スニーカー転売業を営む若きビジネスマンが成功したのは、ママがナイキの副社長だったからではないかと騒がれています。発端はブルームバーグの記事です。
若きビジネスマンの名前はジョー・ヘバート
その若きビジネスマンとは19歳のジョー・ヘバート(Joe Hebert)。ジョーはポートランド(オレゴン州)でスニーカーの転売業を興していました。スニーカーのプレミア品は値が高騰し、活発な中古市場があります。ジョーはスニーカーの中古品市場で大儲けしていました。約2000万円稼いだ月もあったようです。ブルームバーグの記者は彼のビジネスの秘訣について取材をしていました。
2020年8月29日に公開された動画で、ジョー本人が倉庫を案内しています。
ジョーのInstagram (west.coast.streetwear)にはスニーカーの在庫が山積みになった写真が投稿されています。これらのスニーカーは市場でプレミア価格が付きコレクターの間で高値で取引されることもあります。
ジョーはスニーカーの市場価格の変動をいち早く察知し、その情報を売るビジネスも展開していました。Discordの会員制グループ『ウェスト・ブリックス(West Bricks)』です。月額料金$250(約2万5000円)のグループには2020年末時点で会員が450人いました。ジョーは『ウェスト・ブリックス』の会員へオンラインの価格情報、どの種類のスニーカーの価格が下がるか、いつ、どこでセールが始まるのか、小売店は何足の在庫を持っているのか、などの情報を提供していました。
ジョーは様々なスニーカーブランドを買い集め、売りさばいていましたが、スニーカーブランドの中で中古品市場が特に活発なのがナイキです。ジョーはナイキが生産終了するスニーカーを買い占め、中古品市場で売りさばいていました。
記者はジョーにナイキの内部情報はどこから得ているのか訊ねますが、はぐらかされます。ところが、偶然、記者は情報源に気づきました。あるときジョーからかかってきた電話がナイキの副社長アン・ヘバート(Ann Hebert)の電話番号だったのです1。
そう、ジョーはナイキの副社長の息子でした。ナイキの本社はジョーが起業したオレゴン州ポートランド都市圏にあります。アン・ヘバート副社長は小売店への商品の配分も担当していました。
ジョーはママからナイキの社内情報を得て、ママのクレジットカード2で限定品スニーカーを大量購入し3、売りさばいていたのです。若き天才ビジネスマンは、実はママのおかげで金を稼ぐ小ずるい坊やだったという衝撃的な記事でした。
Twitterの反応
この記事を受けてTwitter上では様々な反応が出ています。
The story starts with a Portland kid named Joe. Joe’s mom is a VP at Nike and GM of North America.
Like any self respecting suburban gen z kid, Joe uses bots to snag sneaker releases online faster than real users and stacks them at his parent’s in the hills outside Portland. pic.twitter.com/QnPZVXS9Jw
— Colin Landforce 🛠️ (@landforce) March 2, 2021
He’s REALLY good at finding when large retailers are going to slash prices so he can buy em up.
He’s also buying up stuff that’s discontinued.
He’s like…. REALLY good at this stuff.
You know Portland- if you know the right people this info is floating around hahaha pic.twitter.com/ycHcgZEtXI
— Colin Landforce 🛠️ (@landforce) March 2, 2021
ジョーの情報の正確さは、ナイキの副社長をしていたママから得ていたのならば納得です。
This Nike reseller situation is so crazy. But honestly the worst part is that Ann Hebert worked her way up the ladder in a male-dominated industry for 25 years only to be knocked down by her clout-chasing son.
— Tamara Dhia (@tamaradhia) March 2, 2021
記事が出て、副社長は辞職に追い込まれています。
「目立ちたがり屋の息子」のとばっちりで辞めることになってしまいましたが、副社長も息子が何をしているのかは知らなかったはずはないでしょう。積極的に情報を流していた可能性もあります。とはいえ、共犯とまで言えるかどうかは不明です。
(2021年6月27日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)
ブルームバーグの記事では中古品市場を盛り上げたことが副社長の一つの功績だったと書かれています。これがジョーの商売とどのように関係しているのかは今のところ明らかにされていません。
執筆時、ジョーのInstagramアカウントには大量の悪口が書き込まれています。「ママの金」、「お前のせいでママはクビになった」などです。
スニーカーブームの陰
騒動を紹介しているスニーカー好きのJackie Tranの動画です。
「僕はバスケを観戦するし、マイケル・ジョーダンやレブロン・ジェームズが好きだからスニーカーも好きになり収集している。スニーカーに背景や歴史があるから好きなんだ。最近はTikTokスターやインフルエンサーがスニーカーを宣伝するようになった。日常のファッションの一部になって、盛り上がっているのはいい。でも、最近はにわかファンも多いし市場が過熱しすぎている。」と複雑な心境を明かしています。
ジョーが大儲けしたのはNetflixの『マイケル・ジョーダン:ラストダンス』が話題になり、スニーカーに人気が出たのも理由の一つだったようです。
ジョーはstock Xなどのサイトで商品を売っていました。価格はメーカー販売価格の2倍から4倍になることもあります。ジョーのような転売屋が利益目的でスニーカーの価格をつり上げている実情に納得いかないという声が多いようです。
しかし、転売そのものは禁止されていません。内部情報を得て買い占め、値をつり上げて売ることも、不法ではありません。とはいえ、褒められたことでもありません。特に、ジョーのようにママから内部情報を得るのは不公正でしょう。
ブルームバーグの記事が話題になると、ジョーのInstagramフォロワーは増えています。
ジョーはこの騒ぎで焼け太りするのでしょうか? メディアと情報が人々の購買意欲をかき立てる時代の潮目を読むのに巧みな「ビジネスマン」は人々の非難さえも利用してみせるのかもしれません。
Image: 5,000+ Shoes In This 19 Year Olds Secret Warehouse