アイオワ州党員集会の結果発表が遅れた理由を解説 アプリの不具合と怪しいウワサとは?

社会・政治

アメリカ大統領選挙の民主党の候補者選びに予期せぬ暗雲が立ちこめています。

2020年2月3日、アイオワ州からアメリカ大統領選の民主党予備選挙が始まりました。共和党の現職トランプ大統領への対抗馬を全国でこれから数か月かけて選びます。

Campaign 2020: Iowa Caucuses Get Democratic Race Underway Tonight

アイオワ州で何が起こったのでしょうか? それは、

  • いっこうに発表されない結果
  • 勝手に勝利宣言をする候補者
  • 集計システム開発会社の黒い疑惑

でした。以下、アメリカでの報道に即してお伝えします。

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アメリカ大統領選の仕組みをおさらい

詳しい方はこの節は読み飛ばしてください。また、用語を知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

アメリカ大統領選の仕組みと英単語をアニメと動画授業で解説 YouTubeで英語(6)
2020年はアメリカ大統領選の年です。選挙に向けて報道が増え、YouTuberも社会・政治を扱う人は話題にすることが多くなります。大統領選の仕組みは複雑で、特別な用語もあります。動画で勉強しましょう。 やさしいアニメ動画 選挙の仕組みを説明...

2020年はアメリカの大統領選挙の年です。候補者は二大政党の民主党と共和党から出ます。共和党の候補者は現職トランプ大統領です1。民主党の候補者はこれから各州の予備選挙を経て7月に決まります。最初の予備選挙がアイオワ州の党員集会です。

民主党から名乗りを上げている主要な人物はバーニー・サンダース、ジョー・バイデン、エリザベス・ウォーレン、マイケル・ブルームバーグ、ピート・ブティジェッジ、エイミー・クロブシャーです(数日前のNBCニュースの調査の支持率順)。

集会はアイオワ州内の2000近い予備選の選挙区(precinct)で行われ、集計されます。

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「何かがおかしい」

党員集会は2月3日、アイオワ州内の各地で行われ、午後8時に終了しました。ただちに集計が始まるはずでしたが、何らかの異常が発生しました。

当初、「何かがおかしい」「品質管理のために手間がかかっている」などと報道されていましたが、判明したのは集計システムの深刻な問題でした。

CBS News: Results In Iowa Caucuses Delayed

原因は今回始めて導入されたスマートフォンのアプリでした。プロセスの透明性を上げるために、各地区の集会から州民主党本部へ集計結果を送るアプリが導入されたのです2。しかし、方々の集会でアプリをダウンロードできない、アプリにログインできないという問題が起こりました。

今のところ、アプリの不具合はサイバー攻撃によるものではないと報道されています。

How Do The Iowa Caucuses Work, And Why Are They So Important? | TODAY

このアプリは今後ネバダ州の党員集会でも使われる予定です。アプリにセキュリティ上の問題があることは以前に指摘されていたようです。

勝ったと叫び始める候補者

党員集会の後は、候補者たちが支持者に向けて演説をするのが慣例です。結果が発表されないことにしびれを切らした候補者たちが、「自陣営の勝利を確信している」と支持者を鼓舞する演説を披露し始めました。

そんな中、一線を越えてしまったのが主要候補の中でもっとも若いピート・ブティジェッジ元サウスベンド市長です。

Buttigieg claims victory amid delayed Iowa results

(正式発表は何もないのに)勝利宣言をし、「今夜、アイオワは新しい道を選び取った」と熱っぽく語り、夫を未来のファーストジェントルマン3とたたえました。陣営を元気づけ、資金を集めるためです4

これは危険な賭けです。結果が正式に発表されるまでは、資金と印象でほかの候補を圧倒できます。しかし、もし実は敗北だったとなれば、笑いものです。

誰が勝者なのでしょうか? それはまだ発表されていません。しかし敗者は明らかです。こちらの記事のタイトルにあるとおり、「アイオワ州民主党本部」です。

So far, there's only one loser in Iowa: The state's Democratic Party
Analysis: Iowa's colossal inability to count its Democratic caucus votes threatens to end its first-in-the-nation status...

(2020年2月20日追記:再集計の結果、代議員獲得はブティジェッジ候補が僅差で勝利しました。)

アプリを開発した会社の黒いウワサ

アプリを開発した会社が怪しいという意見もあります。

こちらのスクリーンショットでは、Shadow社で働く人々(COOやCTO、マネージャーなど)が、ヒラリー・クリントンの選挙活動に関わっていた職歴が明らかにされています。

 

(2020年5月24日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)
 

 

バーニー・サンダースやエリザベス・ウォーレンを支持する左派は、ヒラリー・クリントンやピート・ブティジェッジなどの民主党主流派に対する強い不信感があり、この件を強く非難しているようです。これが正真正銘のスキャンダルなのか、欠陥アプリと目立ちたがり屋が即興で繰り出した茶番劇なのか、続報が待たれます。

参考:Live Blog / Iowa caucus live updates: Results and analysis from the first 2020 Democratic contest

  1. 実際にはほかの候補も出ているが、まったく勝ち目がない。
  2. 紙とペンで記録し、電話をかけることも可能だが、アプリが推奨されていた。
  3. ブティジェッジ氏は同性愛を公表し、同性婚をしている。
  4. 勝ち馬に乗るため、優勢な候補に選挙資金が集まる傾向がある。
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