イスラエル軍とハマスの紛争が続いています。10月7日、テロ組織ハマスの戦闘員がイスラエルに侵入し民間人を殺害したり誘拐したりする衝撃的な事件が発生しました。事件は動画つきで報道されて、世界を駆け巡りました。
報道を受けて、アメリカのセレブも次々に声明を出しています。しかし、パレスチナ、イスラエルには複雑な歴史があり、意見の対立が避けられません。
声明を出したセレブも批判を浴びる例がありました。声明が問題視されたのではなく、使用した写真に誤りがあったためです。
以下の内容は概ねこちらのkayla saysの動画をもとにしています。
歌手のジャスティン・ビーバーの例
10月11日、歌手のジャスティン・ビーバーは「イスラエルのために祈る」というInstagram投稿をします。問題になっているのは、文字の背景に映っている写真はイスラエルではなく、パレスチナ、ガザ地区のビルの瓦礫であることです。
(2024年7月21日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)
ジャスティンは指摘や批判を受け投稿を削除しています。疎い事柄に口を出したら恥をかいてしまいました。
俳優ジェイミー・リー・カーティスの例
映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』でアカデミー賞助演女優賞を受賞した俳優ジェイミー・リー・カーティスも同様の失敗をしています。
ジェイミーは10月9日にガザ地区の子どもたちが上空からの攻撃に怯えている写真を使用して「空からのテロ攻撃」と投稿していました。添付のコメントにイスラエルの国旗を書いているので、イスラエルの子どもたちを守らなくてはならないというメッセージになっています。
こちらのTikTokユーザーは「間違いを指摘されたジェイミーは投稿を削除したけど、パレスチナの子どもたちのために投稿をしようとはしないんだね。」と話しています。
ジャスティンもジェイミーも、今度はイスラエルの映像を投稿してパレスチナの人々のために祈ったらいいかもしれません。
イスラエル政府がジジ・ハディドを名指しで口撃
次は何も間違えていないのに口撃されてしまったセレブです。モデルのジジ・ハディドの父親はパレスチナ人です。ジジもイスラエルとパレスチナの紛争がニュースになる度に平和を訴える投稿をしてきました。ところが、イスラエル政府の公式アカウントがジジを名指しで口撃する投稿をしています。
The state of Israel is committing a genocide against Palestinians but they still have time to post a story on their official IG page harassing and intimidating Gigi Hadid. pic.twitter.com/1VpZgoYWdH
— سماح (@samah_fadil) October 16, 2023
イスラエル政府はX(元Twitter)にお金を払い、広告を載せているとも指摘されています。
this is an AD!!! pic.twitter.com/J3U85fOa7l
— sippin on that (@vivafalastin) October 16, 2023
グレタさんも
イスラエル政府に攻撃されてしまったのはジジだけではありません。環境活動家のグレタ・トゥーンベリもです。仲間と「パレスチナに自由を」「ガザとともに」と書いたプラカードを手にした写真を投稿したグレタさんもイスラエル政府から釈明を求められる事態になりました。
といっても、そのメッセージに問題があったわけではなく、写真にタコ人形が映っていたのが理由です。タコはしばしばユダヤ陰謀論で「ユダヤ人の脅威」を表すモチーフになってきた歴史があり(たとえばこちら)、その歴史を考えると差別的な意図が明白だ!という声が上がりました。それ以外にも、イスラエル政府からはハマスの蛮行にも目を向けるようにと抗議が出ました。
グレタさんはタコ人形には差別的な意図はなかったと釈明し、投稿は削除されました。
ところで、ロシアや日本の対外膨張主義がタコとして表されたこともあり、それどころか反ユダヤ的な組織をタコで表すこともあり、タコのシンボルがあれば即座に反ユダヤ的だと解釈するのは短絡的ではないかという声もあります。
「証拠」を都合よくつまみ食いすれば、タコは親ユダヤ的だという同じぐらい強い「議論」をすることもできる。例えばここでは、タコは対抗すべき反ユダヤ陰謀論(ドレフュス事件)を表している
One could have cherrypicked enough "evidence" to make an equally sound "argument" for an octopus being a philosemitic meme. Here for example an octopus represents the antisemitic conspiracy to be battled with (referring to the Dreyfus affair) pic.twitter.com/jex5jduRrF
— Kamil Galeev (@kamilkazani) October 22, 2023
地図上のパレスチナ・イスラエルだけでなく、ネットも戦場と見定めて、各自が陣地を主張し合っているように見えます。
番外編:xQcのリアクション
ストリーマーのxQcはイスラエルがガザ地区を空爆する映像にリアクションしていました。爆発が起こるたびに「わーお」と声を上げています。深刻な状況を茶化してゲーム映像を見る感覚でリアクションしているxQcに批判の声が出ていました。
when I think about what scumfuck degenerate content parasites look like, I don't think I could possibly create parody more on the nose than this pic.twitter.com/xaoQBxgNSC
— Noodle 🍜 (@NoodleVEVO) November 1, 2023
xQcも視聴者も事態の深刻さを理解する気がまるでないようです。無責任な配信で金儲けをしているxQcが批判されるのは当然です。しかし、批判を受けて反省するどころかxQcはさらなる挑発行為に出ます。
xQcは批判に対し、札束を耳に当てる写真を投稿していました。
HUH? pic.twitter.com/uXQEUE1G6X
— xQc (@xQc) November 2, 2023
xQcは大金持ちなので庶民の批判を気にしなくていい、という姿勢のようです。勘違い投稿をしたアーティストや意図せぬところでメッセージを批判された有名人はまだましで、下には下がいると思わされます。
利用されるテイラー・スウィフト
xQcは論外として、ジャスティン・ビーバーとジェイミー・リー・カーティスはおそらく、よく状況を理解しないまま誰かに促され投稿をし、失敗をしています。ジジ・ハディドやグレタ・トゥーンベリはそれよりは状況をよく理解していたようですが、そのせいで攻撃されることになりました。
彼らは積極的に政治問題に関わりにいったのですが、自分からはまったく政治問題に声を上げていないにも関わらず、好感度を政治に利用されるスターもいます。テイラー・スウィフトです。
イスラエルの公式アカウントが「テイラー・スウィフトのボディガードがイスラエルに帰り国のために戦っています。テイラー・スウィフトさん、彼のような人はいませんね。」とテイラーの歌詞を入れた投稿をしていました。
ところが、この主張には誇張が含まれているとの意見があります。
(2023年11月19日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)
テイラーのボディーガードではなく会場の警備員だという声や、いや確かにテイラーのボディーガードだが別人だ、ボディガードの名前が間違っている、という様々な声が出ています。確認が難しく、ここもまた情報戦の戦場になってしまっているようです。
歌手や俳優、セレブにはそれぞれの才能があり、人々を喜ばせる能力がすでにあります。一部のファンは彼らが政治的意見を表明すれば喜ぶかもしれませんが、政治や歴史問題に無理に意見を表明しなくて良い、と思う騒動です。特に誤情報を流すくらいなら、何も言わない方が賢明なのでしょう。