YouTubeは動画を削除することがあります。動画が削除されれば広告収入は発生しませんから、YouTuberにとっては死活問題です。削除はどれぐらいの確率で発生するのでしょう? また、異議申し立てをしたらどれぐらいの確率で動画は復活するのでしょう?
今回は削除される動画の数と復活率を紹介します。
動画が削除される割合
YouTubeコミュニティガイドライン(英語版、日本語版)によれば、2019年の10月から2020年の9月までの1年間に削除された動画は約3000万本です。
これは投稿された動画のうち何パーセントなのでしょう? YouTubeによれば、YouTubeには毎分500時間以上の動画が投稿されています。これは1年間ではおよそ157億分となります。仮に1本30分とすると5億本です。すると、削除されるのは投稿された動画のうち数パーセントということになります。
削除の理由は何でしょう? コミュニティガイドラインの違反が理由ですが、詳しくは、「児童の安全にかかわる問題」、「スパム、誤解を招く表現、詐欺」、「ヌードや性的表現」、「暴力的または生々しい描写」などで、これらが90%以上を占めます。
もし悪質だと判断されると、動画一本の削除では終わらず、チャンネルがまるごと削除されます。2019年の10月から2020年の9月までの1年間に削除されたチャンネルは約800万個です。
動画の削除はどのように行われるのでしょう? 一般のユーザーがガイドライン違反を通報することもできますし、NGOや政府機関による通報もあります。しかし一番多いのは自動判定で、90%以上が自動判定で削除されています。
YouTubeには日々、膨大な数の動画が投稿されていますから、一つ一つ人間が目で見て判定するのは現実的ではありません。そのため自動判定が使われています。自動判定は人力による判定よりも素早いのも利点です。その結果、削除された動画の40%は視聴回数0、つまり誰も見ていないうちに削除され、約75%が視聴回数10以下で削除されています。不適切な動画が誰の目にも触れないうちに削除されるのはよいことでしょう。
このように自動判定には多くの利点もありますが、ときには誤判定も発生し、無害な動画が削除されてしまうこともあります。
たとえば無害な動画が削除されてしまい問題になった例はこちらの記事で紹介しました。
着ぐるみの集団が登場するネタ動画なのに削除されたとYouTuberのpenguinz0が声を上げ、ほかのYouTuberも同じ動画を投稿してみたら同じく削除されてしまったという事件でした。
原因不明の理由でチャンネル全体が非収益化されてしまった事件も過去には起こっています。
タイトルに特定のキーワードが入っていると動画が削除はされないまでも広告はつかなくなる(収益化できなくなる)ことも判明しています。
これらはすべて自動判定の不具合によるものだと思われます。
自動判定以外でも、大物YouTuberに都合の悪い動画をファンが通報して消させたり、YouTube内部とコネのあるYouTuberが自分を批判した動画を消させたりする騒動もよく起こっています。
復活の可能性は?
本来ガイドラインに違反していない動画が削除されてしまった場合は、再審査を請求できます。2020年7月から2020年9月の3か月間では、約790万本の動画が削除されましたが、うち約21万本は再審査の要求がされました。意外なことに、これは削除された動画のうち3%未満です。削除された動画の多くでは、アップロードした人もガイドライン違反がわかっていて、異議申し立てをしないようです。
再審査を要求すれば動画は復活がするのでしょうか? 再審査された21万本のうち、動画が復活したのは約8万本(約40%)です。削除された約790万本と比較すると、復活するのは約1%ということになります。狭き門です。
削除するべき動画を見つけるのは自動判定ですが、最終的な判断を下すのは人間(モデレーター)です。モデレーターは不適切な動画を見なければならないため、PTSDになる場合があると報道されています。
誤って削除されるクリエイターの生活のためにも、モデレーターの健康のためにも、よりよい判定システムが望まれます。