Childish Gambino(チャイルディッシュ・ガンビーノ)による歌、『This is America』を大学生が見る動画の紹介です。
やわらかなギターのしらべから一変、銃で男性を撃ち殺します。ここで、遺体はずるずると引きずられて(酷い扱い)いきますが、銃は丁寧に布で包まれて持っていかれます。銃社会において、人命の優先順位が低いことを暗示しているのでしょうか。
銃で撃つ直前の不自然なポーズはこちらとよく似ています1。
ミュージックビデオの中で学生が踊っているのは、「実社会で起っている深刻な問題から目を背けるポップカルチャーの存在」と大学生は解釈しています。「同時にたくさんのことが起っているので毎回見るたびに新しいことに気付く」そうです。
二回目はマシンガンで聖歌を歌う人々を撃ちます。「チャールストン銃乱射事件2を思い出したので、胸が締め付けられる思い」と話します。最後は恐怖で満ちた顔で走って行く場面で終わります。
ここから、論争を呼んだ場面についての話に入ります。
「銃による暴力、警察による蛮行が背景で起っているなか、ジム・クロウ1を模した格好(人種差別の象徴)をしたChildish Gambinoが登場するのはどういった意図があると思いますか?」
「あらゆる良い変化が起っていると思いたいけど、実際は何も変わっていないことを表現したいのだと思います。」「ジム・クロウは当時笑い者にするために(白人が黒人の扮装をしたけれど)Childish Gambino自身がその恰好をする事により、もう誰にも馬鹿にされない、と言いたかったのではないでしょうか。」「多くの人がこの事実を知らないので、芸術家として啓蒙したかったのではないでしょうか。」などの意見が出ました。
次は中盤の場面についてです。暴動が起っているように見えます。黒人のアーティストが活躍しているときは皆注目しますが、実社会で困窮している黒人(一般の人々)の問題については、存在しないかのように扱います。
「Black Lives Matter運動は黒人についての運動だけではなく、ラテンアメリカ人やその他の人種の運動すべてに影響している」と話します。
This a celly (cellyはcellphone、の略です。スマホですね。)That’s a tool(tool、道具)と歌詞にふれ、目撃した一般人が「警察による蛮行の動画を撮ることが、不正を告発する手段になっている」と語ります。
白い馬が駆けて行く場面で、あれはヨハネの黙示録の四騎士1の第四の騎士3に違いないと話します。「たくさんの問題で、人々が亡くなってるのに、誰も何もしようとしない、それが私たちの生きている社会だ」と大学生は話します。
最後に、「ポップカルチャーや娯楽には人々は反応しますが、政治的なこと、悲惨な事件については避ける傾向にあります。」というコメントが出ました。
このような衝撃的な作品をあえて人気アーティストが世に出す事で、実社会で起こる事件について、人々に強制的に議論させる(根本的な解決には至らなくても)機会をChildish Gambinoは与えたかったのではないでしょうか。
注
- ジム・クロウ、ジム・クロウ法についてはジム・クロウ法のWikipediaページ。
- チャールストン銃乱射事件は 2015年、チャールストン、サウスカロライナ州の黒人教会で銃が乱射され、出席していた無防備な男女9人が死亡した事件。動機は白人至上主義者による人種差別に基づくヘイトクライム(憎悪犯罪)だった。教会はアメリカ最古の黒人教会として知られ、地域コミュニティの公民権運動の中心地でもあった。Charleston church shooting Wikipediaへ(英語版)
- 「ヨハネの黙示録」第6章第8節に記される、第四の封印が解かれた時に現れる騎士。青白い馬(蒼ざめた馬)に乗った「死」で、側に黄泉を連れている。疫病や野獣をもちいて、地上の人間を死に至らしめる役目を担っているとされる。(Wikipediaより)