チャンネルSpillが嫌われた理由【YouTubeのアルゴリズム的不正part5/5】

YouTuberニュース

海外の美容YouTube界ってどうしてこんなに炎上するのでしょう? その答えはシェーン・ドーソンジェフリー・スターが2019年秋に公開している動画シリーズで明らかになるかもしれません。

今回は少しマニアックですが、炎上と切っても切れない美容YouTuberを逐一報道しているチャンネルにまつわる騒動を紹介します。

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美容YouTuberを報道!

海外美容YouTuberの間では頻繁に仲違い・裏切り・炎上が起こっています。そんな騒動を逐一動画にしているのがドラマ・Teaチャンネルです。ドラマ・Teaチャンネルと呼ばれるYouTuberたちは、炎上が起こるとレシート(メッセージのスクリーンショット、ライブストリーミングの映像、削除されたSNS投稿)を元に、炎上に関わっている美容YouTuberに直接インタビューして裏をとり、動画にします。

Tea Spillの動画

Tea Spillの動画

動画が投稿されるのは騒動が勃発して数時間後という速報性重視のチャンネルから、数週間後に周辺の情報も盛り込み包括的に報道するチャンネルまで動画内容はさまざまです。

人気ドラマチャンネルは登録者数順に以下のとおりです。

  1. 登録者数136万人のTea Spill – チャンネルリンク
  2. 登録者数100万人のshook – チャンネルリンク
  3. 登録者数94万人のSpill – チャンネルリンク
  4. 登録者数70万人のSebastian Williams – チャンネルリンク
  5. 登録者数54万人のBEAUTY NEWS1チャンネルリンク
  6. 登録者数48万人のPretty Pastel Please1チャンネルリンク

この中に、他のドラマチャンネルから集中砲火を浴びているチャンネルがあります。3位のSpillです。

YouTuber ? Spillのアイコン

Spillのアイコン

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問題は?

以下はこちらの動画の内容に即しています。ディアンジェロ・ウォレス(D’Angelo Wallace)の動画です。

brands are running drama channels and it's . . . a lot (spill)

ディアンジェロは2019年8月11日、Spillが怪しいと告発する動画を投稿します。

Spillは個人のクリエイターだと話しているが、実際は企業が運営していそうだ。他のドラマチャンネルでは見かけないような入念な調査をして、関連する論文やデータまで含んでいる。たかだかインターネットの論争のためにここまで調査している。毎回、50分から1時間超の動画、しかも字幕付きで、個人にしてはクオリティが高すぎる

それだけじゃない。Brew(ポピュラーサイエンスチャンネル)やGrill(辛口コメンタリーチャンネル)という関連チャンネルも同様の形式でアニメ化されている。相当数の社員が裏で働いているのだろう。

この動画の反響は大きく、Teaチャンネル界隈はざわつきます。

Petty Paigeも便乗

ドラマチャンネルであるペティ・ペイジ(Petty Paige)は三部作の動画シリーズでSpillの正体に迫っています。こちらは2019年8月23日に投稿された第二部の動画です。

Part 2: James Charles & Alfie Deyes Are Trying To SILENCE Drama Channels

動画は「次回作でSpillの正体(企業・ジャーナリスト)を暴く」と予告して終わります。

ディアンジェロやペティ・ペイジの動画が投稿されると、Tea・ドラマチャンネルはますます騒ぎ始めます。企業チャンネルはすでに様々なカテゴリーに参入しています。Tea・ドラマチャンネルたちは自分たちの居場所まで企業チャンネルが乗り込んでしまうのか、と脅威を感じています。

Tea・ドラマコミュニティの反応

 

 

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(2022年1月23日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)
 

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(2024年3月31日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)

 

視聴者の反応は?

SNSではこのような視聴者の反応が見られました。

 

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(2021年7月25日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)

Spillの説明その1

コミュニティの注目を浴びている最中の2019年8月27日、Spillは“How The Spill Universe Started”と題した動画を投稿します。

How The Spill Universe Started

要約は以下のとおりです。

  • ジャーナリズムを専攻した人とイラストレーションと動画制作を専門に学んだ人の2人組によってSpillは始まった
  • 税金対策で、企業になっているが、人気YouTuber2も同じくしていること。
  • きちんと参考文献を示し、炎上騒動だけではない教育的側面も動画に盛り込みたかった
  • 投稿した動画は非収益化されることもしばしばで、優遇されているわけではない
  • Spillの姉妹チャンネルであるBrewやGrillは最低限の人数で運営している(機材も整っておらず、生計を立てるため副業をしている人もいる)

Spillチャンネルの始まりは2人の個人クリエイターである、と動画で話しています。

反論

こちらは2019年8月30日に公開されたペティ・ペイジの動画です。Spillの「ウソ」を暴いてしまいました。

Who Is Spill? THE TRUTH…

要約は以下のとおりです。

  • Spillのジャーナリストはカナダ在住の24歳(テイラー)、グラフィックデザイナーはベリン
  • Spillの母体は“AWED”という会社。2013年に起業している
  • “AWED”のCEOはローランドという人。ジャーナリストであり、複数のサイトに記事を書いている
  • テイラーは2016年から“AWED”に務めている
  • “AWED”は“GOODGOOD”というサイトを運営している。内容は多岐にわたる
  • Spillの説明動画では非収益化された動画が並んでいるが、なぜ再審査を申請していないのか? 不自然である

ペティはSpill(AWED)はYouTubeに雇われた回し者で、Tea・ドラマチャンネルを封じ込めようと乗っ取りにやってきたのでは?と言っています。“GOODGOOD”は“Troom Troom”、“5-Minute Crafts”、“Actually Happened”、“Tasty”のような企業チャンネルなのかもしれないと話しています。

Spill説明その2

こちらは、2019年9月27日に公開されたSpillの動画です。視聴者の疑問に答えるために、詳しく“AWED”の成り立ちから説明しています。

Time to Talk About the Rumors Behind Spill
  • CEOのローランドはYouTubeでチャンネルSpillを開設する以前に複数のブログサイトや芸能事務所を運営していた
  • ブログサイトはバイラルになる記事があり成功するものもあったが、ほとんどのサイトは失敗し、現在は休止状態である
  • 記事がバイラルになった時期に“AWED”を企業として申請した(2013年)
  • “AWED”が運営していたサイト“GOODGOOD”で記事を書いていた社員の1人がテイラー
  • テイラーは仕事中、シェーン・ドーソンのドキュメンタリーを観ていた(Spillを開設するきっかけになった)
  • “AWED”の社員は14名で11名が正社員
  • YouTubeとの契約などなく、スポンサーもなく成長してきた。ウワサされているようなYouTubeからの特別な待遇は一切ない。
  • 他のチャンネルと同じようにSpillも広告収入に頼っている。際どい内容の動画は、他のチャンネルと同じように非収益化される
  • 動画を再申請しない理由は、何度も再申請を繰り返すとチャンネル全体が非収益化されるリスクがあるから

Spillを運営しているのは生身の人間で、他のドラマチャンネルを封じ込める意図などはないと説明しています。

YouTuberたちの望むもの

本シリーズでは、最近のYouTubeのアルゴリズム的不正について特集してきました。

Part 1では特定のキーワードが含まれていると動画が自動的に非収益化されることを告発するYouTuberたちを取り上げました。まったく無害な動画や有益な動画が、有害であると分類され、非収益化されてしまいます。動画が非収益化されると、YouTuberに広告収入が入らなくなるだけでなく、動画がおすすめに入らなくなり、視聴者の目に触れにくくなります。

Part 2では性的マイノリティに関する用語の入った動画が非収益化されやすいことを取り上げました。マイノリティYouTuberたちはYouTube社を訴え、公正な運営を求めました。

Part 3で取り上げた調査では、2ヶ月に及ぶ調査で、確かに性的マイノリティに関する用語がタイトルに入っている動画が非収益化されやすいことがわかりました。YouTubeは大量に投稿される動画のうち少しでも広告主に嫌われる要素がある動画を排除しようとしているのです。

Part 4では、完璧に魅力的なのに過去のはっきりしないYouTuberジャネル・イリアナが、広告主に嫌われないようにプロデュースされ、不当に優遇された存在なのではないかという疑惑を紹介しました。

シリーズ最終回のpart 5では、個人運営のふりをして企業が運営しているチャンネルに巻き起こる非難の声を紹介しました。

本シリーズに共通するのは、YouTuberたちの不安の声です。彼らは、YouTubeの不透明な運営と差別に憤り、自分たちの存在が脅かされていると感じています。一部のYouTuberはYouTubeの不当さを告発して訴訟に踏み切り、一部のYouTuberは企業が運営しているチャンネルや企業がプロデュースしたと思われるYouTuberを非難しました。

訴訟は勇み足かもしれないし、ジャネルは本当にただの素人かもしれないし、Spillへの批判は過剰反応だったかもしれません。けれども、これはどれも、YouTubeが企業の金儲けの場へと変質していってしまっていることへの危機感の表れです。

彼らは、YouTuberと視聴者という個人と個人のつながりの場だったYouTubeを信じているのです。だから彼らは、YouTubeがアルゴリズムで差別をすることに抗議の声を上げます。彼らは、YouTubeに企業や特定のYouTuberに肩入れすることなく、公平で平等に表現の場を与え続けてもらいたいのです。それを願わないYouTuberはいないでしょう。私たち視聴者もまた、それを願わずにはいられません。

シリーズの記事はこちらです。

  1. 美容チャンネルではあるが、炎上騒動はめったに取り上げない。コスメ好きには有益な情報を提供しているチャンネル。
  2. YouTuberの例で出された名前はシェーン・ドーソンフィリップ・デフランコ、トライガイズ、クリスティ(Simply Nailogical)など。
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