LGBTQのクリエイターがYouTubeとGoogleを訴える!彼らはアルゴリズム的不正の被害者?【part2/5】

YouTuberニュース

——かつて人々の生きる支えになっていたコミュニティが、失われつつあります。それどころか、コミュニティに害を及ぼすまでになりつつあるのです。

こう語るのは原告の一人チェイス・ロス(Chase Ross)です。彼はトランスジェンダー(FtM)のクリエイターとして2010年からYouTubeに動画を投稿してきました。レインボーフラッグ

YouTubeのアルゴリズム的不正シリーズのパート2はYouTubeが自由な発言を抑圧しているという告発を取り上げます。

2019年8月13日、LGBTQ+のクリエイターがYouTubeとその親会社Googleを相手取り提訴しました。原告はAmp Somers、Lindsay Amer、Chris Knight、Celso Dulay、Cameron Stiehl、Chrissy Chambers、そしてChase Rossです。彼らは、YouTubeとGoogleはクィア関連動画に意図的に広告を付けず、不当に収入を絶っている、動画を許可無く制限付きモードに設定している、登録していた人を勝手に登録から外している、人気LGBTQ+のクリエイターとその他のLGBTQ+のクリエイターに待遇の差がある、と訴えています。

さらにgay(ゲイ)、lesbian(レズビアン)、bisexual(バイセクシャル)、transgender(トランスジェンダー)などの単語をタイトルやタグに挿入した場合、YouTubeによって検閲されてしまう、と話しています。

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(2022年5月22日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)

原告のYouTuberを紹介していきます。

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GNews!

YouTubeチャンネルのGNews! Get All Your Gay In Just One Day with Celso Dulay(登録者数942人)。原告であるCelso DulayCameron StiehlChris Knightが司会をしているチャンネルです。

サンフランシスコのLGBTQ+カルチャー、地域情報を中心に発信しています。

More Glitter Please! – GNews! Episode 130
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Lindsay Amer

チャンネルQueer Kid Stuff(登録者数1万6000人)。Lindsay Amerがテディー(ぬいぐるみ)と司会をしている子ども向け1チャンネル。子ども向けの教育番組の設定ですが、大人でも勉強になる内容です。子どもにはちょっと難しすぎる内容もありそうです。

How do you ~EXPRESS~ your GENDER?!? – Gender Expression: QUEER KID STUFF #28

Chase Ross

uppercaseCHASE1(登録者数16万4000人)はトランスジェンダーのChase Rossのチャンネル。FtMのホルモン療法の過程や手術の経験を話しています。子どもには不適切な内容も多く見受けられます。たとえば、大人のおもち♂︎のレビュー動画などです。

PEACEMAKER (DOUBLE-SIDED) REVIEW [CC]

Amp Somers

Watts The Safeword(登録者数19万6000人)はAmp Somersのチャンネルです。自身が信仰熱心な家庭に育ち、クィアやゲイについての教育を受けられなかった、と話しています。性に悩む人の役に立つような内容を目指しているそうです。子どもには不適切な内容が多く見受けられます。たとえばボンテージの方法を紹介する、などです。

AVENGER HARNESS TIE!

Bria And Chrissy

BriaAndChrissy(登録者数85万2000人)は活動家としても著名な2人Bria KamChrissy Chambersのチャンネルです。7年前からYouTubeに動画を投稿しています。悩んでいた14歳の自分に向けるつもりで、悩んでいる人のより所となるようにチャンネルを開設。

現在のように豊富にLGBTQ+関連動画が公開されていれば当時の自分たちはうつにもならず、自らの命を絶ちたいという考えも薄れたはず、と話しています。訴訟に向けてもっと多様な文化や人種のクリエイターから賛同を得たいそうです。

Dear YOUTUBE: Why We are Suing You (And Google)

アルゴリズムのせい?

YouTubeは表現の自由や機会を得る自由を掲げています。YouTubeによればYouTubeは

すべての人が自由に発言し、意見を交換し、率直に対話できるべき2

すべての人が、自分を表現できる機会を持ち3、(中略)何が人々の心に響くかということを既存の価値観によってではなく自分たちで決めることができるべき4

と考えています(英語版日本語版)。

YouTubeはこの使命を果たしていない、そして、アルゴリズムは自分たちの動画を不当に扱っている、というのが彼らの主張です。ゲイやトランスジェンダーと書くと検閲され、広告がつかなくなるというのです。自分たちの動画を検索しても出てこない、いつの間にか制限モードになってしまう、など再生回数が落ち込む理由を話しています。YouTubeは最近自分たちのようなクリエイターに不利な扱いをしているとも主張しています。自分たちのこのような現状に抗議するため集団訴訟に踏み切ったそうです。

この訴訟に関して、「他のクリエイターも一様に苦しんでいるのでは?」と話しているH3H3ポッドキャストの動画です。

LGBTQ+ Youtubers Are Suing YouTube For Discrimination

アルゴリズムについての誤解や思い込み、仮説に基づき「差別」と認識してしまったのかもしれない、と話しています。LGBTQ+のクリエイター以外にニュース系YouTuberも非収益化されやすいそうです。

YouTubeは動画のタイトルやタグで成人向けコンテンツと子どもでも見られるコンテンツを自動判定します。自動判定には誤りもありますが、YouTubeには膨大な量の動画が投稿されるため自動判定に頼らざるを得ません。成人向けと判定されるとおすすめに入らなくなるため再生数が激減します。同時に、広告がつかなくなり、YouTuberには収益が入らなくなります。これはLGBTQ+など特定のクリエイターを狙ったものではなく、どのクリエイターでも起こることです。一方で、特定の性的マイノリティが子ども向けの内容でも成人向けと判定されやすいなら大問題です。

集団訴訟に名を連ねているYouTuberたちの中には、確かに年齢制限を受けるいわれのない動画を作っている人もいますし、年齢制限を受けてしかるべきと思われる人もいます。彼らが裁判でどのような主張をするのか続報が待たれます。

YouTubeとGoogleは差別をしているのでしょうか? YouTubeはどのような基準・アルゴリズムでコンテンツの対象年齢を判定しているか明らかにしていません。基準は日々変化し続けており、おそらく今後も明らかにされることはないと思われます。裁判を通して透明性が高まるかどうかは不明です。

シリーズのパート3は、具体的にどのような単語を入れると非収益化されるのか検証したデータを紹介します。LGBTQ+のクリエイターが不当な扱いを受けている証拠になりそうです。

シリーズの記事はこちらです。

参考:8 Creators File Suit Against YouTube, Claiming It Discriminates Against LGBTQ+ Content
LGBTQ YouTubers Hit Google With Lawsuit For Alleged Discrimination
Image: Dream Abroad

  1. 3歳から7歳向けとリンジーは話している。
  2. people should be able to speak freely
  3. everyone should have a chance to be discovered
  4. people—not gatekeepers—decide what’s popular
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