新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に歯止めがかからない中、もう一つ全米で猛威をふるっているものがあります。それがKaren(カレン)です。カレンとは何なのでしょうか。そしてそれはどこから来たのでしょうか。
カレンは迷惑おばさんです。店員に唾や咳を吐きかけ、「あんたは本当にバカ野郎ね。話にならないから上司を連れてきなさい。」と罵倒し、殴りかかります。わがままで傍若無人で差別的な態度をとるカレンの悪行の限りが日々SNSに投稿されています。
カレン(およびロバート)の総集編です。
(2021年1月3日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)
こちらは代表的なカレンをまとめています。
黙示録の四騎士:許可証出せのパティ、バーベキュー・ベッキー、子どもの前で怒るカレン、最後に…刺客ジェニファー
the four horsemen of the apocalypse: permit patty, barbeque becky, kidz pop karen, and finally… jerky jennifer#Jennifer #Shes30 pic.twitter.com/hmR4UjPzZU
— fiona (@shreddedcheesey) May 28, 2020
どれもSNSで話題になった面々です。今回はネットスラングカレンの意味や変遷について紹介します。
以下の内容はYouTuberのティファニー・ファーガソン(Tiffany Ferguson)の動画の内容に即しています。
カレンって誰?定義は?
カレンの定義は以下のとおりです。
行動的定義
- 接客業の人に失礼な態度をとる
- 偉そう
- 白人の特権を行使(人種差別的傾向がある)
- 間違っている状況においても…自分が正しいと信じて疑わない
- 上司を出せと要求する、警察に通報する、訴えると脅す
外見的定義
- だいたいにおいて中年の白人女性
- カレン的髪型(前下がりのボブ、ピクシーカット…金髪が多い。時代遅れなハイライトが入っていることもある)
in this vid I start with trying to define the standard characteristics of a Karen, so when I asked about being “wrongfully” called Karen, I meant outside of these behaviors. but obviously it’s not that deep & people can use memes/terms however they want. I am not Internet Police! pic.twitter.com/2rRxU3XsTn
— Tiffany Ferguson ? (@tiffanytheprez) May 24, 2020
※ネットスラングなので自由に使って下さい。
無礼なカレン
ティファニーは接客の経験があり1、よくカレンのようなお客さんにクレームを言われたそうです。順番通りドリンクを作っているのに「私、電車の時間に間に合わないから早く作ってちょうだい!」や、注文の際何も言っていなかったのに「ちょっと! アーモンドミルクで作ってって言ったでしょ! 作り直しなさい!」などです。自分のわがままが受け入れられるのは当然、特別待遇を受けるのは当然と思っている客、それがカレンです。
先日セントラルパークに出現したカレンは「黒人男性に脅されている」と通報しました。男性に「公園の規約通り犬にリードを付けるべきだよ」と注意されただけなのに、かんしゃくを起こして通報するカレンの大げさな行いがSNSで批判されていました2。
Oh, when Karens take a walk with their dogs off leash in the famous Bramble in NY’s Central Park, where it is clearly posted on signs that dogs MUST be leashed at all times, and someone like my brother (an avid birder) politely asks her to put her dog on the leash. pic.twitter.com/3YnzuATsDm
— Melody Cooper (@melodyMcooper) May 25, 2020
このカレンの行動が非難されるのは傲慢で自己中心的だからというだけではありません。警察は人種的プロファイリングをしていると言われています。現場に来た警察は白人の意見を信用しがちで、人種的マイノリティは不当に扱われることがあります。このカレンの身勝手な通報がきっかけで、罪のない市民が命を落とす可能性もあるのです。
写真はニューヨークのカレンが行うような通報が理由で、アフリカ系アメリカ人のジョージ・フロイドさん3が警察によって殺害される危険性を表しています。※それぞれ別の騒動の写真をつなげています。
抗議活動についてアメリカで語られていることについてはこちらの記事をご覧ください。

1960年代に人気の名前「カレン」
カレンの由来はどこにあるでしょう? コメディアンのデイン・クックがネタにしていた「性格の悪い女カレン」説や、ネットのネタ「俺のわがままな妻」や「傍若無人な客」の説、映画『ミーンガールズ』のセリフ説があります。
1950年代から60年代に女の子の名前で人気だったのがカレンです。名前番付でカレンは50年代は8位、60年代には4位にランク入りしています。この世代はいわゆるブーマー世代に該当します。「カレン」とは「どこにでもいるおばさん」ということです。男性版をロバートと呼ぼうという動きがありますが、それはカレンと同じ年代に人気だった男の子の名前だからです。
SNSで出回っている世代別「カレン」です。
ミームの起源を解説しているサイトKnow Your Memeによると、2017年12月7日Redditにはカレンをこき下ろすr/FuckYouKarenが登場しています。
ティファニーは動画でこちらのツイートを紹介しています。
「カレン」という呼び方は黒人女性(人種マイノリティ)によって使用されてきました。カレンは白人女性が黒人に対してとる高圧的な態度を表します:些細なことで警察を呼ぶ、解雇するぞと脅す、(パンデミック下の社会で必須とされている)仕事を見下す態度などです。

(2020年6月28日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)
ティファニーの動画では、「保守層からみた左派(アメリカ民主党支持層)やMe too運動を声高に叫ぶ人たちもカレンと言われている」と紹介しています4。
(2021年1月10日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)
「その他、嫌がる人々に無理にマスクを強要するのは権威主義的なカレンと言われている」そうです。意見を押しつける人もカレンに該当するようです。
人を見下し、差別するカレンを追いかけているスカンクの映像です。
スカンク:「カレンなんか嫌いだ。ビッチ、おいらを通報してみな!」
(2021年2月15日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)
米国でも差別は根強く、依然として白人が優位です。近年はスマホで撮影した映像がSNSで拡散されることで、差別が可視化されてきました。差別的態度も含めて、白人(女性)と結びつけられたもの全般がカレンと呼ばれているようです。名前がついたことで、対処法を考える気運が高まればよいですね。
Image: Willie D Live, Relex, BignNews, febry adixxon