5月5日は日本ではこどもの日で祝日です。この日はアメリカでもお祭りなのはご存知でしょうか? 日本でも最近少しずつ浸透してきたシンコ・デ・マヨです。シンコ・デ・マヨとは何の日で、なぜお祭りなのでしょう? 動画で見てみましょう。
アメリカの祝日、シンコ・デ・マヨ
シンコ・デ・マヨ(Cinco de Mayo)は「5月5日」という意味のスペイン語です。アメリカではメキシコ系移民のお祭りということになっていて、パーティーが行われます。
こちらは2018年のタルサ(オクラホマ州)のシンコ・デ・マヨの様子を伝えるニュース動画です。
メキシコスタイルのプロレス(ルチャリブレ)興行が行われ、メキシコ料理を出す店に人が集まり、屋台が出ている様子が映っています。2010年の国勢調査ではオクラホマ州でのヒスパニック住民の割合は8.9%ですが、メキシコ系住民に限らず、多くの住民にとって祭日になっていることがわかります。
こちらの記事で紹介した通り、ヒスパニックは米国内で人口が急増しており、スペイン語話者も増えています。
メキシコ系移民のお祭りは米国全体のお祭りになっています。
シンコ・デ・マヨは何の記念日?
シンコ・デ・マヨは1862年5月5日のプエブラの会戦でのメキシコの勝利の記念日です。プエブラの会戦は、対外債務の支払い猶予を決定したメキシコにフランスが侵攻し、発生した戦いです。メキシコ軍は装備でも人員でもフランス軍に大きく劣っていましたが、この戦いに勝利しました1。
よく誤解されるのですが、シンコ・デ・マヨはメキシコの独立記念日ではありません。メキシコ独立戦争は1810年9月16日に始まったため、独立記念日は9月16日になっています。
こちらのアレクサンダー・マーティン(Alexander Martin)の動画では「シンコ・デ・マヨってどういう意味? 何の日か知ってる?」とシンコ・デ・マヨの夜にインタビューして回っています。
「シンコ・デ・マヨ」が5月5日のことだと知っている人は少なくありませんが、やはり独立記念日だと誤解している人が多いようです。しかも、「スペインからの独立」と答えるのはともかく、「アメリカからの独立」「テキサスからの独立」と珍回答が続出しています(テキサスは元々メキシコ領だったが1836年に独立、1845年にアメリカに併合)。「メキシコとどの国の戦争の記念日でしょう?」という質問には「歴史は落第したからわかんない!」という回答が出ました。
全員、酔っ払いすぎです。何の日だか知らなくても、飲めるなら何でもいい、という気分もわかりますが。
実はメキシコでは祝日ではないシンコ・デ・マヨ
アメリカでも祝われているシンコ・デ・マヨですから、本国メキシコではさぞかし盛大に祝われているのでしょう。アメリカ出身のYouTuberフォード・クォーターマン(Ford Quarterman)がノリノリで5月5日のメキシコの街に飛び出していきますが……
そうでもないようです。車で走りながら「シンコ・デ・マヨ! メキシコ万歳!」と叫びますが、反応は薄く、全く盛り上がりません。「見ろよ、みんなお祭り騒ぎだぜ!」と街の映像を流しますが、特にお祭りもなく、日常です。路上で一人踊りシンコ・デ・マヨを祝うフォードは完全に頭のおかしいガイジン(gringo)です。どういうわけか、ビルの工事現場にビールを吊り上げている人たちもいましたが……。
実は、メキシコではシンコ・デ・マヨは祝日ではありません(プエブラの会戦が行われたプエブラ州を除く)。平日です。
シンコ・デ・マヨはメキシコよりもアメリカで大きく祝われています。こちらの動画でも、なぜかアメリカで祝われている不思議な日と語られています。
アメリカでシンコ・デ・マヨが注目されるようになったのは1960年代から1970年代の公民権運動からです(チカーノ・ナショナリズム)。メキシコにルーツを持つ人々が、民族の誇り、メキシコとアメリカの歴史の転換点としてシンコ・デ・マヨを祝うようになりました。
それにはこんな事情があります。プエブラの会戦は南北戦争と同時期でした。敗れたフランスはアメリカ連合国(南軍)を支援していました。プエブラの会戦でメキシコが勝利しなければ、アメリカの歴史も変わっていた可能性があります。シンコ・デ・マヨはアメリカにとっても重要な日なのです。ただし、アメリカ国内でも地域によってシンコ・デ・マヨを祝う度合いは違うようです。
シンコ・デ・マヨはいつから祝われるようになったの?
メキシコにルーツを持たないアメリカ人もシンコ・デ・マヨを祝うようになったのはもう少し後のことです。
こちらの動画によれば、それはビール販売会社のキャンペーンによるものだったそうです。
こちらの記事にもありますが、1989年にコロナビールの輸入業者がシンコ・デ・マヨにはメキシコのビールを飲もうという広告キャンペーンを開始しました。それ以来、アメリカでシンコ・デ・マヨが定着したようです。
今ではシンコ・デ・マヨはアメリカ人なら誰でも知っているメキシコとメキシコ移民の日になりました。民族のアイデンティティや記憶も、商業主義によって興隆するようです。