ウクライナ侵攻でロシアとSNSがブロックし合う ボットは増えたのか、減ったのか?

社会・政治

ロシア軍のウクライナ侵攻に対して、世界中から断固とした抗議の声が上がり、ウクライナへの支援も続いています。ロシアを非難しているのは政府首脳だけではありません。企業の撤退も相次いでいます。特にYouTubeやTwitterなどのメディアも、ロシアのプロパガンダへの様々な対策を出し、ロシアも対抗しています。

今回はSNS、特にYouTubeとYouTuberによるロシアのウクライナ侵攻への反応について紹介します。

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SNSを遮断するロシア、ロシアを遮断するSNS

ウクライナを支援する国々は、今回の侵略の始まる前から、ロシアによる情報操作に警告を発してきました。大手プラットフォーマーも同調し、ロシアの政府系メディアによるプロパガンダを抑え込もうとしています。

ロシアのウクライナ侵攻直後の2022年2月26日、YouTubeはロシア政府系メディアの非収益化を発表しました。ロシア政府系メディアの代表がRTです。登録者数は471万人の大手チャンネルですが、広告収益が得られなくなりました。

YouTubeによる措置はここにとどまりませんでした。3月11日、YouTubeはRTとスプートニクを一部の国で視聴不可としました。ヨーロッパ、日本がこれに含まれます。完全に情報を遮断したことになります。YouTubeはロシア国内での広告の表示も停止しています。

これに先立ち、ロシアでは3月4日にメディア規制が敷かれ、政府の意図に反する報道が禁じられています。ロシア国内ではTwitterやFacebookもアクセスできなくなっています。

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Tipsterに送りつけられた「証拠」

コメンタリーYouTuberのTipsterがウクライナを支援するためのチャリティーストリームを行うと、不審なメッセージが送られてきました。こちらのツイートです。

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(2022年3月20日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)

添付されたメッセージには、「ウクライナの蛮行の証拠」と称するものへのリンクが並んでいます。ウクライナの印象を悪くして、チャリティーストリームやめさせたい人が送ったのでしょうか? 情報戦が激しくなっている気配を感じさせます。Tipsterは登録者数11.8万人の中規模のYouTuberです。大手ではないYouTuberでも、ストリーミングしているのを見つけてこのようなメッセージを送ってくる人がいるようです。

ボットが減った?

政治系YouTuberデイヴィッド・パックマン(David Pakman)は逆の印象を持っているようです。ボットが減った感覚があるそうです。

減ったのがボットのコメントなのか、実在の人物によるコメントなのかはわかりませんが、ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以来減ったのだとすれば興味深いことです。ロシアが動かしていたボットならば、むしろ増えそうなものです1。実在の人物が、戦場の映像に衝撃を受けて黙ったのでしょうか? それとも、支払いが怪しくなったとか、もはや支持できなくなったなどの理由でロシアから離反した会社がボットを動かしていたのでしょうか?

FULL SEND PODCASTにトランプ前大統領が出演、即消える

アルコール飲料を売り怪しいギャンプルを宣伝していたYouTuber集団NELKのFULL SEND PODCASTにトランプ前大統領が出演した動画が公開の24時間後に消されました。FULL SEND PODCASTは登録者数129万人で、メインチャンネルNELKの登録者数は726万人です。

NELKはこれまでも親トランプ的態度を表明していたため、出演はサプライズではありますが、違和感はありません。

2022年3月11日のFULL SEND PODCASTに登場した前大統領は、2020年の選挙結果についての従来の自身の主張を繰り返し、自分が大統領だったらウクライナ危機は発生しなかったと放言していました。

FULL SEND PODCASTのサムネ

(2022年3月12日:削除されたYouTube動画をキャプチャ画像で置き換えました。)

さらに前大統領は、「俺を出したから君らもメインストリームメディアから抑圧されるようになるぞ」と語っていました。この発言のとおり、即座にYouTubeはこの動画を規約違反として削除しました。おそらく、選挙結果についての主張が問題視されたのではないか、と推測されています。

これに関連して、時期が時期だけに、NELKボーイズには「TRUTH Socialはどうなったんですか?」と聞いてもらいたかったところです。しかし、雰囲気に飲まれてしまったのか聞いていません。なお、TRUTH Socialとはトランプ前大統領が創設したSNSで、「あらゆる検閲のないプラットフォーム」を謳い、鳴り物入りで2022年2月に登場しましたが、技術的な不具合のためか、ほとんどの人が登録待ちになってしまっており、前大統領はブチギレていると報道されています。検閲の有無にかかわらず、ログインできないSNSは何の役にも立ちません。

フェイクと事実とプロパガンダ

メディアの流す情報が、一方の側からはフェイクニュースと非難され、他の側からは歓迎されるのを日々、目にします。誤情報と戦う措置は、他方からは事実の抑圧と批判されることもあります。逆に、事実を誤情報だと主張して抑圧しようとすることもあります。

明確な政治的メッセージを発するための動画も多数、出回っています。ロシアの宇宙開発機関ロスコスモスは国際宇宙ステーションからロシアのモジュールを切り離すCG映像を公開して論議を呼びました(外部記事)。ロシアによるウクライナ侵攻についてのロシア側からの子供向けのプロパガンダ動画すらあります。

Сказ про Ваню и Мыколу

いずれも政治的メッセージは明らかです。

ロシア軍のウクライナ侵攻を受けて、各国政府も、メディアも、SNSも、雰囲気が一変した観があります。あたかもSNSがプロパガンダの戦場と化し、利用者もまたそれに自覚的になったかのようです。フェイクと事実にますます正面から向き合っていく必要があります2

Image: InformOverload YouTube DELETES Donald Trump NELK Boys Podcast

  1. こちらの記事によれば、ロシア国内ではTikTokerを使った宣伝が盛んにされているようだ。
  2. ロシアが立ち上げた「ファクトチェック」メディアがロシアに都合のよい情報を流していると報道されている。
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