ファッションブランドとメディアの関係について考えさせられる出来事が起こったので、その話を紹介します。安価な靴を売るPaylessがイタリアのデザイナーブランドを装って偽の高級靴屋を開店し、ファッショニスタたちを集めてだましたのです。経緯は次のとおりです。
高級靴屋がオープン
イタリアのデザイナーブランド「PALESSI」という高級靴屋が開業しました。お披露目パーティーに招待されたファッショニスタ達は「素晴らしい靴です。エレガントで洗練されていて、どんな服装にも合わせられる!」と褒めちぎります。しかし、その靴は実は安価なPaylessの商品なのです。本当は$34の靴を$645と表記しています。(日本円でおよそ3500円→7万円に。)
Paylessのマーケティング責任者は「このキャンペーンは多くの人々にPaylessをもう一度見直し、ショッピングモールに出店しているただの靴店ではないことを認識してもらう良い機会と感じました。」と話しています。
ブルックリンの会社DCX
この大規模ないたずらはブルックリンにある広告代理店DCXによる発案でした。この従業員わずか10人の会社はbig media pranks(メディアを使った大規模ないたずら)を専門にしています。この広告代理店を使ってPaylessは2017年に大量解雇と閉店が相次いだことで低落したイメージを転換しようとしたのです。
PaylessとDCXはまず、いたずらを仕掛けるにあたり適当な店舗のロケーションを選定しました。場所は観光地でもあるカリフォルニアのショッピングセンター、サンタモニカ・プレイス。ルイ・ヴィトン、 バーニーズ、マイケルコース、そしてティファニーなどの高級ブティックが軒を連ねている一角です。かつてアルマーニが入っていた店舗を1週間借ります。インテリアデザイナーも雇い高級感溢れる店内に改装します。
次はブランド名を考えます。高級感のある異国の名前、かつPaylessに発音の近いブランド名としてBruno Palessiが選ばれました。架空のイタリア人デザイナーBrunoが新たなブランド「Palessi」を立ち上げた設定です。
次はインスタグラムとブランドのホームページを開設します。
実際の「Palessi」のアカウントです。
(2024年9月8日:削除されたInstagram投稿をキャプチャ画像で置き換えました。)
非常に凝った仕掛けですね。
トークショーでも話題に
トークショーでも話題になっています。
お披露目パーティーに招待されたファショニスタ達がことごとく騙されているので雰囲気にのまれたからでは?と話しています。
さらに工場に勤めていた従兄弟の話をしています。
同じ工場で同じように作られた製品は別のブランドのタグが付けられ違う価格で店頭で売られているそうです。品質に違いはなくてもブランドに消費者はお金を払っていると話します。
「Palessi」でお会計を済ませたファッショニスタ達にはネタばらしをして、返金をして希望すれば靴もプレゼントしたそうです。騙されたファッショニスタ達はかわいそうですが、いかに人々は商品の付加価値にお金を払っているか理解できるいたずらでした。
参考:‘They had us fooled’: Inside Payless’s elaborate prank to dupe people into paying $600 for shoes
広告代理店DCXのサイト