顔がごみ箱伯爵(Count Binface)って誰?英国の補欠選挙で大健闘した候補の背景は

社会・政治

2026年8月13日、英国下院の補欠選挙が行われました。前任者の辞任に伴うものですが、前任者も立候補しています。その前任者とはUKリフォームのナイジェル・ファラージ。かつてUKIPを率いて散々大暴れした人物です。しかし、今回の選挙で注目されたのは彼ではありません。こちらの人物、「顔がごみ箱伯爵(Count Binface)」です。

COUNT BINFACE Finally Conquers UK Politics?! – Weekly Weird News

これは何者なのでしょうか?

スポンサーリンク

顔がごみ箱伯爵(Count Binface)とは

顔がごみ箱伯爵は、一言で言えば専業の泡沫候補です。これまで多くの選挙に出馬してきました。多くの場合、現職首相の選挙区など目立つ選挙区に立候補します1。これは英国では立候補の届け出時や開票結果の発表時に本人たちが勢揃いする習慣があり、目立てるチャンスだからです。

そのようなわけで、奇抜な候補者が出るのは英国の選挙の名物です。たとえばこちらは2017年、テリーザ・メイ首相(当時)の選挙区に立った候補者です。ご覧の通り大量の候補がいます。奇抜な格好の人もいますね。

強烈な皮肉ですが、この皮肉と泡沫候補を許容することに英国政治の雰囲気が出ています。

なお、この写真で中央にいるのは顔がごみ箱伯爵ではなく、その前身にあたる、「バケツ頭卿(Lord Buckethead)」です2。バケツ頭卿を名乗る泡沫候補は1990年前後にもいましたが、これは別人です。

現在の顔がごみ箱伯爵の中の人はBBCのコメディ番組の脚本を書いたことがある人物で、オックスフォード大学で古典学を専攻していたので、政治家になる準備はできています3

スポンサーリンク

なぜ補欠選挙に?

補欠選挙前、この選挙区から選出されていたのはナイジェル・ファラージ下院議員でした。かつてUKIP(英国独立党)やブリグジット党を率いてブリグジットの旗を振り、その後もブリグジット党から改称したリフォームUKを主導してきました。ファラージ議員は2024年の選挙で当選しています。このクラクトン選挙区は2016年のEU離脱に関する国民投票では73%が「離脱」に投票し、以前から右派ポピュリスト政党が得票することで知られていた選挙区です。

このファラージ議員が実業家から500万ポンド(約10億円)を受け取った疑惑を含むリフォームUKに関する多数の疑惑が浮上し、これを受けて議会では調査委員会が立ち上がりました。警察も捜査しています。

そこでファラージ議員は出直し選挙に打って出たわけですが、これで議会の調査が終わるわけでも、警察の捜査が終わるわけでもありません。何のための選挙なのか大いに疑問です。

その結果が、英国史上最多の34候補が乱立し、結果として投票用紙が過去最長の90センチになった選挙でした。

前評判と結果

主要政党はファラージ議員の時間稼ぎを批判し、抗議のため候補を立てないことを決定します。その結果、顔がごみ箱伯爵はこの選挙区で二番目に有名な候補となりました。

7月上旬に行われたイプソスの調査では、英国民の支持を一番集めたのは顔がごみ箱伯爵でした。

顔がごみ箱伯爵が33%、ファラージ議員は21%という結果が出ています。これは英国全体なので、選挙区での調査ではありません。

選挙区の近くで飛行機を飛ばして航跡でごみ箱を描いてみせる人も出てきました。

8月13日、投開票が行われ、結果はごみ箱伯爵9455票、ナイジェル・ファラージが22239票となりました。

顔がごみ箱伯爵は惜しくも落選となりましたが、前回の2024年の総選挙でのトラス元首相(落選)の得票率よりも高かったとたたえられています。

さすがレタスに負ける人は格が違う。

上に書いたとおり、英国では開票時にすべての候補が集まって結果を聞くのが習慣なのですが、ファラージ議員は開票所に来ることを拒否しました。安全上の問題を理由として挙げているのですが、地元警察は何も問題はないと言っています。

泡沫候補が大量得票したのが気にくわないのかもしれませんが、ファラージ議員も元はといえばほとんど泡沫候補扱いだったはずです。

ファラージ議員の得票数は前回選挙より増えました。通常、補欠選挙は得票が下がるので異例です。

6月の補欠選挙でもバーナム首相は前任者よりも得票数を伸ばしました。次回の総選挙は2029年までに予定されています。ファラージ議員のリフォームUKはここ数ヶ月、世論調査で支持率一位でしたが、新首相の就任で労働党が盛り返しています。バーナム首相とファラージ議員の率いるそれぞれの党が次にどれだけの勢力を持つようになるかは、議会の調査、警察の捜査、新政権の政策で決まることになります。

  1. 直近ではバーナム首相が下院議員に復帰した6月の選挙にも出ている。
  2. 中の人は同じだが、権利関係の問題で看板の掛け替えが必要になった。
  3. いまだに英国では政治家はオックスブリッジ出身者が多い。首相でも直近の保守党政権のキャメロンからスナクまでの5人は全員オックスフォード出身で、労働党のスターマーもオックスフォード出身である。現在のバーナム首相は久しぶりの非オックスフォード出身だが、ケンブリッジ出身ではあるのでオックスブリッジ出身が7代も続いていることになる。
タイトルとURLをコピーしました