおもちゃになっているようです。特に過熱しているのはNFTアートそのものよりもNFTアートの報道であるらしく、ますます危うく見えます。
最後に、こちらは人気トークショー司会者エレン・デジェネレスがただの自撮りNFTアート、題して『猫の落書きを持つ女』を売り出したというニュースに接したYouTuberクリスト・アイヴァリスの感想です。
We live in hell https://t.co/X7hn0XumZl
— Christo Aivalis 🌹🍊 (@christoaivalis) April 27, 2021
知名度さえあれば意味不明な金儲けができるのは確かに地獄めいています。