誰しも信用できない人、苦手な人、嫌いな人はいるものです。それは仲良くコラボしているように見えるYouTuberも同じです。実際は「ムカつくな……」「なんとなくこの人信用できないな」と思っていても、笑顔で撮影をしています。
今回は、本当は仲良くないのに無理をしてコラボしたら炎上した、という騒動を紹介します。モクバン界1の人気YouTuberのステファニー・スー(Stephanie Soo)とニック(Nikocado Avocado)の騒動です。
登場人物
今回の炎上に関わった登場人物を紹介します。
ステファニー・スー(Stephanie Soo)のYouTube登録者数は190万人。2017年からYouTubeにモクバン動画を投稿している。顔出ししていない婚約者がいる。気弱で相手を思いやる性格のため、はっきり意思表示するのが苦手。過去に自宅で暴行を受けた経験があり、信用した人しか自宅に入れないようになった。自宅にはセキュリティカメラで24時間監視するシステムを導入している。過去には人気YouTuberのヴェロニカ・ワンとコラボしている。
ニック(Nikocado Avocado)のYouTube登録者数は176万人。元ヴィーガンYouTuberだった。同じくモクバン界の人気YouTuberヴェロニカ・ワンと犬猿の仲。ヴェロニカとコラボしたステファニーから、ヴェロニカの悪口を聞き出そうとするも炎上を嫌うステファニーに断られる。納得できないニックは他のYouTuberにステファニーの悪口を吹聴して回った。
ヴェロニカ・ワン(Veronica Wang)のYouTube登録者数は154万人。気が強く、情緒不安定な人気モクバンYouTuber。自分の印象が悪くなる動画を投稿していたチャンネル(shookbang)へ著作権侵害を申し立て、チャンネル閉鎖に追い込んだ。この件で他のYouTuberからひんしゅくを買った。
ザック(Zach Choi ASMR)のYouTube登録者数は630万人。声を出さず、そしゃく音を売りにしている。今回の炎上のきっかけになるコラボに参加していたので巻き込まれているが、彼は特に何もしていない。
ニックが怖いステファニー
2019年12月21日、ステファニーは『ニコカド・アボカドが怖い理由』と題した動画を公開しました。執筆時790万回以上再生されています。
47分の動画でステファニーはこのように話しています。
- ニック、ザック、ステファニーでコラボ動画を2日連続で撮影する予定だった。
- 初日、ニックにヴェロニカの暴露話をするように強要されたが、嫌なのでごまかした。撮影中ニックに「この間は話したいって言ってたじゃん」と言われた。しかしステファニーは同意した記憶がない。ニックに言われる内容はほぼガスライティングだった(ガスライティングgaslitingは自分の都合が良いように事実を曲げること、ウソを指摘した相手を逆に責めるような言動を指す。虐待の一種と言われている)。
- 防犯カメラの映像を挿入(動画26分27秒から)。ステファニーはニックと撮影後、過去のトラウマを思い出し、とても動揺した。
- 翌日も撮影の予定だったが、夜中泣いていたステファニーは午後2時半頃、起床した。ニックとザックから連絡がきていた。ニックが怒っているメッセージを読み上げる(動画28分から)。
- ニックはステファニーの許可なく、自宅の撮影をした。セキュリティが脅かされた。(カリフォルニアの法律で、盗撮は禁止されている。撮影の際も、撮影内容を公開するにも必ず許可が必要。)
- ニックが他のモクバンYouTuberにステファニーの悪口を言っていると思われるSNS投稿を多くしている。
- 危機感を抱いたステファニーは今回の動画をあげることにした。
ステファニーはニックに高圧的な態度をとられ、過去のトラウマがよみがえったようです。泣きながら話しています。
ニックの反論
2019年12月30日、ニックは反論動画を公開しました。動画は1時間半の長さです。
- そもそも、ステファニーは「シェーン・ドーソン風のドキュメンタリー」を撮影する予定だった。内容はモクバン界の炎上で、騒動の当事者にインタビューする、というもの。もちろんヴェロニカもテーマになると聞いた。
- ドキュメンタリーを撮影するなら、ヴェロニカとの確執について動画で話すと思った。ニックは話すように強要はしていない。
- ステファニーは都合が良いときだけ人を利用する。ザックもそう言っている(過去のメッセージの画面を表示)。
- ステファニーの動画は、あたかもニックが性的暴行をしたような印象を与える。
- 許可なくステファニーの自宅を撮影していない。きちんと承諾を得て撮影した。
- ステファニーは動画で自身のアパレルを着ている。深刻な動画で、自分のアパレルの宣伝をするの?(ステファニーはこの炎上をきっかけにいじめ撲滅のためのアパレルを販売している2。収益はすべてチャリティーへいくそうだ。)すべて売名では?
- ニックは嬰児の頃、養子に出された。人と関係を築くのが難しく、癖3があるのは生い立ちにも理由がある。なので拒絶されたり、無視されると過剰に反応してしまう。ステファニーに2日目の撮影を断られ、怒ってしまった(撮影に備え、空腹だったので怒りやすい)。
- ステファニーのトラウマを刺激するような態度をとってしまい、申し訳なく思う。ごめんなさい。
ニックは当時の状況をメッセージのやりとり、ボイスメッセージ、写真などを証拠に出しています。
ザックの釈明
今回のコラボ撮影に参加していたので、なぜか巻き込まれたザックの釈明です。ステファニーの動画では、関与しない姿勢を取っていましたが4、ニックの動画が公開された後、釈明をしています。ザックはステファニーとニックの友人ですが、ステファニーに有利になる証言をしています。
抄訳:ステファニーとニックの確執は、3人のコラボ以前から始まっていた。
ニックの動画で、私との私的なメッセージを公開しているが、どれも許可していない。ニックの行いには倫理的にも疑問が湧く。
ニックは最初からステファニーを嫌っていた。3人のコラボ初日でニックのステファニーへの態度をみて、ステファニーが2日目の撮影を断ったのも無理はないと思った。そもそもニックはコラボ撮影をステファニーを暴露する機会だと思っていたようだ。なぜならステファニーが撮影を断った日のメッセージで、ニックがリスケジュールを提案した午後4時57分より前の、午後4時30分の時点で私に、「ステファニーを告発する」と送ってきていたから。
ステファニーを批判しない私に、ニックはますます憤っているようだった。ニックは自分の思い通りに行動しない人を「暴露する対象」と見ているようだ。私も彼に反論するとそのうち餌食になるのではないかと、えもいわれぬ恐怖を感じていた。ニックが今回の件とは無関係な、過去の私的なメッセージを公開したのも納得できない。
(2020年5月16日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)
ステファニーの反論
2020年1月1日に公開されたステファニーの反論動画です。
- 公開されていないコラボ動画をニックが持っている。それを公開してほしい。動画を見れば、ステファニーが演技ではなく、心底怖がっている様子が伝わるはず。
- ステファニーの自宅を無断で撮影していないなら、防犯カメラの映像を公開する許可をほしい。事実を明らかにするために。
ニックに評判を傷つけられ、ステファニーはプライドをかけて反論しています。
今回の炎上はモクバン界で起こりました。2017年頃に人気のジャンル「モクバン」でしたが、少しずつ陰りが見えています。YouTuberたちはコラボをして活気を保とうとしていました。しかし、無理をしてコラボをしても互いへの不信感は消えず、結果として暴露大会になってしまいました。執筆時点では、ステファニーの説得力が勝ったようで、ニックの動画には低評価が多く付いています。
人気YouTuberとして誰が生き残るのか?を懸けた戦いのように見えます。炎上後もファンは変わらず応援すると思いますが。パラノイア合戦のようにも思える炎上でした。
Image: MichaelBePetty, Random Output, MareSZN, dustin dailey
注
- モクバンとは食事動画を投稿するチャンネル。
- 2019年12月24日に公開されたこちらの動画。
Life Update + Moving On
- 愛着障害だとニックは話している。
- こちらのツイッターはステファニーの動画公開後の声明。