ここ数年、米国ではスタンレー(Stanley)のカップ(タンブラー)が大人気になり、品切れが頻発しています。2023年の年末から2024年の年始にかけても、バレンタイン限定商品が発売され乱闘騒ぎが起こっています。発売当日にはお店の前に長蛇の列ができ、列の割り込みが発生し、購入した人は盗難に遭いそうになる、など大騒ぎになっています。いったい何が起こっているのか、TikTok動画を中心に紹介します。
限定商品に殺到して奪い合い
スタンレーはアウトドア商品、特に保温容器で有名なメーカーです。そのスタンレーがスターバックスとコラボした限定商品を売り出していました。ピンク色でかわいらしい商品です。スタンレーのカップは一部の人にとってはコレクターズアイテムになっており、限定商品の発売となれば必ず購入します。こちらの動画の人は三桁に及びそうな数のコレクションを壁に飾っています。
バレンタイン限定商品はターゲットのスターバックスの店舗で発売されました。価格は$49.95ですが、eBayなどのサイトでは$250の高額で転売されています。店舗では即座に売り切れとなることがしばしばのようですが、これは転売目的で買いあさる人がいるのも一因のようです。こちらの記事には入荷待ちが15万人に達しているとあります。
こちらの動画ではターゲットの限定商品を買い求める人々がラックに押し寄せる様子が映っています。ものの数分で全部消えたようです。
押し倒され倒れる客がいるほどの人気です。
ここまでの内容はカイリー(Kiki Chanel)が動画にしています。
カイリーの動画ではスターバックス・スタンレーの限定商品を買う列に割り込みがあり言い争いになっている様子や、タンブラー購入者からタンブラーを奪おうとする人の動画にリアクションしています。犯罪スレスレ、あるいは犯罪そのものです。治安が悪すぎます。
行列の割り込みと盗難騒ぎについて詳しく知りたい人はこちらの動画をごらんください。
個人的にはこのスタンレーカップのマニアの女性の顔が怖くて見ていられません。時々、正気とは思えない目つきをします。
スタンレーはなぜ人気に?
スタンレーが人気になったのは最近ではありません。人気は数年前からでした。こちらの2022年のNew York Timesの記事では、近年、水筒がおしゃれなアイテムとしてたびたび取り上げられていると書かれています。今や懐かしいVSCO girlの必携アイテムにもボトル(Hydro Flask)がありました。
New York Timesの記事では2019年には生産中止になりかけていたところ、SNSを通じて宣伝され、爆発的に売れるようになったことが紹介されています。その後、スタンレー社の売上は年率200%を超える成長をしています。
子育てブロガーやライフスタイルブロガーたちが宣伝し、素敵な暮らしに欠かせないアイテムというイメージが作られたのも爆発的な人気の理由のようです。
スタンレーカップはインフルエンサーマーケティングの成功例といえそうです。2023年の年末には、車が燃えてもスタンレーカップは無事だったとTikTokに投稿した人に、スタンレー社が「素晴らしい宣伝をありがとう! 車をプレゼントします!」と回答しています。これもうまい宣伝方法です。
スタンレーのカップをみんなが持っているので、次はカップを個性的に飾りましょう!という商品も多数売られているようです。
こちらの動画では限定商品を購入した人がラベルにラミネート加工をして大切に保管している様子を冷ややかな目でリアクションしています。
趣味が悪すぎる……。
人気の根源にあるもの
こちらの動画では、スタンレーのカップがセレブたちのステータスシンボルになり、そのステータスシンボルを自分もほしいと思った中流の人々が熱心に買っていると解説されています。
こういう顕示的消費をしたがるのは自信がない、アイデンティティを持てていない人だとも語られています。個性的な何かではなく、あくまで大量生産品で、色違いではあっても機能に差がないものを買うのが自信をつけるのに役立つかはわかりません。
健康的な暮らしへの憧れも理由でしょう。米国では、地域によっては水道水が飲用に適さず、水の代わりにコーラなどの清涼飲料水を常用することもあります。水筒に水を入れて飲めることはステータスシンボルになりうるのかもしれません。
おまけ:もう一つのスタンレーカップ
時事ネタ何でもござれの大人気のしゃべくりYouTuber、モイストクリティカル(penguinz0)もスタンレーカップを取り上げています。
「正直、スタンレーカップってのを全然知らなかったんだよね、俺。ホッケーの優勝カップのことだと思ってた。」だそうです。実際、NHLの優勝カップの名前はスタンレー・カップです。プロ選手が氷の上で優勝トロフィーを奪い合うのは結構ですが、ショッピングモールで新発売の商品を奪い合うのはやめましょう。