2021年9月1日、Twitchで相次ぐ「ヘイト・レイド(hate raid)」に抗議するために、一部ストリーマーが一斉ボイコットを予定しています。「ヘイト・レイド」はストリーマーに嫌がらせのコメント(人種差別的な内容)を連続で投稿する行為を指します。Twitchでは人種マイノリティや性的マイノリティのストリーマーを標的にしたヘイト・レイドが問題になっています。
レイドとは、またヘイト・レイドとは
レイドはTwitchストリーミングの機能の名前です。あるストリーマーが、視聴者を別のストリーマーに誘導する(送り込む)のがレイドです。本来raidは「襲撃」という意味ですが、視聴者が大量に押し寄せる様子をゲーマーが多いTwitchらしく襲撃と表現したものです。日本語ではカタカナでレイドと表記することが多いようです。
仲のよいストリーマー同士が視聴者にお互いの宣伝をしあったり、視聴者の多いストリーマーが少ないストリーマーに視聴者をプレゼントしたりと、コミュニティの交流やストリーマーの宣伝のために使われるのがレイド機能です。
ヘイト・レイドはレイド機能の悪用です。差別的な書き込みをする視聴者(ボット)を一気に送り込み、ストリーマーを傷つけたり、ストリーミーングを不可能にしたりするのがヘイト・レイドです。
ヘイト・レイドの被害に遭ったストリーマーは連続の悪質な書き込みでチャットが埋め尽くされます。被害に遭ったストリーマーは動揺して、ストリーミングを中断する場合もあります。多くの場合、標的になっているのは人種的マイノリティや、性的マイノリティのストリーマーです1。
ヘイト・レイドに遭ったストリーマーの反応
数十の悪質な書き込みを見た衝撃は相当なものです。被害になったストリーマーのKyさんの投稿です。かなり動揺し、泣きそうになっています。
This is part of my live reaction to the hate raid. Normally I’d never show myself as this vulnerable but it’s important for people to hear what I said! If you want to watch the entire thing it starts at 1 hr 22 mins in the below link. #TwitchDoBetter https://t.co/OZBEz0xRtD https://t.co/BWEMQYGzWN pic.twitter.com/ePxWBB6xuU
— Ky | She/Her (@DefinedByKy) August 15, 2021
Kyさんは「これまで政治的なコメントや人種的なコメントはしてこなかったのに。私はただゲームをしていただけなのに、ひどい言葉(人種差別なコメント)を書き込まれました。」と話しています。
ストリーマーのトライヘックス(trihex)もヘイト・レイドの被害に遭いツイートをしています。
Well I see what these hate raids are all about, having experienced one myself just now.
We gotta fix this sooner rather than later, huh @Twitch? pic.twitter.com/Av3eUebXN1
— trihex @ fitness (17.0% body fat) (@trihex) August 22, 2021
悪質なコメントが連続で連なっています。ストリーム中であれば誰でも標的になり得るのだと思わされます。
被害に遭ったストリーマーはTwitchに一刻も早く問題を解決するように求めています。
ストリーマー個人の対策と、Twitch運営への対策を求める声
ヘイト・レイドに遭ったストリーマーはどうしたらよいのでしょうか? 個人でできる対策は、チャットを停止したり、チャットに書き込めるのを登録者に限定したりすることです。ヘイト・レイド対策のための拡張機能もあります。
とはいえ、個人でできることは限られています。数百のボットが押し寄せて高頻度でチャットに書き込むこともあるのでブロックやミュートでは間に合いません。また、不快なコメントを消すための禁止ワードフィルタも役に立ちません。というのも、ヘイト・レイドでは形の似た様々な文字が使われるからです。こちらのツイートで詳しく説明されています。
” @Twitch gives you tools to manage hate raids. You just have to use them.”
Okay let’s try that… (turn volume on)#TwitchDoBetter pic.twitter.com/pvxyJ8Vw1S
— Art for the Apocalypse (@thomsimonson) August 22, 2021
例えば“Jogger”という単語を禁止したいとき、この単語を禁止ワードとして指定するだけでは足りません。“Jöĝgęɾ”や“ĴòŋɠëŔ”も見れば“Jogger”だとわかります2。膨大な組み合わせがありうるので、禁止ワードフィルタでは対応が難しいのです。
ストリーマー個人では対応しきれないので、Twitchに対応を求める声が各所で上がっています。Twitterでは#TwitchDoBetter(ツイッチちゃんとしろ)、#ADayOffTwitch(休ツイッチ日)などのハッシュタグで多くのツイートがされています。#ADayOffTwitchは9月1日にTwitchに抗議するためストリーミングを休む(ストライキする)ことを呼びかけるものです。
なお、未成年に対する不適切な行為で告発されたコール・ミー・カーソンが復帰すると先日発表しましたが、復帰の期日は9月1日でした。ストライキと重なって幸先の悪い復帰となったようです。
Image: Will Twitch do ANYTHING about the recent Wave of HATE RAIDS?! (Streamer Chats INVADED by hate!)
注
- ヘイト・レイドを誰が行っているのかは明らかになっていない。一部のYouTubeチャンネルは、特定の人物が扇動していると告発しているが、確証がないので本記事では取り上げない。
- もちろん、“Jogger”は差別用語ではないが、Nワードの対策も同様である。