ゲーム『クラブペンギンオンライン(Club Penguin Online)』の運営が元従業員、ユーザー、YouTuberに告発されています。
運営者のライリーが未成年のユーザーに裸体写真を送るように強要していたからです。2018年頃から元従業員たちが運営者の行いを告発していました。しかし告発者が相次いでクラッキング被害に遭い、個人情報をネットで晒されて1きたので、真相は闇に葬り去られていました。
Kavosの動画
YouTuberのカボス(Kavos)が視聴者からのタレコミを受け、動画で告発しています。2020年5月1日に公開された『クラブペンギンは子どもを食い物にする奴らに運営され、裸の写真を脅しとっている証拠 子どもたちを守れ(Proof Club Penguin Is Run By A Child Predator Asking For Nudes (KEEP YOUR KIDS AWAY))』です。
- 2018年からRedditなどで告発があった
- 運営者のアンソニー/ライリーは20歳から25歳くらいだと思われる
- 運営者は14歳から16歳の子どもに「裸の写真を送れば、ゲームで優遇されるよ」などと話して言葉巧みに写真を収集していた
- 事実を知った従業員が告発するも、運営者に個人情報を晒されて口封じされてきた
カボスの動画は、元従業員ジョーイ・ヒューズの告発やネットの証言を元に構成されています2。
こちらはジョーイ・ヒューズの動画が削除されてしまった際のバックアップ用の動画です。
(2021年12月12日:削除されたYouTube動画をキャプチャ画像で置き換えました。)
Club Penguin Onlineを閉鎖させようという署名活動も始まっています。
Club Penguinって何?
Club Penguinはペンギンになって仮想空間で暮らす多人数同時参加型オンラインゲーム(MMO)です。ミニゲームでコインを集めれば家(イグルー)を広くしたりアイテムを買ったりできます。ほかの利用者を家に招待することもできます。無料で遊ぶこともできますが、課金すると遊べる幅が広がります。
こちらは2010年のホリデーシーズンのClub Penguinの動画です。
Club Penguinはゲームですが、明確な目標があるゲームではありません。家にほかの利用者を招待できるので、交流ができます。つまり、Club Penguinはゲームでもありますが、SNSでもあります。Club Penguinは子ども向けのSNSとして設計されました。製作者は子どもが安全に楽しめるSNSを作りたかったのです。
そのため、Club Penguinには定型文だけ話せるチャットモードもありました。これは子どもたちがいじめられたり、犯罪に巻き込まれたりしないようにするための工夫です。しかし、そのような工夫はされていても、子どもを目当てにやってくる悪意のある大人がいるのではないかという指摘はありました。
Club PenguinはNew Horizon Interactiveが2005年に公開しました。2007年にはディズニー社がNew Horizon Interactiveを買収し、運営を引き継ぎます。2010年には日本語版も公開されています。2013年には利用者数2億人に達しました。2015年頃から人気が低迷し、2017年3月にはサービスが停止されました3。
なぜ今もClub Penguinが続いているの? その答えはCPPS
Club Penguinはもうサービスを停止しているのに、なぜClub Penguinが続いているのでしょう?
それは、Club Penguin Private Server (CPPS)と呼ばれるものが稼働しているからです。オリジナルのClub PenguinのSWFファイル4をダウンロードし、データベースやサーバエミュレータと組み合わせてClub Penguinが動くようにしたものをCPPSといいます。もちろん、本来のClub Penguinのソフトウェアを使っているのですから、著作権上の問題があります。
乱立するCPPSと抗争、巻き込まれたタマゴ
こちらの2018年3月のタマゴ(tamago2474)の動画ではCPPSが乱立し、SuperCPPS、Club Penguin Rewritten、alpha Penguin、Club Penguin Reborn、Club Penguin Infinity Warなどがある(あった)と語られています。
しかもCPPSの間でユーザー獲得競争の抗争が発生していたそうです。そんな中、迷惑行為で嫌われていたのがVirtual Penguinの運営者アンソニーでした5。アンソニーはClub Penguin Islandでボットに「Virtual Penguinに来てね!」と叫ばせるなど、なりふり構わずユーザーを獲得しようとしていました。それどころか、他のCPPSにDDoS攻撃6を仕掛けたり、利用者が他のCPPSにログインするのを妨害したりしていました。ほかのCPPSをつぶして利用者を独占しようとしていたのです。
動画の中のスクリーンショットでは、このような振る舞いをいさめられたアンソニーが「利用者=金だろ superCPPSを根絶するぞ」と発言し、ついでに「弱小CPPSをつぶしてから最大手のClub Penguin Rewrittenと戦う」とも宣言しています1。
タマゴのCPPSを取り上げた動画はここで終わるはずでした。しかしその後、大変なことになり、2018年10月にタマゴは次の動画を投稿します。
ある日タマゴは、スナップチャットのアカウントが乗っ取られているのではないか、と友人から連絡を受けます。スナップチャットで「ク◇、この◇○□△7どもめ」とメッセージを発し、しかもチン♂の写真をアップロードしているというのです。スナップチャットのパスワードが変更されたというメールも来ていました。
別の知り合いからも「君のスナップチャットが変だよ」というメッセージが届いていました。「乗っ取られたみたい」と答えると「アンソニーだな」と返ってきました。
確かに、これに関係していそうな人物がDiscord1のチャットに三名ほどいました。一人目はjackoと名乗る人物で、タマゴのスナップチャットにログインした画面をアップロードしていました。二人目のライリー(Riley)なるアカウントは俺がアンソニーだと名乗り、タマゴがチン♂の写真をアップロードしたスクリーンショットをキームスター8に送ったと語っていました。三人目はJacobという名前で、jackoが名前を挙げていました。
jackoはタマゴにこんな仕打ちをしているのは、タマゴが動画でアンソニーを悪く言ったからだと主張していました。
結局タマゴはスナップチャットのアカウントを取り戻せず、あきらめました1。動画ではアンソニーがなぜタマゴのアカウントを乗っ取れたのかは明確に語られてはいません。CPPSの中には子どもが運営しているものもあり、セキュリティ上の危険があるから気をつけろ、と動画はまとめられています。おそらくアンソニーはセキュリティの弱いCPPSのデータを抜き取り、そこにあったタマゴのアカウント情報を使ってスナップチャットの乗っ取りに成功したものと思われます。
こちらの2020年5月の動画で、タマゴは再びCPPSの危険性を語っています。
2018年にはVirtual Penguinを運営していたアンソニーは2020年にはClub Penguin Onlineを運営していました。彼は未成年の利用者に自分の裸の写真を送るように要求したり、個人情報を晒したり、偽の告発をして警察が家に来るように仕向けたりしていると告発されています。
今やClub Penguin Onlineは最大のCPPSに成長しています。Club Penguin Onlineは新型コロナウイルスのパンデミックでユーザーを急速に伸ばしています。この間、メディアやYouTuberはCPPS、特にClub Penguin Onlineの運営者はオリジナルの製作者だと勘違いさせるような取り上げ方をしてきました。もちろんCPPSはディズニーの権利を侵害しており、アンソニーの危険さは2018年から告発されてきたのに、です。
Another reason it is so important to spread awareness of whats happening in Club Penguin Online is the fact it has had media coverage as if it is the official game. So many people have no idea of the allegations against the owner using it to solicit nudes from minors pic.twitter.com/EhR7a1QvD6
— Kavos (@KavosYT) May 3, 2020
タマゴは「Club Penguinは終わったんだ。戻ってきたわけではないし、これからも戻ってこないんだ。Club Penguinみたいに見えても偽物なんだ。」と強調しています。「問題なのはアンソニーだけじゃない。ほかのCPPSの運営者たちも何百万人もの利用者の個人情報を扱えるような人たちじゃなくて素人ばかりだ。アンソニーが追放されたたとしてもこの手の問題が終わるとは言えない。」とCPPSの抱える問題を指摘しています。
Kavosの告発後
YouTube登録者111万人のカボスが告発動画を公開した後、このような発表がありました。
【新着情報】クラブペンギンオンラインのライリー、未成年のユーザーから写真を入手していた人物はもうゲームの運営に関わっていないらしい…どう捉えたら良いのか、この内容が事実なのか分からない。
UPDATE: According to Club Penguin Online Mods Riley, the man in question for allegedly soliciting nudes from minors, apparently has nothing to with the website anymore… not sure what to make of this or if it is even true pic.twitter.com/H2okPrzXjs
— Kavos (@KavosYT) May 5, 2020
カボスはYouTuberのオーディナリー・ゲーマーズ(OrdinaryGamers)と共同で調べ始めたようです。
オーディナリー・ゲーマーズ:クラブペンギンオンラインのプライベート・サーバーについて調べてると、最悪な犯罪行為が横行してると知った。
いつもの面白い動画ではないが、助けを必要としてる人のためになるはずだ。
カボス:ここだけの話…数日間にわたってオーディナリー・ゲーマーズと一緒にめちゃくちゃ調査をして情報共有をしているところだ。
Trust me… there is some crazy research being done right now and have been talking with @OrdinaryGamers about this for a few days now and sharing what we have https://t.co/QTyttKj1u7
— Kavos (@KavosYT) May 6, 2020
まだ新たな情報が出てきそうです。
Image: Thought Catalog
注
- 従業員の恥ずかしい写真や家族などの個人情報を晒し、中傷していた。
- こちらが元従業員の動画。
- 同時に後継のClub Penguin Islandが公開されたが、2018年12月にはサービスが停止された。
- Adobe Flashのファイル。Adobe Flashは00年代にウェブ上にインタラクティブなゲームを構築するためよく使われた環境の一つ。
- この動画が投稿された時点ではVirtual Penguinは消えていた。
- DDoS (distributed denial of service)攻撃は大量アクセスを発生させてサーバを一時停止に追い込むサイバー攻撃。
- Nワード。
- Keemstarは本名ダニエル。ゲーマー界隈のニュースを取り上げるYouTubeチャンネルDramaAlertを運営する。