トランプ政権を支持する右派インフルエンサーのチャーリー・カークが暗殺されたのは2025年9月10日のことです。暗殺後、トランプ政権と共和党議員およびMAGAだけではなく、民主党支持者からも容疑者の意図や政治思想について根拠なく決めつける発言が噴出しました。このように何が事実なのか不鮮明になっている一因が、報道です。
This Guardianは元同級生へのいいかげんな取材をして「容疑者は左派」と報じ、Wall Street Journalは「容疑者はトランスジェンダー」と誤報を出しています。さらに「容疑者はトランスジェンダーとルームメイト」という報道もありますが、真偽不明です。
以下に誤報とされている情報や暗殺後の不穏な動きについて紹介します。
歪められる犯人像
まず、「容疑者が共和党支持者」という情報はガセです。有権者登録はされていますが、いずれの政党にも所属せず、投票をした記録はありません。トランプ陣営に寄付をしたという記録がありましたが、これは同姓同名の別人だったようです。
「父親が現在警察官」という情報もガセです。父親は石材店を営んでいます。母親のFacebookには家族でさまざまなイベントに参加する様子が投稿されており、容疑者が幼い頃から銃に触れていたことが分かります。容疑者の祖母は容疑者が民主党支持かと報じられると「うちは親戚一同MAGA!」と反論しています。ユタ州のモルモン教徒なので、家族ぐるみで共和党支持者だったりMAGAだったりするのは普通のことでしょう。
This Guardianは容疑者の同級生が「容疑者は左派だと思う」と話している内容を報じますが、訂正し削除しています。
The Guardian added an editors note to remove quotes from the anonymous source who went to high school with Tyler Robinson said the shooter was “leftist” (see right)
The person now says “they could not accurately remember details of their relationship” https://t.co/sC97nPZCUg pic.twitter.com/uVwHCsQWXx
— philip lewis (@Phil_Lewis_) September 13, 2025
容疑者が逮捕されたときにユタ州知事が発言したように、容疑者が自分たちと同じような(保守派の)人間であっては困る、という心理があるようです。現状で容疑者の政治的立場は断定できませんが、「家庭環境と薬莢のミームから推測すれば右派の可能性が高いが公的記録上は不明」ぐらいが妥当だと思われます。
捜査当局は「容疑者による左派的なメッセージがDiscordにあったとルームメイトから通報があった」と発表しましたが、Discord社は「このメッセージはルームメイトと第三者のもの」と直ちに否定しています。なお、これはその後出た、容疑者が自分が犯人だとDiscordで言っていたという報道とは別です。こちらについてはDiscord社がメッセージを確認しています。
「容疑者はトランスジェンダー」と解釈できる内容を出したWall Street Journalは極めて読みにくいフォントで編集部注を加えています。
in case you can’t read the font: the wall street journal published an unverified claim implying the shooter was trans, contributing to widespread anti-trans panic, and is now attaching an “oopsies” to it https://t.co/Rpls9sHVwK
— matt (@mattxiv) September 12, 2025
トランプ政権と仲良しのFOX記者ブルック・シングマンは「容疑者はトランスジェンダーと交際している」と報じています。この内容についてはまだ確定情報がありません。
“Fox star” Brooke Singman is who broke the Tyler Robinson “transgender partner” story based on “sources”. Her report cld be true. But I don’t think we shld assume her sources are reliable since they are unnamed. Also, Newsmax reporter Rob Schmitt posted similar info this AM. His source is Trump. 1/
— Jenny Cohn (@jennycohn.bsky.social) 2025-09-13T19:47:00.605Z
事実が含まれている可能性もありますが、ウソを垂れ流す現政権に近い人物の発信することは鵜呑みにできません。
imagine being the roommate who’s a little uwu kneesocks LED light strips with it and waking up one day and every “””journalist””” in Christendom is saying you were Lee Harvey Oswald’s Gay Homosexual Transgender Communist Terrorist Lover https://t.co/Vzypp6cVXi
— TWINKDEFCON (@twinkdefcon) September 13, 2025
最後の討論相手への取材
カークが暗殺される直前にユタバレーで討論をしていた人物ハンターさんにも注目が集まっていました。一部の陰謀論者は「この討論者は暗殺に加担した!」と断定し中傷をしているようです。
カークがハンターさんの質問に答えたところでハンターさんが「いいでしょう(good)」と言ったのが狙撃の合図だったのでは?とまで言いだす人々がいたようです。
ハンターさんがカークと討論した目的は「銃乱射をしたトランスジェンダーが執拗に悪者扱いされているので、統計上の事実は異なると伝えたかった。トランスジェンダーの人々は統計上、極めて平和的な人たちだ。」と話しています。
ハンターさんもカークと同じく1歳の息子がいるので、このような暗殺の犠牲になったのは無念だと話しています。
左派のせい?
事実を無視するトランプ政権は、容疑者の周辺情報が明らかになった後も相変わらず「ネットの過激左派に影響されてしまった」と主張しています。
Trump: It looks like he has wonderful parents, wonderful neighbors… Something happened to him over a short period of time. It looks like he was radicalized over the internet. And he’s radicalized on the left. He’s a left. Lots of problems with the left.
I’m not buying the… pic.twitter.com/RnGrmZOfMK
— Ron Smith (@Ronxyz00) September 15, 2025
執筆時、容疑者は捜査に非協力的で黙秘をしていると報じられていますが。
人違いで中傷
ユタ州の18歳の青年は半年前に「チャーリー・カークが31歳で亡くなる」という歌を制作していたため、犯人だと疑われたというニュースがあります。

すごい偶然ですが、本当にカークが31歳で亡くなっているので願いが成就した曲なのでしょうか。父親は「息子は妙なもんに興味を持っているが、親世代には理解できない若者文化がある。変わっているからといって、息子が社会の脅威になるわけではない。」と取材に応えています。
息子はFBIの事情聴取にも応じて釈放されています。しかし容疑者が逮捕された後も自宅の前には抗議をする人が集まり、父親は店をしばらく休業するしかないと話しています。
「俺は悪くない」グロイパーズの祖
チャーリー・カークよりも右の意見を発信しているグロイパーズの祖ニック・フエンテスは「メディアが今回の暗殺は俺らのせいだと報じているが、事実無根だ。左派はカークを落とした後、正当化し、次は俺だと言っているのに。こいつらは悪人だ。」と投稿しています。
Yeah they’re completely reaching. No evidence at all pic.twitter.com/fY1KfWqm0S
— 1600FILMZ (@1600FILMZ) September 13, 2025
しかし、リプにはフエンテスが2025年8月に「カークはキリスト教徒ではない。キリスト教徒ならなぜ(パレスチナの)200万人の虐殺や飢饉が行われているのを見過ごすのか」と話している動画が添付されています。
暴力を扇動
暗殺後、右派のインフルエンサーやロシアから資金を得てコンテンツ制作をしてきたと報じられているインフルエンサーが「暴力で対抗せよ」とメッセージを発信しています。
こちらはティム・プールが内乱を呼びかけている投稿のスクショです。
A russian asset calling for civil war in America.
A classic. https://t.co/xh3ODm92tK— Anastasiya Paraskevova (@UkrainianAna) September 14, 2025
こちらはカークの死後、街を練り歩く白人ナショナリストの動画を紹介しています。
So weird that Charlie Kirk was supposedly not a fascist, yet the fascists see him as a martyr. 🤔 https://t.co/lTKPvEc6ti
— Daniel Baryon (@AnarkYouTube) September 14, 2025
こちらは十数人の子どもを持つ富豪イーロン・マスクが「暴力を扇動するアカウントは凍結する」と発表し「左派は暴力とヘイトの集まり」「左派は殺人犯の集まり」と投稿しています。
Psycho @elonmusk. Thank god nobody took his “America party” crap seriously right? pic.twitter.com/UTvHelHkTQ
— Adam Kinzinger (Slava Ukraini) 🇺🇸🇺🇦 (@AdamKinzinger) September 14, 2025
「お金ちょうだい」の妻
未亡人となったカークの妻エリカ・カークは多額の寄付金を呼びかけています。
my husband died. can i have one hundred thousand dollars now please https://t.co/0vMbs54lIC
— Brendan Karet (@bad_takes) September 14, 2025
寄付金を集めなくても一般のアメリカ人より豊かなはずですが。
事実じゃねぇ気持ちだ!の時代
最近の報道を見ていると、事実と論理は意味がなくなっているのかと絶望を感じることがあります。
こちらのTikTokユーザーは「この時代は理屈、真実、客観性にもはや意味がありません。感情や気分に訴えかける方が強いのですよ! 誰かを説得したければでっちあげるしかないんです! いつまでも知的に対抗しているから出遅れているんですよ。」と話しています。
トランプ政権の動きを見ていると、納得してしまいます。