YouTubeやTwitchのストリーミングは、PCやスマホとYouTubeやTwitchがあればできます。ですが、多くの有名ストリーマーは別のツールも組み合わせて使っています。画像や動画をはめ込み、魅力的な配信にし、様々な便利な機能を利用するためです。
そのツールの一つがOBS(オープン・ブロードキャスター・ソフトウェア)です。OBSは無料で、YouTuberやTwitchストリーマーは必ずと言ってよいほど利用しています。
ストリーム・ラブズOBS (Streamlabs OBS)もストリーム用ソフトウェアですが、OBSの開発元とは違う会社(ストリーム・ラブズ)が配布しています。名前にOBSとあるのでOBSと同じ開発元だと混同されがちですが、関係はありません。
ライトストリーム(Lightstream)もライブストリーミングに特化したソフトウェアで月額制でサービスを提供しています。今回はOBSの開発元とライトストリームがストリーム・ラブズを告発する騒動が起こっているので紹介します。
問題の指摘
騒動の発端は、ライトストリームの告発ツイートです。ライトストリームのサイトのデザインとストリーム・ラブズのサイトのデザインが酷似していると指摘しています。
「いいけど、そのまま写したってバレないように少し変えてくれよ。」
「よし!」
🤡 Hey, can I copy your homework?
▽ Yeah, just change it up a bit so it’s not obvious you copied.
🤡 Bet. pic.twitter.com/xODY5uDZeP
— Lightstream (@Lightstream) November 16, 2021
デザインが似ているだけではなく、よく見ると宣伝文句やレビューの内容までそっくりそのまま同じです。この明らかなひょうせつにライトストリームのCEOが声明を出します。
こちらがライトストリームのCEOの告発です。
(2022年12月24日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)
「OBSにタダ乗り」とはどういうことでしょう? 実は、ストリーム・ラブズ OBSはOBSのソースコードをそのまま流用したソフトウェアだったのです。つまり、ストリーム・ラブズ OBSはOBSのソースコードとライトストリームのウェブサイトを拝借していたのでした。
ライトストリームのCEOに続き、OBSの公式アカウントもストリーム・ラブズを告発します。
Near the launch of SLOBS, @streamlabs reached out to us about using the OBS name. We kindly asked them not to. They did so anyway and followed up by filing a trademark
We’ve tried to sort this out in private and they have been uncooperative at every turnhttps://t.co/r1eXr3VxcJ
— OBS (@OBSProject) November 17, 2021
この告発が話題になっていると、人気ストリーマーのポキメインまでストリーム・ラブズを批判します。
(2022年11月28日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)
さらに、左派系政治ストリーマーのハサン・パイカーやコメディアンのリッキー・バーウィックまでストリーム・ラブズを批判する声明を出しています。
(2022年2月20日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)
各方面から批判を浴びたストリーム・ラブズは声明を出しています。
— Streamlabs (@streamlabs) November 17, 2021
立ち上げ時のOBSの要求に応えなかったのに、ここへ来て急にしおらしくなったようです。しかし、本当にこの声明のとおりにするかは不明です。ところで、このツイートにある「オープンソース」とは何でしょうか?
つまり、何が問題なのか?
オープンソースソフトウェアについてオーディナリー・ゲーマーのムタハが動画で丁寧に説明しています。
「オープンソース」とはソフトウェアのソースコード(プログラム)が公開されていて、誰でも自由に使えて、自由に改変できることです。改変したものを新たに配布することも自由です。
AndroidやChrome OSの元になったOSのLinuxもオープンソースで、数多くの改変版(ディストリビューション)が配布されています。誰もが自由なアイディアで機能を付け加え、配布することでよりよいソフトウェアができる──これがオープンソースの精神です。
OBSもオープンソースソフトウェアです。OBSはオープンソースですから、誰でも改変して再配布できます。ですから、ストリーム・ラブズがOBSを改良して配布するだけなら問題ありません。しかし、ほぼ元の形のまま、自分たち独自の商品のように装って商売するのは見下げ果てた行為です。
しかもPC周辺機器メーカーのLogitechは知ってか知らずか、2019年にOBSではなくストリーム・ラブズをなんと$89M(約100億円)で買収していました。泥棒の懐に大金が転がり込んでいたようです。
今回、いかがわしい商売に歯止めがかかったのはコミュニティにとって朗報です。また、視聴者には見えにくい、ストリーミングを支える技術に光が当たったのもよかったのではないでしょうか。