人気YouTuberのリリー・シン(Lilly Singh)についてYouTubeで語っている人が多いので、紹介します。コメディのセンスが悪いという批判も、YouTuber出身の輝かしい出世頭という声援もあります。彼女がどのような点で批判されているのか、動画とともに紹介していきます。
リリー・シンとは?
リリーはカナダ出身の1988年生まれ(36歳)。2010年からチャンネル“IISuperwomanII”に動画を投稿しています。
移民二世であることや自分のルーツをネタにした動画“Types of Parents”や、女性のお出かけ前の準備に時間がかかることを皮肉った動画“How Girls Get Ready…”などのコメディ動画で人気になりました。リリーの実姉ティナもチャンネル“MOM BOSS OF 3”でYouTuberとして活躍しています。
こちらは『ブラウン女子と白人女子の違い(The Difference Between Brown and White Girls)』と題された動画です(リリーはインド系なのでブラウンと自称している)。
お酒の強さ、デートの仕方、親との会話の仕方、映画を見るときの反応の違い、などをネタにしています。人種のステレオタイプをユーモラスに描いています。動画が公開されたのは2013年です。
“IISuperwomanII”の登録者数は1490万人、Vlogチャンネル“Lilly Singh Vlogs”の登録者数は292万人です。2019年にはNBCの深夜番組の司会者に大抜擢されています。“A Little Late with Lilly Singh”は2019年9月18日から放送開始1しました。
YouTuberのキャリアも長く、ファンも多く、テレビ番組の看板も務め大活躍のリリーですが、最近ほかのYouTuberからの評判はよくありません(深夜番組の評価も悪い)。
リリーはマイノリティ
こちらはYouTuber、ジェイ・オーブリー(j aubrey)の動画です。
リリーが深夜番組の司会者に抜擢されると、メディアは「人種的マイノリティで、バイセクシャル2でもあるリリー・シンが起用された」と報道しました。歴代の司会者がストレートの白人男性ばかりであったからです。
こちらの“A Little Late with Lilly Singh”の動画です。
動画では「現役の深夜番組の司会者と同じ部屋に私とハサン・ミンハッジ(Hasan Minhaj)3がいたら、私たちはIT部署の人に間違われちゃうね。」とリリーはネタにしています。インド系はITに強いという人種ステレオタイプのジョークです。
批判されているのは、このような白人男性が優位な現状を皮肉りまくる内容のようです。
「番組の脚本家は人種のマイノリティしか起用しない」と話しているコントもありました(ジェイ・オーブリーの動画、11分15秒から挿入されている)。ジェイ・オーブリーは動画で「人種にこだわるより、職業に適した資格や能力を見極めるのが大事でしょう。アイデンティティ・コメディに傾倒しすぎ」と批判しています。
ジョークを盗んだ?
別の方面からの批判もあります。こちらはYouTuberのアイナバー(iNabber)の動画です。
リリーがコメディアンのジョークを盗んだことを紹介しています。
元彼がずっとスマホいじってたの。スワイプ、スワイプ……「あなた、指の使い方知ってたんだね」って言ってやった!
ジョークを盗まれたスタンダップコメディアンのツイートです。
うまいジョークだけど、聞いたことない?
(2023年1月22日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)
思い出した! 私がコメディ・セントラルで披露したジョークだ。
私のジョークでは「寝た相手はコメディアン」って言ってるけど、リリーは「彼氏」に言い換えてる。無駄に自慢してるよね4。
(2023年1月22日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)
リリーの番組は多くの脚本家が知恵を出し合って、制作されています。リリーの番組なのでリリーが批判されましたが、本当は誰かほかの脚本家の案だったのかもしれません。
リリーはコメディアンではない
批判派の論点が整理されているYouTuberドリュー・グッデンの動画を紹介します。
ドリューが指摘しているのは以下のとおりです。
- リリーは繰り返し同じギャグを言っている。「白人男性ではない司会者リリー」を強調しすぎ。
- 観客の笑い声が不自然。オチではないのに笑う。
- 番組を台本で固めすぎ。フリートークはなく不自然。
- リリーはスタンダップコメディアンではない。リリーが人気になったのはYouTubeの子ども向けのコメディ動画。
- リリーの自己顕示欲が暴走している。YouTubeで人気者になったリリーは、YouTube以外の場でも成功できると勘違いした。しかし、現実は甘くない。
- YouTuberが公開している批判動画やレビュー動画を「意地悪な動画」と一蹴し、建設的な意見を聞こうとしない。改善する気はないのか?
厳しい意見です。他の深夜番組の司会者とリリーの違いを指摘しています5。
リリーのファン
批判の声も多いのですが、リリーには熱狂的なファンもいます。ファンは子どもの頃から親子で楽しんできたリリーの活躍をとても喜んでいます。動画の最後にはファンを番組の観覧に招待しています。
多くのファンがリリーのコメディ動画に共感してきました。こちらの動画でコメントしているファンの多くはマイノリティです。知名度ゼロから出発したYouTuberが全国放送のテレビ番組の司会者にまでなった躍進を、自分のことのように感じているようです。YouTuberは他のセレブと比べると知名度は低いかもしれませんが、熱狂的なファンが付きやすい特徴があります。ファンたちは、YouTuberを友達のように感じたり、YouTuberの動画から勇気を与えられたり、YouTuberと同じ悩みを乗り越えたりします。ファンたちにとってYouTuberはそのような存在なので、応援する気持ちが湧くのは自然なことです。
コメンタリーYouTuberからは厳しい意見がありますが、昔から見てきたファンは変わらず応援しています。「試行錯誤を繰り返し、失敗から学び、諦めないことで今の自分がある」とリリーは話しています。
個人的な意見ですが、リリーは肩に力が入りすぎているように見えます。女性で、人種的マイノリティ出身で、性的にもマイノリティであることで、多くのマイノリティの熱狂的な支持を受けていますが、本人も気負いすぎてしまっているようです。余裕がないとコメディで人を笑わせるのは難しいのではないでしょうか。リリーが気負わずみんなを笑わせることができるようになればと思います。
Image: onur yolcu, stirling, OUR STUPID REACTIONS
参考:YouTube stars rarely break into mainstream entertainment despite being worshipped by millions of fans. Here’s why they might be better off online.