アメリカ社会と薬物問題 家族と当事者が動画で語る実態とは?

社会・政治

オピオイドをご存知ですか? オピオイドは鎮痛剤として処方される薬で、いわゆる麻薬の一種です。アメリカでは社会問題になっています。

ケシ

ケシ

オピオイド(opioid)はケシ(上の写真)から抽出したアヘン(opium)に類似した物質という意味です。

オピオイドは様々な物質の総称です。オピオイドに含まれる物質にはモルヒネやヘロインがあります。オピオイドは麻薬の一グループです。(麻薬⊃オピオイド⊃モルヒネという包含関係。)ヘロインの50倍の効果があるとされるフェンタニルもオピオイドの一種で、乱用が問題視されています。

オピオイドの乱用はアメリカでは大きな問題で、オピオイドは交通事故や銃よりも多くの死者を出しているといわれています。アメリカでのオピオイドの現状がわかる動画を紹介します。

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ウェストバージニア州

全米でオピオイド関連の麻薬が原因で最も多くの死者を出しているウェストバージニア州のニュース動画です。

A community overwhelmed by opioids

薬物の過剰摂取(オーバードーズ)で意識不明の人を救命士が蘇生しています。午前10時過ぎの飲食チェーン店の前での出来事です。

中毒者は公園や公衆トイレで薬物を注射することが多いそうです。そのため、使用済みの針がよく落ちているので清掃員は特殊な手袋をはめて作業をしなければなりません。このような不衛生な場所で静脈注射を繰り返すため中毒者は細菌感染を起こします。

マーシャル大学のベッカー医師は「脳、腎臓、骨まで細菌感染を起こしている患者がいます。医学書には現代では稀な症例として書かれていたが、ここ(ウェストヴァージニア)では頻繁に起っています。」と話します。

こういった薬物中毒の背景には何があるのでしょう。ウェストバージニア州の町の多くは炭坑や製造業で栄えました。そのため、肉体労働による慢性的な痛みを訴える患者が多かったのです。90年代に鎮痛剤の新薬が解禁となります。それがヒドロコドンとオキシコドンでした。どちらもオピオイド系の鎮痛剤です。製薬会社は絶好の市場としてウェストバージニア州に鎮痛剤の売り込みをかけたのです。Charleston Gazette-Mailの記者エリック・エアは「2007年から2012年の間、7億8000万錠ものヒドロコドンとオキシコドンがウェストバージニア州に送り込まれました。」と話します。「人口わずか180万人の州にこれだけの鎮痛剤が流入したのです。1人当り430錠の計算になります。」

事態に危機感を抱いた当局は鎮痛剤の規制にかかりますが、手遅れでした。すでに処方薬の(鎮痛剤)中毒に陥ってしまった患者はヘロインやフェンタニルなどのより強いオピオイドに手を出すようになります。ここで薬物の過剰摂取(オーバードーズ)が社会問題になります。

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4つの家族

薬物中毒に陥ってしまった人がいる4つの家庭のドキュメンタリーです。

American Epidemic: The Nation's Struggle With Opioid Addiction

第一部はフェンタニル中毒になってしまった青年とその家族。青年の父親は、息子が薬物に影響された状態を悪魔に取り憑かれたようだ、と話しています。

第二部は母親を過剰摂取(オーバードーズ)で亡くしてしまった幼い子どもたちに焦点を当てています。祖母と孫が家族を失ってしまった辛さを捉えています。第三部ではヘロイン中毒の両親から産まれた子どもを引き取った家庭も紹介しています。

第四部は15年間薬物中毒だった男性を取材しています。男性は14歳の時に母親を交通事故で、妹を過剰摂取(オーバードーズ)で亡くしています。現在は薬物離脱プログラムに参加していて、雇用されていること、住所が定まっていること、カウンセラーと週1回連絡をとることが義務付けられています。

YouTuberブランドン

YouTuberのブランドンの兄が薬物中毒(ヘロイン)でした。

A Conversation With My Brother About His Drug Addiction & Going To Jail

ブランドンはYouTuberデイヴィッド・ドブリックの動画にもたまに出演している、元VinerのYouTuberです。友人たち(ブログスクワッド)を車でインタビューする動画を投稿しています。

今回の動画ではお兄さんと話をしています。お兄さんはティーンのころから420(マリファナ)を吸っていたこと、その後鎮痛剤に手を出し、最終的にヘロイン中毒になったことなどを話しています。最初はヘロインを吸入していたそうですが、リハビリ施設に入所した際に「ヘロインは注射しねぇと金の無駄だぞ。」と教わったそうです。皮肉なことにリハビリ施設を出た後、本格的な中毒になったと笑い話にしています。過剰摂取(オーバードーズ)の経験もあり、その後遺症で頭の回転が遅くなったと話しています。

ブランドンは何回か「もう(ヘロイン)しないよね?」と確認しますが、「さあ、どう思う?」と返されています。「またあの頃には絶対に戻ってほしくないけどさ、命だけは落とさないでくれよ。」と言ったのが印象的でした。

参考:West Virginia Opioid Summary(NIH)

Image: kiwinz

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