Netflixのリアリティ番組『ザ・サークル(The Circle)アメリカ編』のシーズン2が公開されました。『ザ・サークル』は出演者どうしが架空のSNS「ザ・サークル」上のメッセージだけで会話をし、顔を合わせることなく進行する番組です。
毎回、投票で人気者(「インフルエンサー」)を選びます。インフルエンサーは参加者のうち一人を「ブロック」でき、ブロックされると脱落です。最後まで残った出演者には賞金$100,000(約1000万円)が与えられます。
YouTube、Instagram、TwitterなどのSNSで騙し合いやケンカが日々発生していますが、それを面白く見せてくれるリアリティ番組という枠組みです。今回は名の知られたYouTuberや他のリアリティ番組の出演者が参加者になっていて、期待が高まっていましたが、結果はどうだったのでしょうか。
(2023年4月10日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)
出演者のなかには「ありのままの自分」で出演する人もいれば、「なりすまし」で出演する人もいます。番組の進行に伴い「なりすまし」があぶり出されるのも、面白いポイントです。
なりすましがバレる時
シーズン2で「21歳女子大生のエミリー」になりすましていたのは、天体物理学と経済学を専攻している男子大学生ジャック(20歳)でした。番組でマネキンに素敵な化粧を施す課題が与えられ、ジャックは苦戦します。
「女子大生エミリー」が仕上げた作品は、こちらの動画サムネです。ある意味、疲れ切った女子大生にも見えますが……どこからどう見ても女子大生の作品ではありません。
他の出演者に怪しまれた「エミリー」(ジャック)は、存在しない化粧品ブランドの名前を口走り、墓穴を掘ります。『ザ・サークル』の公式Twitterアカウントでもいじられています。
new beauty brand just dropped pic.twitter.com/AfdaZiXIeA
— The Circle on Netflix (@CircleNetflix) April 30, 2021
「エミリー」(ジャック)はその後、ブロックされています。なりすましのための研究が足りませんでした。
出演者の心理戦
メッセージだけで交流する『ザ・サークル』では出演者の華麗なる心理戦も見どころです。序盤から、テリリーシャとサヴァンナが知的な女性たちの争いを見せていました。互いに牽制しあい、高度な心理戦を繰り広げ、他の参加者を置き去りにし……共倒れで早々に脱落しました。賢く立ち回ればよいかというとそうでもないのが難しいところです。
犬猿の仲だった二人ですが、撮影後のインタビューでは和解をしたそうです。出演者の争いは番組を盛り上げるための必要な演出です。
サヴァンナはリアーナが立ち上げたフェンティビューティーハウスに初期メンバーとして参加していました。
ファイナリストへ取材
こちらの動画でファイナリストにインタビューしています。大人気だったクロエや、トリックスターになったコートニーなどに取材しています。
クロエは「撮影中につらかったのは、人に会えなかったこと。こんなに素敵な人と撮影しているのに、一緒に過ごせないのは社交的な私にはつらかった。」と話しています。根っからのリアリティ番組向きの性格です。
コートニーは「正直、低血糖症の私には料理が一番つらかった。」と話しています。
出演者のYouTubeチャンネル
『ザ・サークル』の出演者のYouTubeチャンネルを紹介します! これから彼らのチャンネルで撮影秘話を公開してくれそうです。
夫トレバーになりすましていたデリーサのYouTubeチャンネルです!
番組を面白くするためにテリリーシャと戦っていたサヴァンナのYouTubeチャンネルです。
Netflixの『ザ・ジレンマ/Too Hot to Handle』にも出演していたクロエのYouTubeチャンネルです。サークルの撮影に入る前の隔離生活の様子をブログで紹介しています。演者の中で好感度が高かったクロエです。
『ザ・ジレンマ』では印象が薄かったクロエですが、今回は大活躍でした。
コートニーのYouTubeチャンネルです。
コートニーはセレブゴシップチャンネル『Hollyscoop』でも司会を務めていました。
さすがのコミュニケーション能力で、リアリティ番組に欠かせないトリックスター役を引き受けています。
撮影地は意外にも……
これまでイギリス編、フランス編、ブラジル編なども配信されてきた『ザ・サークル』ですが、アメリカ編のシーズン2の撮影はなんとアメリカではなくイギリスで行われたそうです。撮影地はイギリスのマンチェスターのようです。
評価は?
直接接触せず、架空のSNSでのコミュニケーションだけで脱落者が決まる『ザ・サークル』は、新型コロナウイルスのパンデミックで外出制限がかかる中、世相を映すリアリティ番組になるチャンスがあったのではないかと思います。
しかし、パンデミックで人々が鬱屈する中、SNSではこれまで以上に激しい炎上やキャンセルが発生しているのと比べると、『ザ・サークル』はずいぶんぬるい内容でした。最後に賞金を得る参加者を選ぶときもまあまあ常識的な落としどころに落ち着いています。しかし、視聴者はリアリティ番組にそんな常識的な展開など期待していません! もっと過激な参加者が必要です。
『ザ・サークル』には、過去の差別発言で吊し上げをくらうインフルエンサーもなく、名誉毀損で訴訟を起こしたインフルエンサーも訴訟を起こされたインフルエンサーもなく、補助金を不正受給した疑惑のあるインフルエンサーもなく、15分間に200回以上のカットが入った不自然な謝罪動画を出すインフルエンサーもなく、世界記録を捏造するインフルエンサーもなく、医者なのにパンデミックの中、水着美女と豪遊して批判を浴びたインフルエンサーもないのです。そんなの、現実のSNSよりつまらないじゃないですか!
……これが全部この一年間に現実にYouTuberがやらかしたことであることにめまいを起こしそうです。パンデミックでみんな頭がおかしくなったのでしょうか……?
それはともかく、現実がこれぐらい過激なので、Netflixには現実を軽く超えてくるようなリアリティ番組を期待したいところです。YouTube上にはもっとアクの強い人たちがうじゃうじゃいますから、彼らを出演させるのがよいでしょう。この手のクレイジーな事件を起こすアクの強いインフルエンサーをリアリティ番組に出演させてみると期待外れだったりもするのが難しいのですが。
どうやら、パンデミックの時代に合致したエンターテイメントを作るのはなかなか難しいようです。Netflixはソーシャルディスタンスをテーマにしたドラマシリーズ『ソーシャルディスタンス』も出しています。レビューはこちらの記事をごらんください。