YouTubeが「今後、低評価の結果を非表示にする」と発表しました。低評価ボタンは存続しますが、結果は視聴者には表示されません。
懸案だった低評価ボタン
YouTubeは2019年1月の時点で「動画の評価システムを改善するにはどうすればよいか?」を問題提起していました(本サイト記事)。ゲーム感覚でハラスメントを目的として低評価を押す集団(ディスライク・モブ)の対策が必要だ、と発表されていました。
2021年3月には、低評価ボタンを非表示にする試験的な運用が発表されていました(本サイト記事)。この発表にクリエイターたちは批判の声を上げていました。
2021年11月10日に、YouTubeから正式に「低評価の結果を非表示にする」と発表されました(YouTube公式ブログ投稿)。
今後もクリエイター本人はYouTubeスタジオで結果を確認することができます。ただし視聴者には表示されません。YouTubeはハラスメント対策として、今回の決定に至ったと発表しています。
さらに同日YouTube API(プログラムから自動でYouTubeのデータを取得するための仕組み)の開発者向けにも12月13日以降、低評価数を取得できなくなると通知がありました。ただしAPI利用者は申請すれば例外が認められる可能性もあります1。必要上の理由でAPIを取得した場合でも、その情報を一般に公開してはならないそうです2。
YouTuberの意見を紹介します。
YouTuberの意見
インフルエンサーの詐欺商法を批判する動画を投稿しているコフィズィラの意見です。
One more step to the advertiser utopia, where there is no bad news, no bad people, no bad takes, only more views! https://t.co/DhRplfogiD
— Coffeezilla (@coffeebreak_YT) November 10, 2021
YouTubeの時事ニュースを扱い、詐欺的なインフルエンサーを告発するYouTuberのムタハも同じような意見を述べています(ツイート)。
YouTuberのターキートムです。
(2022年11月6日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)
こちらが「ジャーナリストの意見」の一例です。
(2024年6月23日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)
YouTuberのオプティマス(Optimus)の動画です。
オプティマスは「低評価ボタンを非表示にした理由について陰謀論めいたウワサが流れているが、発表にあるとおりハラスメント対策が理由なら納得できない。正直、低評価の結果に悩むような人はYouTuberには向いていないと思う。俺は、意見を言って低評価押されまくったとしても意見を変える気はないし、気にしない。もし、低評価が多くて命を絶つような考えが浮かぶならその人はYouTubeに動画を出すべきじゃないし、カウンセリングを受けるべきだ。」と話しています。
低評価ボタンを隠す仕様に反対しているクリエイターは「低評価を押された程度のハラスメントを気にしてはYouTuberはできない」と話す人が多いようです。たしかに人気YouTuberは異常なほど強靱な精神力を持っているなと感動することがあります。心臓に毛が生え、度胸の据わった性格でないとYouTuberは務まらないのでしょう。
しかし、長年ハラスメントに耐えてきたYouTuberでも何かをきっかけに心を病むことがあります。ハラスメントに耐えろ、気にするな、という意見は、生き残った猛者だけが言える強引な主張のようです。長時間労働が横行している会社で働いている人たちが「俺たちは長時間労働に耐えてきたから、新入社員も俺たちと同じように耐えろ」と言っていたとしても、長時間労働を続けてよい理由にはなりません。「現状がXである」からといって、「未来もXであるべき」とは言えないからです。
この措置により、今よりも多くのクリエイターが活躍できるようになる可能性もあります。深読みすると、低評価を消すことに反対しているYouTuberには、悪徳YouTubeがはびこることを危惧するだけでなく、参入障壁を高く保ちたい意図もあるかもしれません。
YouTubeのハラスメント対策は効果を発揮するのでしょうか。
余談ですが、今回の発表をしたYouTubeの公式動画は低評価が多く付いています。
民主的な空気を保つために、YouTubeの公式動画だけは評価を表示し続けてほしいと思います。
注
- If you would like to apply for an exemption, you must complete this application form. Otherwise, your access to public dislike count data via the Data API will end on December 13, 2021.
- Developers who do not display dislike counts publicly and still need the dislike count for their API client can apply to be put on an allow list for an exemption.