映画化された幽霊屋敷 死霊館(Conjuring House)の歴史的背景と実体験を元住民が語る

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米国には数々の心霊スポットがあります。その中でも名高いのがロードアイランド州ハリスビルの屋敷、『死霊館』です。本記事ではその背景を紹介します。

この屋敷を舞台にしたホラー映画『死霊館』は2013年に公開されています。映画『死霊館』は古い屋敷に移り住んだペロン家が心霊現象に遭い、家に何かが憑いていると心配し、心霊学者のウォーレン夫妻に相談するという内容です。この映画はPG12指定されています。

映画は実話に基づいていますが、実際はもっと恐ろしい現象が起こっていたとペロン家の長女アンドレア(1958年生まれ)は語っています。アンドレアはハリスビルの屋敷の体験を基にした本を3冊出版しています。アンドレアによれば「映画制作陣に参考にしてもらうために本を贈ったが、こわすぎるので映画では描写できないと言われた」そうです。本記事ではハリスビルの屋敷(以下、死霊館)に1971年から1980年の約10年間住んでいたアンドレアの話や死霊館に過去に住んでいた住人のウワサについて紹介します。

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「死霊館」の過去

こちらが、実際の死霊館です。映画で使われたのは実物ではなくセットの家でした。現在の死霊館は観光地になり、世界中から心霊現象を体験するために人々が訪れています。公式サイトでは予約を受け付けています。興味がある方はぜひ!

リチャードソン家1が1736年に建設した館は、多くの戦争とハリケーンに耐えてきました。この家にはリチャードソン家の8世代の人々が住み、ペロン家以降はリチャードソン家以外の手に渡りました。

ペロン家は屋敷を旧アーノルド宅(Old Arnold Estate)と呼んでいます2。ペロン家が移り住んだ当時の敷地面積は200エーカー(81万平方メートル)でしたが、徐々に縮小して現在では8.5エーカー(3.4万平方メートル)になっています。

ロードアイランド州ハリスビルの記録によれば、敷地内で2件の首つり自殺、1件の薬物自殺、1件の殺人、2件の溺死が起こったと記載されています。さらに4名の男性が敷地内で凍死しているそうです3

現在の家主コリー・ハインゼン(Cory Heinzen)によれば、「フィリップ王戦争でこの土地は血の海に染まった」そうです。コリーは心霊研究家で、趣味が高じて死霊館を買ってしまいました。コリーが仲間と地中レーダー探査で敷地内を調べたところ、庭には複数の棺桶と墳墓が見つかったそうです。戦場になっていたことを思えば、記録に残っているよりも多くの方が亡くなっていると考えられます。

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ペロン家の恐怖体験

その死霊館に1971年に移り住んだのが7人家族のペロン家でした。5人の子どもたちを育てるための家を探していたロジャーとキャロリン夫妻は、この家と200エーカーの広大な敷地を気に入ったそうです。5人の姉妹は上からアンドレア(Andrea)、ナンシー(Nancy)、クリスティーン(Christine)、シンシア(Cynthia)、エイプリル(April)です。

1970年の冬に購入して、1971年に入居しています。5部屋の寝室があり、当時の価格は$72,000(約720万円)でした。

ペロン家は、この家がいわくつきとは知らずに入居しました。というのも、ロードアイランドでは不動産の売買の際にいわくつきの物件であると申告する義務はないからです。しかし、以前の家主ミスター・キャニオンから鍵を受け取るときに「夜は電気を付けておくんだよ……。(leave the lights on at night)」と忠告されたそうです。

こちらは、長女のアンドレアが取材に応じている動画です。

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(2022年5月1日:削除されたYouTube動画をキャプチャ画像で置き換えました。)

入居してすぐに異常なできごとが起こります。ミスター・キャニオンが最後の荷物を取りに来た際、知らない男性が横に立っていたそうです。アンドレアは「こんにちは」と挨拶しますが、無視されます。妹たちも「あの知らないおじさんは誰だろうね」と話していました。引っ越し当日のことで、多くの人の出入りがありましたが、「知らないおじさん」が誰だったのか、未だに分からないそうです。

入居して2、3日後の晩、妹のシンディーがアンドレアの部屋に来ます。「知らない人たちの話し声が聞こえてきて『壁の向こうに7人の亡くなった兵士が埋められている』と話しているの」と言います。※現在の家主コリーによれば「検証したところ、敷地内に土塁が確認された」そうです。

末の妹エイプリル(当時5歳)が一人で家で遊んでいると、少年が現れます。少年はプラチナブロンドの髪の毛をして薄い緑色の目をしています。泣きすぎたせいで目のまわりが赤くなっています。唇は薄くピンク色をしていますが、肌は青白く病気を患っているようです。おそらく、家で亡くなった5歳か6歳の少年なのでしょう。少年は名前をオリバー・リチャードソンと名乗ったそうです。エイプリルはオリバーと友だちだったので、心霊学者のウォーレン夫妻が家に来た際は存在を隠していました。姉のアンドレアがエイプリルからオリバーの存在を知らされたのは、退去した30年後のことでした。

アンドレアによれば「あの家に住み始めると、モデルになれるほど美しかった母親が日に日に衰弱していき、老婆のような話し方になり(古い英語を話し始めた)、痩せ細り皺が深くなっていった。別人になっていった」そうです。

母親とアンドレアは不思議な体験をしています。2人同時に同じ悪夢を見たのです。以下、アンドレアの話です。

ある日、目を覚ますと体がまったく動きません。母親の叫び声が階下から聞こえているのに、助けにいけない。体はまったく動けないまま、幽体離脱してしまいました。両親の寝室に入ると、ベットで寝ている母親に何かが近づいていくのが見えます。

その「何か」は足がなく、浮いています。レースが首回りにある、きついボディスの灰色か茶色のリネンのドレスを着ている「何か」がいます。頭部がねじ曲げられたように首からぶら下がっている。干からびたスズメバチの巣のように頭がぶら下がっているのです。目は黒い空洞で、鼻は二つ穴があるだけ。唇は薄く、ギザギザの黄色い歯が見えます。ボサボサの髪の毛は蜘蛛の巣のようなメッシュ状のもので覆われています。

悪夢から覚めて、ようやく起き上がりキッチンへ行くと母親がテーブルで何かを描いています。絵を見た私は、母も私もあの恐ろしい何かを見ていたのだと知りました。時計を見ると5時15分で止まっている。あの家で何か起こるときはいつも5時15分です。

実は、以前の家の住人のミセス・アーノルドは93歳で納屋で首つり自殺をしています。あの「何か」は首が不気味にねじ曲がっていました。たぶん母親に嫌がらせをしていたのはミセス・アーノルドだと思います。

昔、近所に住む魔女だと思われていた女性が死霊館の呪いの始まりだと言われることもあります。これは心霊学者のウォーレン夫人の広めた説ですが、元住人のアンドレアは間違いだと話しています。

その後、ペロン家から持ち主がまた変わり、映画公開時に死霊館に住んでいたノーマ・サックリフ(Norma Sutcliffe)とジェリー(Gerry Nelfrich)は2015年にワーナー・ブラザーズを訴えています4。映画を観たファンが自宅に押し寄せていたからだそうです。

現在の持ち主、コリー夫妻が死霊館を観光地にしたことで、お金を払えば誰でも訪れられる家になりました。家主にとってもファンにとっても、名案だったのでしょう。

こちらのTikTokアカウントはコリー夫妻の娘マディソンが運営しています。マディソンのアカウントでは、死霊館の内部を紹介しています。首がねじ曲がった女性について話しています。

次回は実際の死霊館を訪れたYouTuberの動画を紹介します!

参考:HE CONJURING (2013) Starring Patrick Wilson, Vera Farmiga, Lili Taylor | based on the case files of Ed & Lorraine Warren

  1. 家主はDexter Richardson。
  2. それ以前はOld Brook Farmと呼ばれていた。
  3. 当時の記録には検証が必要な箇所が複数ある。実際の死亡・事故がすべて記載されているわけではないが、他州で起こった殺人事件をハリスビルで起こったと書かれている例があるようだ。
  4. Norma SutcliffeとGerry Nelfrichは1987年から住んでいた。
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