ジャーナリストのテイラー・ロレンズが左派・民主党系インフルエンサーが受け取ったとされるダークマネーの資金源、支援元、条件などを記事で公開して話題になっています。
右派(陰謀論者)のインフルエンサーがロシアからコンテンツ制作資金を受け取っていたことや、コーク兄弟が運営するダークマネー組織は有名ですが、民主党のインフルエンサーにもダークマネーが提供されていたようです。昨年の大統領選の敗北を受けて、民主党は共和党の手法をまねようとしていると報じられています。
民主党支持インフルエンサー
こちらが2025年8月27日にWiredで公開されたロレンズの記事です。記事ではコーラス・クリエイター・インキュベイター・プログラム(Chorus Creator Incubator Program)というプログラムを通して民主党を支持するインフルエンサーやYouTuberに最大で月額8000ドル(約118万円)が支払われていたと暴露しています。
コーラスを支援しているのは進歩派の非営利団体Sixteen Thirty Fundです。記事によるとコーラスと契約したインフルエンサーは政治家と交流する場合コーラスをできるだけ通すこと(独自に交流する場合も報告義務あり)や、コーラスと契約している旨を開示した場合は契約解除になることが紹介されています。
記事で紹介されているインフルエンサーは、民主党党大会で登壇経験があるオリビア・ジュリア(Olivia Julianna)、YouTuberのデイヴィッド・パックマン(YouTube登録者数331万人)、TikTokに140万人のフォロワーがいるアリエル(mrs.frazzled)などがいます。
何が問題なのか?
こちらの動画ではテイラー本人が記事内容をそのまま解説しています。
右翼やMAGA、陰謀論者がよく聴いているオピニオンリーダーとしてポッドキャスターのジョー・ローガンがあげられます。2024年の大統領選でカマラ・ハリスが広報戦略でトランプに大きく引けを取り大敗したことが、民主党の政治家を支持するダークマネー組織が必要とされた背景として紹介されています。
トランプは選挙期間中、精力的にポッドキャスターやYouTuber、ストリーマーとコラボをしてさまざまな質問に答えていました。一方、カマラ・ハリスは同様の機会を与えられたようですが断っていたようです。カマラ・ハリスは従来のテレビ視聴者向けの宣伝ばかりしていたので、テレビを視聴しないネット重視の層にうまくメッセージを伝えられなかったとされています。
ジョー・ローガンがトランプ支持者を獲得する役割を果たしたように、民主党支持者のクリエイターにお金を払い、内容を検閲してメッセージを流す作戦は失敗では、と指摘するのは進歩派の政治コメンテーター、ハサン・パイカーです。
独自の見解で意見を述べているふりをしていたインフルエンサーが実は党の公式見解の拡散装置になっていて、大手メディアと同じような内容の動画を投稿していたとしたらショッキングです。民主党の政治家が本質的に改善する気がないと表明しているようなものです。ニューヨーク市長選挙に出馬中で予備選で勝利したゾーラン・マムダニがいまだに民主党の重鎮から正式に支持されていないのも気になります。
加えてハサンは「これらのインフルエンサーはイスラエルがパレスチナで行っている虐殺について報じていないね」と指摘しています。コーラスはインフルエンサーたちのコンテンツの内容に口を出す権利を持っていたようで、特定の内容は取り上げないように指示していた可能性もあります。この点はロレンズの記事では言及されていません。
記事の反響
ロレンズの記事が公開された後、記事で名前を挙げられたインフルエンサーたちは釈明を投稿しています。しかし、その内容が似ていると指摘されています。釈明の内容まで指示されているかのようです。
進歩派のジャーナリスト、エマは「Wiredは今年、最も信頼性の高いメディアの一つ。DOGEに関する重大なスクープを報じたり、メタデータはエプスタインの刑務所の映像が編集されたことを示していることを報じたりしてきた。編集者や、弁護士も付いているから、記事公開前に内容を検証している。フェイクニュースと吐き捨てるよりまともな釈明が要求されるでしょう。」と投稿しています。
Wired has been one of the most reputable outlets in 2025, breaking major stories about DOGE, finding metadata showing the Epstein cell video was edited, etc. They have editors and likely lawyers that they consult before publication.
Gonna need a better excuse than "fake news." https://t.co/RyXynBvIvN
— Emma Vigeland (@EmmaVigeland) August 30, 2025
YouTuberのデイヴィッド・パックマンはロレンズを名誉毀損で訴えようか検討していると話しています。
David Pakman says he's considering a defamation lawsuit against Taylor Lorenz.
"I 've consulted with some of the top defamation attorneys in the country; lawyers who have won some of the largest verdicts, I think, in US history."
Pakman adds: "I am not litigious by nature." pic.twitter.com/yMcQpjsuJY
— Ken Klippenstein (@kenklippenstein) September 3, 2025
記事で一度しか触れられていないパックマンが大げさな反応をするのが逆に怪しいと言われています1。
多くの有権者がネットから情報を得るようになり政治の情報が身近に手軽に得られるようになりました。その反面、普通の人の意見と思って聞いていたインフルエンサーの意見が実は何かの影響を受けて検閲され歪められていたかもしれないと思い知らされる報道でした。
共和党がやっていることだから民主党もやろうとしているのでしょうが、「目には目を歯には歯を」でいいのでしょうか。他方で、独立系ジャーナリストを名乗って特定の党から金をもらうのは御法度です。しかし、援助がなければジャーナリストとして生きられない人も多いので、潔癖にしていると左派が減る可能性もあります。
注
- パックマンは昔からシオニストと言われているが、最近の報道を見てもその立場は変わっていないようだ(Xの投稿)。