2011年に衝撃作『フライデー』で話題になったレベッカ・ブラック。なんと、そのレベッカを上回る新人が発掘されています! 期待の新人はサラ・ブランド(Sarah Brand)。その曲『レッド・ドレス』です。説明は抜きにして、まずこちらの動画をごらんください。圧倒的な歌唱力に言葉を失います。
サラの歌声は「深酒した友だちがカラオケで歌っているようだ」、「オーバードーズで苦しんでいる人の近くにたまたまマイクが置かれていたような感覚」、「ラジオで一回だけ聞いた曲をうろ覚えで歌うシャワー中の人みたい」、「歌詞とメロディーがケンカをしているような歌」と話題になっています。本記事は、この怪作は一体なんなのか、この曲をリリースしてしまうサラとは何者なのかに迫ります。
サラ・ブランドの『レッド・ドレス』
ミュージックビデオでは白いドレスを着たサラが教会にいます。白いドレスを着ているときは貞淑にしていますが、赤いドレスに着替えると体をくねくねさせ妖艶なダンスを披露しています。ミュージックビデオでは性欲を隠すことなくそのまま歌詞やダンスで表現しています。
バイラルになった動画の定番で評価は隠され、コメント欄は大喜利大会になっています。高評価が付いていたコメントを一部紹介します。
アイスJJフィッシュも音痴過ぎて2014年に話題になったクリエイターです。彼の代表作は『On The Floor』です(動画リンク)。真面目に歌っているのか、ふざけているのか、判断がつかないのが彼のスタイルです。
サラの動画はすべてがちぐはぐで不器用です。あまりにも劣悪なので、逆に優れた作品とは何かを考えさせられます。サラの動画がひどいので、これは風刺を込めた現代アート作品なのではないか、と指摘する声があります。
種明かし?
サラに取材したBBCの記事によれば、サラはオックスフォード大学の社会学の修士課程で勉強中の学生だそうです。監督もサラ自ら務めたそうです。本人はインタビューでこのように語っています。
サラは、このミュージックビデオが修士課程の課題の一環なのかは言明していません。
こちらはpenguinz0(チャーリー)の動画です。
この動画について「名作だが、YouTube史上もっともひどいミュージックビデオと表現するほどでもない」と語っています1。もしこのミュージックビデオが社会学の研究の一部として行われたのだとすると、チャーリーも、視聴者も、本サイトも踊らされてしまったことになります。
このミュージックビデオは話題を呼んで多くの人の目に触れることになりました。しかし、同じぐらい不愉快だったり違和感があったりする作品でも、注目を集めず忘れられていくものも無数にあります。その中にもこの作品と同じように社会学や心理学の実験として投稿されたものもあるのかもしれません。マーケティングの実験やフェイクニュースの実験も行われているでしょう。
私たちが気楽に楽しみ、反射的に拒絶反応を示し、見たことすら忘れていくネットのコンテンツには、まったく予想もできない意図に基づいて作られたものが思った以上に多いのかもしれません。人知れぬ無数の試みの中から、次の時代のネットを形作っていく素晴らしいアイディアやおぞましい手口が生まれるのでしょう。
注
- チャーリーは「ダニーの曲『グッバイ』ほどの傑作ではない。」と話している。