美容YouTuberでジェフリー・スター・コスメティックスの創業者にして大富豪のジェフリー・スターがNFTアート(クリプトアート)に進出しました。今回はジェフリーとは何者か、NFTアートとは何かを解説します。
ジェフリー・スターって誰?
ジェフリー・スターは美容YouTuberです。YouTube登録者数1660万人で、ジェフリー・スター・コスメティックスの経営者でもあります。2019年の後半に売り出した大物YouTuberのシェーン・ドーソンとのコラボ商品は1日で38億円を売り上げたと報道されています。
美容YouTuber界に並ぶもののないジェフリーでしたが、2020年に過去の人種差別発言や暴行の告発で炎上し、最近はなりを潜めていました。新作コスメも以前とは違い即日完売とはなっていません。
しかし、ネット上の人気者から出発して大富豪となった有能なビジネスマンであるジェフリーがここで終わるはずがありません。ジェフリーが次に目をつけたのはNFTアートでした。
NFTアート(クリプトアート)とは?
NFT (non-fungible token)アートもしくはクリプトアート(crypoart)とは、ブロックチェーン技術を利用して唯一性を保証するアート作品です。
ブロックチェーン技術はビットコインなど暗号通貨1(暗号資産)で使われる技術です。世界中のコンピュータで取引記録を相互にチェックし合い、改竄が非常に難しいのが強みです。
ブロックチェーン技術は、ビットコインを誰がいくら持っているのかを記録できます。ブロックチェーン技術を応用すれば、お金(ビットコイン)だけでなく、「もの」の所有権も記録できます。たとえばチケットや会員権が誰から誰に譲渡されたかを記録するのは、お金のやりとりの記録と同じようにできるのがわかると思います。
NFTアートあるいはクリプトアートとは、ブロックチェーンを使ってアートの所有権も同じように記録する仕組みです。デジタルデータは簡単にコピーできてしまうためアートとして高い価値がつきにくかったのですが、誰が所有者かをはっきりさせることで価値が上がると期待されています。
所有権がはっきりすれば価値が上がると期待されているのは、版画作品の流通と同じようになると思われているからです。版画は(デジタルではない)古典的な芸術作品ですが、複製できます。複製が大量にあると価値がなくなるので、版画作家はたとえば100枚だけ刷り、刷り上がった作品に通し番号をつけて販売します。すると、総数が100枚だけだとわかるのでコレクターは安心して購入できます。
デジタルデータでも誰が所有者かわかれば、版画と同じように所有に価値が出ると期待されているのです。ただし、デジタルデータですのでコピーができなくなるわけではありません。コピーが流通していても真の持ち主が誰かがはっきりするだけです。これは現代の複製技術が版画をかなり精密に複製できても、コピーはオリジナルだとはみなされないのと同じです。
NFTアートには期待が集まっており、先日、ある作品がクリスティーズで$69.3M(約70億円)で落札されています。
ジェフリーのNFTアートは?
Instagramでのジェフリーの告知はこちらです。暗号通貨イーサリアムを用意して!と呼びかけています。
Raribleのジェフリーのページはこちらです。3月18日から購入できるようになりました。
写真家のMarcelo Cantuとのコラボです。十数種類の作品があり、オークションになっています。作品によって異なりますが、最高入札価格は0.01 WETH2から0.5 WETHぐらいのようです(日本円にして200円から9万円程度)。個数は5点限定から4000点限定までありますが、執筆時点では、4000点限定品が12個、250点限定品が1個売れているだけです。
コスメを売り出せば以前なら即日全品完売、最近でも一部の商品は数日で完売していたカリスマ性を誇るジェフリー・スターにしては期待外れな売れ行きです。ジェフリーの熱狂的なファンは新作コスメが出るたびに手鏡や口紅をコレクターアイテムとして買い集めていましたが、デジタルデータを買い集めるのは躊躇してしまったようです。
Image: Jeffree Star Announcing he’s an X OFFICIALLY, André François McKenzie on Unsplash, McGill Library on Unsplash