近年、音楽レーベルの貪欲さを批判する声がしばしば上がっています。そんな中、グラミー賞の授賞式で音楽レーベルを批判したのは新人賞を受賞した歌手、チャペル・ローン(Chappell Roan)です。
チャペルは自身がパンデミック中に解雇された経験を振りかえり、いかに売れる前のアーティストが不遇な扱いを受けているかを話していました。チャペルは、生きていくための充分な給料は与えられず、健康保険にも加入できず苦労した経験から「私たちアーティストは音楽レーベルのために努力しています。音楽レーベルはどうでしょうか?」と問いかけていました。
ケンカに
グラミー賞の後、音楽レーベルの元役員はザ・ハリウッド・リポーター紙にオピニオン記事を投稿してチャペルに辛辣な反論をしていました。
オピニオン記事は「チャペルは業界の恩恵を受けている。チャペルはお世話になっている業界を批判できる立場にはない。音楽レーベルはお金を儲けるためにあるビジネスであり、慈善活動ではない。レーベルの手法が嫌なら最初から独立してすべてのリスクを自分で負え。契約が意味するのはレーベルからの投資であり、給料を確約するものではない。ほとんどの契約アーティストは売れないのでレーベルはリスクを負っているし、投資を回収できていないのが現実。変化を求めるならうわべだけの批判ではなく行動で示してみろ。」といった内容です。
この辛辣な内容にチャペルは再反論をしていました。「行動で示せとの要求があったので、レーベルに解雇されたアーティストに$25K(約400万円)を払って支援をすることにします。あなたも行動を示してください。」と投稿していました。
執筆時、元役員はこれに対して声明を出していません。
チャペルの志は素晴らしいのですが、チャペル一人が働きかけて改善できるほど問題は簡単ではないようです。
この騒動の頃、もう一人、チャペルのチームを批判する人がいました。チャペルにネイルを提供するように持ちかけられたアーティストのホリー(Holly Muniz)さんです。
ホリーさんの投稿
ホリーさんはチャペルのスタイリストチーム(代表はジェネシス・ウェブ)からチャペルのツアー2日前に連絡があり、「金は払わないが報酬としてSNSでのタグを付ける」と提示されたそうです。
ホリーさんは「チャペル・ローンが生きていくのに必要な給料を払うようにレーベルに要求しているのは皮肉を感じる。締め切り2日前に複数のネイルデザインを要求しておいて、私にお金を払う気はなかったのだから。私たちが無償で渡すネイルは決してタダではありません。何時間もかけた作品です。タグ付けでは経費を賄えません。」とチャペルのチームを批判しています。ホリーさんは証拠として依頼を受けた2024年5月10日づけのメールを公開していました。
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ホリーさんの投稿@hollywiththegoodnails
ホリーさんはチャペルのチームの要求を断ったそうですが、返事はなかったそうです。
その後、間接的にチャペルのスタイリストであるジェネシスが反論をしていました。その中で「業界に入りたい人はタダ働きをするのが当たり前。どれほど厳しい業界か知らない人が多すぎる。私は車で生活して借金作っても生きていく覚悟をした。アーティトとして生き、アートを作りたい、それだけ。」と投稿していました。
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ジェネシスの投稿@genesiswbb
どうもスタイリストの考えはチャペルの考えとは完全に一致しているとはいえないようです。
ホリーさんはさらなる反論を投稿していました。「他にも同様の提示をされたアーティストがいてその人は実際にネイルを貸したがいまだに返却されていないそうです。労働に正当な対価を払いましょう」と投稿しています。
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ホリーさんの投稿@hollywiththegoodnails
ここまでの内容はインフィニット・スクロールが紹介しています。
ホリーさんの告発を受けて、チャペルがスタイリストに改善を要求するのか注目です。音楽業界にせよ、スタイリング業界にせよ労働を搾取するのが前提になっている現状は改善の余地があるのでしょう。十分な対価を支払い、その代わりに関係するアーティストの人数を減らすしかないようです。