YouTubeのトレンドはYouTube運営が動画を選定し、順位を決定しています。実際に人気の動画や、話題になっている動画が必ずしもトレンドに反映されないことからクリエイターの間では疑問が浮上していました。
YouTubeはtraditional media(旧来メディア:テレビ・雑誌・新聞・ラジオなど)の動画に偏向しているのではないか?という疑問です。そんな疑問に答えるべくチャンネルCoffee Break(運営者 Stephenステファン)が7ヶ月間におよび40,000本の動画・2000チャンネルの動画を解析しました。
どのチャンネルが投稿した動画が、どれくらいの回数視聴されるとトレンド入りするか検証しています。
旧来メディアは有利
Coffee Breakの動画です。
※詳細な解析方法は本記事では省略します。以下の内容はこちらの動画の内容に即しています。
動画のカテゴリーは以下のとおりです。
- YouTuber – YouTubeに動画を投稿し、人気になった人の動画。
- Commercial – 商品を宣伝するための動画。コマーシャル動画。
- Trailer – 映画の予告動画、ゲームの予告動画など。
- Music – 音楽やミュージシャン関連動画。
- Traditional media – テレビ番組・新聞社・セレブYouTuber1などの動画。
- Conventional viral – バイラルはYouTube登録者数10,000人以下のクリエイターが投稿した動画が爆発的な勢いで視聴されたものを指す。本来の意味のバイラルの定義にあった動画。
結果は次のとおりでした。
旧来メディア(テレビ・雑誌社・新聞社の動画やセレブYouTuberの動画)が圧倒的な高頻度でトレンド入りしていることが判明しました。具体的にはESPN(スポーツ専門チャンネル)、エレンの部屋(テレビ番組)、ジミー・ファロン(テレビ番組)、スティーヴン・コルベア(テレビ番組)、ネットフリックス、NBA、CNN、Voxなどです。
いかにテレビ番組や大手メディアがひいきにされているか、動画再生回数を比較してみましょう。
トレンド入りするために必要な再生回数は?
YouTuberのローガン・ポールがトレンド入りするためには動画は1100万回再生されないといけません。(計測中4回トレンド入り。)
ESPNは50万回再生されるとトレンドに入っていました。(計測中84回トレンド入り。)
トレンド入りするための閾値はチャンネル毎に異なることがはっきりしました。
国別では?
国でトレンドを比較すると、興味深いYouTuberがいました。ピューディパイです。彼の動画は頻繁にトレンド入りしていますが、アメリカでは稀です。
計測中ピューディパイがトレンド入りした国のランキングです。
- カナダ – 45回
- ドイツ – 42回
- フランス – 41回
- メキシコ – 40回
- ロシア – 39回
- インド – 37回
- 日本 – 16回
- イギリス – 10回
- 韓国 – 2回
- アメリカ – 1回
英語が主要な言語ではない国でもピューディパイはトレンド入りしています。しかし、アメリカではたったの1回のみです。そのため、論争を起こすクリエイターのピューディパイをYouTubeが除外しているのではないか?と疑問が出ました。
そこで、ほかの問題が多いクリエイターも同様に除外されているのか検証しています。
問題が多いクリエイターはどうなる?
アメリカのトレンドとカナダのトレンドで比較しています。アメリカとカナダを比較する理由は、英語を主要な言語にしていて、文化も似ていて、時間帯が同じであるからです。
問題が多いクリエイターに選出されたのは、ローガン・ポール(Logan Paul)、ジェイク・ポール (Jake Paul)、ジョー・ローガン(Joe Rogan)、フィリップ・デフランコ(Philip DeFranco)などです。著名で、ファミリーフレンドリーではない動画を投稿しているチャンネルです。
チャンネル | US | CA |
---|---|---|
ローガン・ポール | 4 | 7 |
ジェイク・ポール | 2 | 22 |
ジョー・ローガン | 0 | 74 |
フィリップ・デフランコ | 2 | 87 |
ピューディパイ | 1 | 45 |
このように、国によってトレンド入りする回数が異なる現象は旧来メディアの動画では見られません。問題があるYouTuberの動画のみ除外されているようです。アメリカは厳しく動画を排除し、カナダの検閲は甘いようですね。あくまで仮説ですが。
明白なダブルスタンダード
YouTuberは放送禁止用語を多用しているからトレンドに入れないのでしょうか? 原因はそこではないようです。なぜなら旧来メディアの動画で放送禁止用語が含まれているものでもトレンドに入っているからです。ダブルスタンダードです。
(2023年8月12日:削除されたYouTube動画をキャプチャ画像で置き換えました。)
双子のYouTuberのRackaRackaは、旧来メディアの動画とYouTuberの動画でルールが異なるのは納得がいかないと話しています。
トレンドの記録
今回紹介したCoffee Break(ステファン)の動画では、トレンド入りに必要な他の要素(人を煽る内容ではない、広範な視聴者に受け入れられる、世界やYouTubeに起こっていることを捉えているなど)は考慮していません。視聴回数とトレンド入りの関係だけに焦点を絞っています。結果として、YouTuberは不利であるのが暴かれました。(ただし、ステファンが計測していたのは2018年の6月までなので、現在はトレンド入りの動画の条件が変わっている可能性があります。)
YouTube Magazineでは週に1度「カナダ急上昇ランキング」としてトレンドを紹介しています。目的は、YouTubeがどのような動画を推奨しているか、どのような動画が多く再生されているかを記録することです。人気YouTuberが多く住んでいるアメリカではなく、カナダに設定しているのは、人の手が加えられていない(とされる)トレンドが見られるからです。ステファンの調査でもカナダのランキングはアメリカのランキングよりもゆがめられていないことが裏付けられました。今後も引き続きカナダの急上昇ランキングをお届けします。
YouTubeは旧来メディアのようになりたいのでテレビの動画やセレブの動画を優遇しているのかもしれませんが、YouTubeの主役はやはりクリエイター(生粋のYouTuber)たちでしょう。もう少しクリエイターの動画をトレンド入りさせてほしいです。
Image: Rob_L.