トランプ関税でスーパーが空っぽに?大げさな投稿と専門家のまじめな懸念を紹介

社会・政治

トランプ関税に世界経済が揺れています。トランプ大統領が各国への関税率を公表したのは2025年4月2日、一週間後に中国を除いていったん停止するとともに、中国に対しては145パーセントの関税を発動しました。

関税のため輸入が止まり、物資が乏しくなることが懸念されています。SNSと専門家の意見をまとめます。

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棚から商品が消えた?

ズーパーの「棚から商品が消えた?」という動画が多数再生されていますが、疑問の声や冷静になれという意見も出ています。

こちらの動画はほとんど空になった棚を見せています。

こちらの動画は「すぐに買いに走れ!」とあおっています。

危険です。大げさな投稿で注目を集めようとしている人がいるようです。

こちらの投稿は、冷静になりましょう、少なくなっている棚もあるけどさほどでもない、でも在庫が大量にあるわけでもない、という投稿です。

大げさなSNSはさておくとしても、大手メディアでも物資の欠乏の可能性は真面目に議論されています。ニューズウィーク誌が数週間以内に商店の棚が空になる可能性があるという記事を出しています。

誤情報もあります。こちらは「シアトル港にいつもと違ってほとんど船がない」という投稿ですが、実はこの区画は所有していた会社が2019年に破産して以来操業していません。

とはいえ、シアトル港は5月7日にコンテナ船が一隻も入港しなかったと発表しており、これはパンデミックの後は例がないそうです。

トランプ政権関係者も物資の欠乏に備えて備蓄をはじめた、という真偽不明の投稿もあります。

物価の上昇の可能性はトランプ大統領も認識しています。インタビューで、「これまで子どもが30個持ってたお人形が2個に減るかもね、数ドル上がって」と発言しています。元の人形の値段が10セントぐらいでないとその計算は成り立たないと思います。例によって意味がわかりません。

この間、ファストファッションのTemuは商品の価格とともに関税を表示するようになりました。

約64ドルの商品に約89ドルの関税がかかっています。

Amazonも関税の表示を検討していると報じられたところトランプ政権が圧力をかけてやめさせたという動きもありました。

さらにトランプ大統領は国外で撮影された映画に100パーセントの関税をかけると発言しています。

ハリウッド映画も多くが海外で撮影されているので、国内産業への打撃になってしまいそうです。

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専門家の見解

こちらはWhat’s Going on With Shipping?(「海運で何が起こっているのか?」)というそのものズバリのチャンネルの動画です。動画のサル・マーカグリアーノ(Sal Mercogliano)さんは実務に携わった後、海運・海事史の研究者となりました。Bloomberg TVでのロサンゼルス港の取締役ジーン・セローカ(Gene Seroka)氏の5月2日のインタビューをもとに詳しく解説しています。

US Port Update – May 4, 2025 | Trade Wars: Port of Los Angeles Says Imports are Dropping

ロサンゼルス港ではこの数週間で輸入量が約三分の一減りました1。ロサンゼルス港は米国への輸入が一番多い港です。中国からの輸入は全体の半分ぐらいですが、その全量が消えたわけではありません。関税発動前に契約された貨物もあり、145パーセントの関税を払ってもまだ中国からの輸入が一番安価な場合もあり、代替不可能な商品もありそうです。倉庫に入れたままにしておいて関税がかかるのを遅らせることはできますが、その分の出費が発生します。物流の混乱が発生する可能性があります。余裕があまりない中小企業にとっては危険な可能性があります。

関税の影響は単に輸入が減って物資が足りなくなるだけではありません。国内投資も止まる可能性がありますし、そうなれば雇用の喪失も生ずるでしょう。影響が真っ先に現れるのは、運輸業界です。上のツイートのようにどこかの港が完全に閉鎖されたというのは明らかなウソですが、物流が減っているのは間違いありません。西海岸の港ではすでに貨物量が減っていますが、東海岸で影響が見え始めるまでにはさらに2週間ほどかかります。

もし関税の交渉がまとまっても、すぐに物流が戻るわけではありません。輸送の組み替えに2週間、中国の港から米国の港まで2週間かかります。各社の積み上げた在庫は5週間分から7週間分ですから、どこかの時点で在庫が切れるのは十分にあり得ます。

動画は、大幅減は間違いないが、SNSやメディアの極端な記事を鵜呑みにしないこと、と締めくくられています。

プレッパー的社会の陰謀論?

米国では政府や社会の仕組みに対する不信感が根強く、「食料や電気の供給が途絶えたときに備えよう!」というプレッパー的思考に一定の支持があります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

プレッパーprepper、サバイバリストsurvivalist、ホームステッダーhomesteaderって何? 現代アメリカの心性
プレッピー(preppy)ではありません。プレッパー(prepper)です。プレッパーとは何らかの「危機」に備えている人をさします。サバイバリスト(survivalist)とおよそ同じですが、プレッパーの方が新しい言葉です。プレッパーが備え...

プレッパー的思考によって恐怖感をあおることで本物の危機を引き起こし、政府不信をさらに強めようとしている一派がいるのだ、というガーディアン紙に掲載された論考の見立ても話題になっています。この見立てによれば、関税の引き上げとそれに続くと予想される混乱は、ますますプレッパー的心性を強化することになりそうです。さらにこの論考では、関税を引き上げることそのものが、米国が米国内に籠城しようとしているプレッパー的思考の表れだとされています。

米国では物流の混乱は2025年の夏にかけて発生する可能性が高いでしょうが、それよりも可能性が高いのは、大げさに騒ぎ立てるSNSの投稿の激増でしょう。事実、TikTokでは、「ものがない!」という動画が一回当たったので繰り返し似たような動画を投稿しているアカウントが散見されます。

  1. 船を数えるかコンテナを数えるかなどで違いは出るようだが、十数パーセントから三十数パーセントの間での落ち込みが見られる。
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