「女トランプ」見参!ネバダ州知事選に名乗りを上げた市議会議員のイカレた経歴と風体にツッコミが入る

社会・政治

こんなイカレた逸材がまだ残っていたとは……。パンデミックも終息の兆しが見え始めた中、米国の政界に新しい強烈なキャラクターが登場しました。米国政治の話題を取り上げるYouTuberがざわついているので紹介します。

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重要イベントのない時期に……

米国では4年に一度の大統領選挙と、2年に一度の連邦議員選挙が政治的重要イベントです1。連邦議員の選挙は大統領選挙の年と、二つの大統領選挙の中間の年に行われます(中間選挙)。直近の大統領選挙・連邦議員選挙は2020年で、次の中間選挙は2022年です。西暦偶数年が選挙の年で、西暦奇数年は政治的に大きなイベントのない年ということになります。

2021年は大イベントのない年であるわけですが、その平穏を破ったのはこの動画でした。

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(2024年2月25日:削除されたYouTube動画をキャプチャ画像で置き換えました。)

この動画はミシェル・フィオーレ(Michele Fiore)氏の選挙キャンペーン動画です。フィオーレ氏は2022年に行われるネバダ州知事選挙に立候補すると10月19日に表明しました。

動画は、アメリカの国民車とも言うべきピックアップトラックがネバダ州の砂漠を爆走し、フィオーレ氏が降りてくるところから始まります。フィオーレ氏は女性初のネバダ州下院共和党院内総務(議会ナンバーツー)であった履歴を誇り、トランプ氏への支持を表明した最初の一人であり、メディアに「女トランプ」と呼ばれたと語ります。……よく見るとピックアップトラックに「トランプ2024」と書かれたステッカーが貼られています。

ツッコミどころが満載なので、ド直球の感想が出ていました。YouTubeチャンネルInternet Todayのエリオットです。

砂漠へピックアップトラックで乗り付ける演出へもツッコミが入っています。

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(2022年4月10日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)

動画でフィオーレ氏はつまらない穏健派ではなく私に投票すべき!と力説し、ある政治家が演説している様子が映ったテレビをひっくり返しますが、……その政治家とはミット・ロムニーでした。現在、ロムニー氏はフィオーレ氏と同じ共和党の連邦上院議員なのですが。過激派が対立政党ではなく、同じ党の穏健派を攻撃するのはよくあることですが、どの層に向けたアピールなのでしょう? 予備選を勝ち抜くためにはまずは党内での位置とりが大切なのでしょうか。

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……この強烈なキャラ

真っ赤なワンピースに革ジャンとホルスターに拳銃、一度見たら忘れられない出で立ちです。豊かな胸部は存在感を主張し、「革ジャンのファスナーが閉まらないね」というコメントが散見されました。

フィオーレ氏は1970年生まれで、2017年からラスベガス市議会議員を務めています。……明敏なる読者諸賢はお気づきでしょうが、州議会議員だったことがあるにもかかわらず、現在は市議会議員です。明らかな格下げですが、何があったのでしょう? その理由はあとで説明します。

州下院議員だったのは2012年から2016年まででした。ちなみに、ネバダ州の上院と下院は合わせると全米で初めて女性が半数を超える州議会になりましたが、フィオーレ氏は今は州議会議員ではないので無関係です。

動画の中で、ワクチン接種義務化の禁止、批判的人種理論の禁止、選挙不正の排除を訴えています。いずれも保守派に訴えかける政策です。米国では保守派に反ワクチンの意見が強い傾向があります。批判的人種理論は差別は個人の問題ではなく、社会の構造的問題だと捉える考え方で、保守派は教育現場にこの考え方が持ち込まれることを嫌っています。選挙不正とは昨年の選挙についてのトランプ陣営の主張でしょう。……司法は不正を認定していませんが。

フィオーレ氏はこの三つの政策を「三発の弾丸(three shot plan)」と称し、拳銃をぶっ放して「ワクチン接種義務」「批判的人種理論」「選挙不正」に見立てたボトルを吹っ飛ばしています。もちろんご存じのとおり、米国の保守派は銃を所持する権利を主張しています。

FBIに捜査されている

YouTuberのデイヴィッド・パックマンは彼女はマージョリー・テイラー・グリーン下院議員バージョン2.0だと語っています。テイラー・グリーン下院議員は陰謀論をまき散らしツイッターアカウントが凍結されたこともある筋金入りのトランプ支持者ですが、確かにフィオーレ氏とはよく似ています。

Marjorie Taylor Greene 2.0 Running for Governor

デイヴィッドは地元紙Las Vegas Review-Journalの記事を読み上げて、フィオーレ陣営の資金疑惑でFBIが調査していること(!)、ラスベガス市議会の同僚議員とケンカをして骨折させたこと(!)、人種差別発言でリコールされかけたこと(!)などを紹介しています。

フィオーレ氏の主張する選挙不正の件も、州知事はネバダ州以外に何かをする権利がないのにどうするつもりだろう?ともっともな疑問を呈しています。

さらにWikipediaの項を見ながら、経営しているヘルスケア企業で給与税を払っていなかったため税務調査を受けたこと(!)、ヘルスケア企業の営業許可が取り消しになったこと(!)、トランプ支持者による議会襲撃事件の直後にトランプ支持の立場を堅持したこと(!)、などにデイヴィッドは触れています。2016年には州議会議員を辞めて連邦下院議員を目指しましたが、評判が悪くなりすぎたためか、落選しています。翌年、ラスベガス市議会議員となりました。

ただでさえ風体が怪しいのに、それ以上に経歴がうさんくさい人物のようです。

差別の問題や感染症対策は個人の好悪の感情や信条を巻き込み、過激な意見が幅を利かせがちです。2016年の選挙では奇矯な主張を繰り広げる候補を笑っていたらその候補が当選してしまうという事件が発生しました。フィオーレ氏も極端な政治的状況がまだ続く可能性を予期させる人物です。どのような主張であれ、極端なものからは一歩距離を置く必要がありそうです。

  1. 連邦上院議員の任期は6年で、任期2年の下院議員選挙と同じタイミングで行われるため本文では割愛した。
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