アメリカの映画やドラマを観ていると出てくる大学生活。どこか日本と違うな、と思ったことはありませんか? その違いはグリークライフと関係があるかもしれません。グリークライフとは何なのでしょうか。今回はアメリカのキャンパスライフと切っても切り離せないグリークライフを紹介します。
アメリカの大学にはさまざまな学生組織があります。組織の中には学生寮を構えているものもあります。女子寮ならソロリティ(sorority)、男子寮ならフラタニティ(fraternity)です。それらの寮や組織をグリークライフ(greek life)と言います。組織名をギリシャ文字で表すので、総称してグリークライフと言われるようになりました。デルタ・ガンマやアルファ・パイ・アルファのような名前です。
今回はアメリカの大学生活の重要な一部であるグリークライフをのぞいてみましょう。
グリークライフの特殊な用語!
YouTuber Wanted Adventureことダナ・ニューマン(Dana Newman1)の動画です。わかりやすい動画です。
動画の内容を抜粋して紹介します。
- 学生寮が立ち並ぶ区域を“Frat row”と呼ぶ。
- “Rushing”はどのような雰囲気の寮か知るため新入生が参加する面接やイベントのこと。(9月に新学期なので、寮に入りたい新入生は8月頃にこのrushを体験しなければなりません。飲み水を忘れたため1日中歩き回り倒れてしまう人も。)
- “Bid”はrushを終えた新入生に届く寮からの案内状です。(寮に入るための第一関門突破。)
動画では正式に寮のメンバーになるため新入生が越えなくてはならない試練をさらに紹介しています。
College Weekly
グリークライフ動画を専門にしているチャンネルCollege Weeklyの動画です。全米に存在する各寮の宣伝動画をいろいろ見られます。
こちらは宣伝のために製作したと思われるフロリダ大学のフラタニティ紹介動画です。実際に寮に所属している学生が寮の内部を紹介しています。MTVのCribs(セレブが豪邸を紹介する企画)によく似ています。この動画で紹介されているフラタニティはパイ・カッパ・アルファです。歴史がある学生寮です。登場する学生はみんな大胸筋が立派で、ジムで鍛えている体つきです。
イギリス人YouTuberの反応
イギリス人YouTuberのWillNEが上に紹介したCollege Weeklyの動画にリアクションしています。アメリカ独自の進化を遂げたグリークライフをイギリス人が見たらどんな感想を述べるでしょう。
- パイ・カッパ・アルファという名前(学生寮の名)に対し「……アルファメイルの集団だろうからな。」(アルファメイルは群れを支配するボスといった意味です。)
- 寮の中のラウンジにATMが設置してあります。なぜかこのATMの上に座っている学生がいたので爆笑しています。
- 寮生たちのニックネームが紹介されていますが、「リキッド」「アイスマン(マーベル・コミックのキャラクター)」「ブリザード(マーベル・コミックのキャラクター)」と呼んでいるので「まともな名前の人はいないの⁈」とつっこんでいます。
問題の温床?
グリークライフにまつわる厳しい上下関係や新入生いじめが原因で死亡者が出て問題になっています。2017年も新入生に儀式として大量の飲酒を強要し急性アルコール中毒を起こす事件が(報道されているだけでも)3件発生しています。
中でも悲惨な亡くなり方をした新入生ティム・ピアッツァは大々的に報道されました。ティムの容態の異変を認識したあとも、事が明るみに出るのを恐れ上級生はティムを放置します。寮の責任者(上級生)が救急隊員を呼んだのはティムが意識を失った12時間後でした。
ティム・ピアッツァに関するニュース動画です。
なぜこのような問題を起こしているのに寮の解散処分にはならないのか?を解説しているVoxの動画です。
偏見なく現状を説明する、と動画の序盤で話していますが、内容は厳しいです。フラタニティに起こりがちなことを批判しています。
フラタニティ(男子寮)に入るとbinge drinking(大量飲酒)の習慣がつき、学生はGPA(成績評価)が平均して0.25ポイント下がると書いてある論文を引き合いに出し指摘しています。
フラタニティに所属していた卒業生は他の学生に比べ献金を多くする傾向にあるため、大学としてはフラタニティを解散する判断はしにくいと結論づけています。 お金の問題のようです。
今回はアメリカの映画や小説でも多く登場するグリークライフ(ソロリティやフラタニティ)を紹介しました。地域差や大学、さらに寮ごとに「常識」は違うと思います。ここで紹介した動画にも様々なコメントが寄せられており、いろいろな意見があるようです。
参考:List of hazing deaths in the United States
Grubb, F. (2006). Does going Greek impair undergraduate academic performance? A case study. American Journal of Economics and Sociology, 65(5), 1085–1110.
Image: Paul L Dineen