米国政府が国内でのTikTokの禁止を検討していると報道されました。FOXのインタビューにポンペオ国務長官が答えたものです。
インタビューで国務長官は、TikTokは中国の企業1のアプリであり、中国では企業は究極的には政府にコントロールされているため、個人情報が中国政府に奪われる可能性があると指摘しています。そのため、TikTokを禁止する可能性を政府で検討していると述べています。
同様の懸念のため、インド政府はTikTokを含む中国企業のアプリを複数禁止しています2。
これに対してTikTok側は、「米国の法律に従って個人情報を守っているのでセキュリティ上の問題はない」と答えています。
もし米国でTikTokが禁止されると何が起こるでしょうか? 言い換えれば、米国のTikTokerがTikTokを使えなくなると、彼らはどうするでしょうか?
その答えは、TikTokと似た動画アプリがかつてサービスを停止したときに何が起こったかを見ればわかります。
2017年1月、動画アプリVineがサービスを停止しました。Vineは6秒間の動画をループ再生するアプリで、投稿者はVinerと呼ばれていました。莫大な広告収入を稼ぐ人気のVinerもいました。
レレ・ポンズ、ローガン・ポール、ジェイク・ポール、デイヴィッド・ドブリック、ライザ・コーシー、コーディ・コーなどのVinerはVineがサービスを終了すると大挙してYouTuberになりました。
VinerたちはVineのファンを引き連れてYouTubeに上陸し、急速に登録者数を増やし地位を確立しました。
VinerたちはVine動画の一発芸やドッキリ動画(prank)のスタイルをYouTubeに持ち込みました。これをViner Invasion(Vinerの侵攻)と言います。彼らの登場はYouTubeの新時代を画するものでした。
彼らはThe Game Theorist (Matthew Patrick)によればYouTuber第4世代です。彼らがYouTubeに参入したのは2016年から2017年のことでした。
Vinerの中にはVineほどの人気をYouTubeでは保てず消えていった人、YouTubeでVine以上の人気を集め映画や音楽業界に進出した人、大人気になった末に炎上してしまった人などがいます。Forbesの記事では2018年には元VinerのYouTuberの動画再生回数は鈍化したとあります。
おそらく、TikTokerは大量のファンを伴ってYouTubeに進出し、YouTubeのカルチャーに彼らのスタイルを持ち込み、それはいずれYouTubeの一部になってゆくでしょう。
TikTokerには、知名度があるうちに他のプラットフォームに活動の場を確保しておいた方が安全だという思惑がありそうです。YouTubeも、しばらく前からTikTokerを優遇し、TikTokerの動画を急上昇に入れています。これはYouTubeがVinerを取り込み成長したように、TikTokerを取り込んでさらに成長することを狙っているためだと思われます。
こちらの記事の後半で紹介していますが、YouTubeのCEOスーザンが「特定のクリエイターを優遇して登録者数を増やすのは簡単だ」と話している動画もあります。
米国が本当にTikTokを禁止するかどうかは不明です。ポーズだけをして政治的圧力をかけようとしているのかもしれません。いずれにせよ、YouTubeは新規のクリエイターとファンを常に取り込もうとしていますから、TikTokerの流入はこれからさらに加速していきそうです。