これまでフロリダがいじられる現状と、歴史的な背景に迫ってきました。フロリダマンに関連した秀逸な記事があったので紹介します。男性誌『エスクァイア』の記事「2015年フロリダマンの登場した47のすごい見出し」です。
真のフロリダマン的事件は以下の要素を含むべし:頭の悪い犯行計画、良識からの桁外れの逸脱、警官とのありえない遭遇、ヌンチャク、公然または野外の性行為、ワニまたはその他の爬虫類、不要品の大規模な強奪、スタンガン、奇っ怪な迷信、そしてもちろん、薬物の蔓延。世界最狂半島(World’s Craziest Peninsula™)の犯罪はたいてい以上の少なくとも一つを備えているが、真のフロリダマンは複数を組み合わせてよそでは起こりえなかった不法行為を創造する。
しかし今回、選考基準はさらに上がった。ここに集ったフロリダマンは要求水準を軽く超え、泥沼の犯罪性に新生面を切り拓いている。飛行機でヤクを吸わせてくれない乗務員を殴ったぐらいじゃ落選だ(イグアナも入浴剤1も出てこない話なんて……)。2015年の最優秀フロリダマンはこいつらだ。寄せ集めの奴らだから、地域以外の共通点は、超異常で超違法なことをしでかす不気味な能力だけだ。
ビリー・コーベン監督へのインタビュー
今回、「フロリダマン特集」をしようと思ったきっかけがこのインタビュー動画でした。フロリダ州出身、フロリダ在住の生粋のフロリダマンであるビリー・コーベン監督に、ジョー・ローガンが話を聞いています。
ビリー・コーベン監督は今まで『コカイン・カウボーイズ』や『コカイン・カウボーイズ2』というドキュメンタリー映画を製作しています。どちらもマイアミの歴史を知る上で興味深いドキュメンタリーです。実際の密輸業者や殺し屋が出演していて、「よく撮ったなあ」と言わずにはいられません。
ビリー・コーベン監督は「フロリダはクソ野郎が集まる場所。犯罪者の巣窟、誰かのふりをして生きるにはもってこいの地。」と話しています。
リゾート地の崩壊
フロリダにはリゾート地としての一面もあります。フロリダのリゾートについて興味深いドキュメンタリーを紹介します。ショーティー・アワード2019にもノミネートされていたBright Sun Filmsというチャンネルです。
廃墟と化したフロリダのリゾートホテルが舞台です。
以下はドキュメンタリーの抄訳です。
タイムシェア形式のリゾートホテルを経営しているのはMurf Klauber。部屋の所有者は年間30日使用できる。それ以外の日は通常のホテルのように一般客に貸し出す形式である。このホテルは7年前に廃業した。夜逃げのように、部屋には家具や日用品が取り残されている。
大統領や多くのハリウッドセレブが70年代から90年代半ばにかけてこのリゾートホテルに滞在した。このホテルは町の名物だった。デザイン重視で木造部が多かった建物は、老朽化が進んでいた。所有者たちには管理費が重くのしかかっていた。2004年のハリケーンシーズンの到来以降、補修工事の費用がかさみ始める。Klauberは所有者に一部屋あたり年間約160万円($15,000)の費用を請求していた。
3部屋の接続と30日以上の利用延長を望んだ所有者(Andy Adams)は所有者が作った管理組合長となり、ロビー活動を開始。160万円の補修費用負担を拒否した。結果、所有者とKlauberの訴訟となる。リゾートホテルの運営に暗雲が漂う。
2007年Klauberは所有者たちにおよそ15億円($14M)もの補修費の未払いがあると主張。2009年に連邦倒産法第11章(債務再編しつつ事業を継続する)を申し立てるが、棄却。
2010年に連邦倒産法第7章(事業の完全な清算)の申し立てをし、受理される。2010年8月正式にリゾートホテルは廃業となった。
あの2001年の9月11日のテロが起こった前日に、ジョージ・W・ブッシュ大統領がフロリダで滞在していたのは、このホテルでした。パーティーの様子、滞在した部屋の映像もドキュメンタリーには挿入されています。
自然の脅威や度重なる訴訟でリゾートホテルがうち捨てられてしまった現実をドキュメンタリーは捉えています。舞台になったリゾートホテルは執筆時、解体されたようです。
フロリダマン特集その1でも少し触れましたが、フロリダはアメリカの主に富裕層が引退後に移住したいと望むリゾート地でもあります。フロリダ州の世帯収入の格差は全米最悪です。この格差もまたフロリダマンの犯罪の一因です。
フロリダがフロリダである理由
Florida manという言葉が有名になったのは2013年ごろからですが、2019年3月22日にGoogleトレンドワードになりました。フロリダマン特集その1で取り上げたFlorida man challengeが大ブームになったからです。その流行を受けて書かれたのがこちらのCNNの記事です。
CNNの記事ではフロリダマン現象が起こった理由として大きく4つの原因が考察されています。
- サンシャイン法という情報公開法があるので、犯罪が発生すると即ニュースになる。フロリダで犯罪が起こると細大漏らさずニュースになってしまうので、面白いニュースも多くなる。
- フロリダ州は人口2100万人で、全米で3位2。この人口の多さが犯罪の発生率が高い理由だと考えられる。
- 熱帯の気候。とにかく湿度が高く、人々はイライラしやすい。なので犯罪も多発することに。
- 精神疾患のための予算が全米で最低レベルである。
情報公開法のおかげで即ニュースになり、ネットで笑われているフロリダマンには治療を必要としている人もいるのです。
ビリー・コーベン監督は「フロリダの今日は、アメリカの明日」とよく話しています。フロリダマンは先進国共通の病理なのかもしれません。
『エスクァイア』の記事の冒頭部は次のように締めくくられています。
というわけで、刮目せよ。フロリダマンの2015年である。
今は2019年ですが、やはりフロリダマンに注目が必要でしょう。突拍子もない行動で私たちの日常に新鮮な笑いを提供してくれる人々として、また、普通じゃない犯罪を起こすことで助けを求めてくる声なき声として。
というわけで、本日から不定期ですが、フロリダマンのニュース報道の翻訳ツイートを開始します! こちらからどうぞ。
【フロリダマン特集1/3】フロリダがいじられる理由はこちらです!
【フロリダマン特集2/3】フロリダマンの奇行と薬物はこちらです!
参考:Florida Must Increase Its Support for Mental Health Services
Image: jc.winkle