ファストファッションに潜む問題 フランス人デザイナーが語る

ファッション

デザイナーでもあるフランス人YouTuber、ジュスティーヌ・ルコント(Justine Leconte)さんの動画です。

今の時代、ZARA、GAP、ユニクロなど、安くてそこそこ良い服が簡単に手に入ります。これらのブランドをファストファッションと総称します。低価格、短いサイクルで大量に生産し販売します。人気のファストファッションですが、実は問題が潜んでいます。

ファストファッションは生産のあらゆる面で経費を削減して安く衣類を提供しています。 生地の品質(原価)、縫製、製造工程のすべてで経費を圧縮します。製造工程で必要な人件費もかなり安く抑えているため倫理的に問題があるとも指摘されています。

具体的に見てみましょう。

Which brands are “fast fashion”? How to tell (in 4 points) ǀ Justine Leconte
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過去に大惨事を起こしている

例として、ダッカ近郊ビル崩落事故があげられます。これは2013年バングラデシュの8階建ての商業ビル「ラナ・プラザ」が崩壊した事故で死者1,127人、負傷者2,500人以上が犠牲になりました。ビルには縫製工場が入居していました。働いていた人たちは安全性が確認されていないビルでの労働を強いられていました。縫製工場は欧米のブランドから仕事を受けていました。これらのブランドは、労働賃金を安く抑えるため従事する人々がどのような境遇にさらされているかは考慮していなかったのです。

2013年に公表された「ラナ・プラザ」に発注していたブランドのリストです。

  • Walmart, USA
  • Children’s Plaza, USA
  • Primark, Ireland
  • Matalan, UK
  • Bonmarché, UK
  • Cato Fashions, USA
  • Tea (Carrefour brand), France
  • Benetton, Italy
  • Mango, Spain
  • Joe Fresh
  • (clothing line at Loblaws), Canada
  • Industrias Critain Lay S.A., Spain
  • Shine (Texman brand), Denmark
  • Jack’s (Texman brand),Denmark
  • M. Corona, Italy
  • Yes Zee, Italy
  • NKD, Germany

リストの中には商品の価格帯がファストファッションに該当していないようなブランドも含まれていますね。

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ブランドはどこの企業の傘下か調べてみる

例えば、大企業INDITEXはZARA、 ベルシュカ(Bershka)、マッシモ・ドゥッティ(Massimo Dutti)、オイショ(Oysho)、プル・アンド・ベア(Pull & Bear)、ストラディバリウス(Stradivarius)、ザラホーム(Zara Home) などのブランドを展開しています。多様な需要に応えるためのブランド展開なのですが、生産ラインは同じ可能性が高いのです。「ラナ・プラザ」では当時、ZARA、H&M、Gapも生産されていました。

当時バングラデシュの従業員には月$38(約4200円)が支払われていましたが、これは世界で最低の賃金です(と、動画内でJustineさんは言っています)。安価な海外で生産を発注し、労働力の搾取をしてこれらのブランドは生産されているのです。

企業の理念は?

「ラナ・プラザ」が崩壊したあと、劣悪な労働を強制していた企業は世界中から批判されます。そこで企業はACCORDに合意し労働者の安全を誓います。(アメリカの企業はACCORDには合意していません。代わりにThe Alliance for Bangladesh Worker Safetyを立ち上げ、同様に改善に努めています。)

5年が経ち、環境は是正されてきているようです。安全が確認されなかった工場は閉鎖され、労働者の安全が守られるようになりました。

しかし、賃金面では不満が残ります。バングラデシュの最低賃金は2016年に$68まで上がりましたが、インフレで生活賃金も同様に上がっています。(生活賃金はおよそ$177–$214と算出されています。)まだ労働者に正当な対価は支払われていないのです。

ブランドが要求する納期に間に合わせるため残業も頻繁に起こっているようです。

商品の適正な価格を考える

もしお店で5€(約630円)でTシャツが売られていたら、内訳はどうなっているでしょう?

  • 価格の50%は小売店に
  • 価格の25%はブランドに
  • 残りは、流通コスト、工場管理費、原価、製造費、縫製労働者の賃金

となります(プライベートブランドPBの場合は小売り50%+ブランド25%の75%)。縫製労働者の賃金がいかに少ないか分かりますね。

抗議としてバングラデシュで生産されている洋服の購入を止めれば、バングラデシュの労働者は仕事を失ってしまい根本的な解決にはならないのでは?と思うかもしれません。

しかし現実は、世界にバングラデシュほど安く生産できる場所が無いのでアパレルブランドは他に生産拠点を移動できないのです。

安く衣服を購入できる便利な時代ですが、世界のどこかでそのしわ寄せを受けている人々がいるのであれば改善していかなくてはと思います。

この分野に興味がある方にはドキュメンタリー映画『ザ・トゥルー・コスト ファストファッション 真の代償』がオススメです。

参考:バングラデシュの今はどうなっているのかニュース記事(英語)
「ラナ・プラザ」に関わったブランドリスト(英語)

【2020年9月21日】本文を加筆訂正しました。

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