親しみやすく、おしゃれで、共感できるYouTube動画は、いつの時代もティーンに大人気です。学校生活のあるあるや、限られた予算でおしゃれを楽しむ方法を紹介するYouTuberは同世代の共感を呼び、ファンも付きやすいのです。しかし、ティーンを対象にしている動画内容なので、人気の移り変わりも激しいです。
ティーンに人気のチャンネルはDIY、コント、美容関連1、などその時々で人気の要素を盛り込んでいます。
2017年頃から“Relatable(共感しやすい・親しみやすい)YouTuber”と呼ばれるクリエイターが人気でした。
今回は各世代のティーンに人気だった代表的なクリエイターを少し振り返りつつ、2019年にどのようにして“Relatable(共感しやすい・親しみやすい)YouTuber”の人気が失われたか、紹介します。
以下の内容は、12年以上YouTube動画を見続けてきた「ベテラン」を自称しているbellexelleの動画を基にしています。
(2022年5月22日:削除されたYouTube動画をキャプチャ画像で置き換えました。)
元祖ティーンチャンネル
2014年頃、13歳から15歳くらい(ティーン)に大人気だったチャンネルはベサニー・モタ(Bethany Mota)です。元祖ライフスタイルYouTuberです。YouTube登録者数は1000万人。
2016年頃、人気だったのはアリーシャ・マリー(Alisha Marie)です。明るい内容で、家族でも見られるチャンネルです。YouTube登録者数は820万人。
同じく2016年頃、人気だったのはMy Life As Evaことイヴァ・ゴタウスキー(Eva Gutowski)です。ベサニーとアリーシャと同じような彩度が高いサムネです。YouTube登録者数は1000万人。
キラキラしたライフスタイルを紹介しつつ、理想と現実の違いをコミカルに動画にしています。
最近は?
最近は、共感しやすい・親しみやすいYouTuberが人気です。エマ・チェンバレンやハナ・マロウシュが代表的です。VSCOガールのファッションを宣伝したYouTuberでもあります。
彼女たちは、日常をおしゃれに紹介して、落ち着いた動画で人気になりました。2016年頃に人気だった明るく!楽しく!コミカルに!といった雰囲気とは違います。
サマー・マッキーンはYouTube登録者数233万人、Vlogチャンネルの登録者数は37万人です。可愛いので、ティーンの憧れの存在でもあります。
ハナ・マロウシュはYouTube登録者数187万人、Vlogチャンネルの登録者数は110万人です。サムネが落ち着いていて、流行のフォントを使っています。
炎上したサマー・マッキーンの例
キャラが親しみやすく、すてきなライフスタイルを紹介していたYouTuberたちも、人気になると炎上騒動を起こしています。サマー・マッキーンがその例です。Finsta2がクラッキング被害に遭い、映像が流出し、炎上3しました。その後、謝罪しています3。
2018年には、お米をタッパーに入れた実験を紹介しています。「良い言葉」と「悪い言葉」をお米入りのタッパーに話しかけたそうです。すると、1年後「良い言葉」のタッパーのお米は真っ白のままで、「悪い言葉」のタッパーのお米はカビが生えたそうです。……ご覧ください。
サマーはポジティブな言葉を言うようにしよう!と視聴者にメッセージを送るつもりだったのでしょうが、明らかに科学的に怪しい発言で批判を浴びてしまいました。
こちらは、サマー・マッキーンの騒動をまとめている動画です。度重なる炎上のせいで、人気に陰りが見えているようです。
(2021年8月16日:削除されたYouTube動画をキャプチャ画像で置き換えました。)
炎上したヘイリー・ファムの例
YouTube登録者数220万人のヘイリー・ファム(Haley Pham)。彼女も同世代の共感を得て人気になりました。しかし、「ギリシャはつまらないから旅行に行かないで」と発言したり、「性行為はしていないのに、陰部潰瘍ができたのは納得できない」と発言して批判されました。
その後、18歳でパートナーと豪邸を購入4し、もはや共感できる存在ではなくなります。ファンは「おもしろかったヘイリーは、人気が出たら別人になった。もう応援したくない」と話していました。
プロデュースしたアパレルの評判もいまいち……。
ファン離れが顕著になると、ヘイリーは泣きながら心境の変化を説明しています。
(2022年7月10日:削除されたYouTube動画をキャプチャ画像で置き換えました。)
両親が離婚した後、母親は解雇され、ヘイリーが経済的に支援しなければならなかったと告白しています。再生回数を稼げる動画に囚われ、以前のように動画制作を楽しめなくなっていたこと、アンチコメントや自分を批判している動画も見て、反省したことを話しています。これからは、もっとありのままの自分で動画を投稿するそうです。
私を批判してくれてありがとう。いろいろあったけど、変わらず応援してくれてありがとう。自分が誰かわからなくなって、突然ビジネスウーマンを演じたりしたけど、また等身大の自分に戻るよ。ファッションも旅行も家をデコレーションするのも大好きだから、今後はそんな動画を作るね!
Relatable YouTuberたちが同世代のファンの支持を集めたのは、彼女たちが親しみやすい普通の女の子だったからです。有名になり、お金持ちになると、普通のファンの感覚からずれた言動が増え、炎上しやすくなります。炎上はしなくても、エマ・チェンバレンのように高級ファッションブランドの広告塔になり、ファンから遠い存在になってしまうこともあります。
(2020年9月13日:削除されたInstagram投稿をキャプチャ画像で置き換えました。)
普通の女の子だったから人気になったのに、人気になると普通でいられなくなり人気が衰えてしまうのです。この困難を乗り越えてYouTuberを続けていくためには並外れたバランス感覚が必要です。彼女たちは若いので、これからそのバランス感覚を身につけられるのかもしれません。炎上で反省したというヘイリーの話からは、その可能性があることがわかります。
Image: Cartier Tea, Haley Pham
注
- Beauty guruは美容の師やリーダー、エキスパートのような意味。
- FinstaはInstagramのサブアカウント。有名人(一般人も)が、友人と共有する内容を投稿するために作る。よりプライベートで明け透けなアカウントを指す。fake + Instagramでfinsta(フィンスタ)。
- その際の動画はこちら。
- 動画は“Buying Dream House at 18 Years Old”。