ユナイテッド・ヘルスケアのCEOブライアン・トンプソン(Brian Thompson)が2024年12月4日に何者かに銃殺されました。この事件を機に、暴利を貪る米国の保険会社への批判の声が高まっています。印象的なのは殺されたCEOへの同情の声が少ないことです。
午前6時44分の事件
年一回の株主総会に出席するためニューヨークのヒルトンホテルに向かうトンプソン氏は後ろから犯人に撃たれ倒れました。犯人はトンプソン氏の当日の予定を把握し、少なくとも数分前から現場で待ち伏せていたようです。
現場から発見された3発の薬莢には、遅らせ(delay)、拒み(deny)、退ける(depose)と保険会社を批判する際に使われる単語が記されていました。これらの証拠と犯人の行動から、トンプソン氏に何らかの恨みがある者が犯行に及んだと推測されています。犯人がトンプソン氏のスケジュールを把握しているので、保険会社の元従業員か、純粋に保険適用を拒否され家族を亡くした者か、とされています1。
犯人は11月24日にバスでニューヨーク市に入り、ホステルに滞在しています。当日、犯人はトンプソン氏の背中や足を撃ち、現場を立ち去っています。その後、複数の防犯カメラ映像で自転車で移動する犯人の姿が捉えられています。バスターミナル付近にいるのを最後に足どりがつかめていません。犯人はほどなくしてニューヨーク市を去ったと推測されています。
犯人は特徴的なグレーのバックパックを背負い、カーキのジャケットを着て、常にマスクを着用していました。ホステル内で食事をする際もマスクを着用していたと同じ部屋に滞在した客が証言しています。
犯人はセントラルパークにグレーのバックパックを捨てているようです。警察は血眼になりそのバックパックを発見していますが、中身はモノポリーの紙幣だったそうです。薬莢に言葉が刻まれていたことを考えると、モノポリーも「独占(monopoly)」を意味しているのかもしれません。
MSNBC reports that the backpack found in Central Park, believed to be from the United Healthcare CEO killer, did not contain a gun.
Instead, they found Monopoly money and a jacket.
— Pop Base (@popbase.tv) December 7, 2024 at 4:46 PM
犯人が使用した銃は、屠殺に使用される銃だと専門家は推測しています。犯人が数発撃つ合間に銃を叩く動作をしているので、手製のサプレッサー(サイレンサー)を使っていたので誤作動があったのでは、と銃専門チャンネルは仮説を立てています(動画)。
捜査にはニューヨーク市警察だけではなく、FBIも参加して犯人特定につながる情報提供者に$50,000(約750万円)の報奨金を渡すと発表しています。事件が発生して5日経過しても有力な手がかりは得られませんでした。ここまでの内容はカフボーイズが紹介しています。
※その後、容疑者はルイジ・マンジオニ(Luigi Mangione)と特定されました。ペンシルベニア州のマクドナルドにいたところ通報を受けた警察に身柄を拘束されています。
人々の反応
左派系の政治コメンテーターであるハサン・パイカーは事件を受けてこのように投稿しています。
i was shocked by the positive reactions to the assassination of the healthcare ceo. if the authorities catch the hot hitman, and the public hears his testimony and motive- i suspect the shinzo abe hit will become the 2nd most successful political assasination in my lifetime.
— hasanabi (@hasanthehun) December 6, 2024
ジャーナリストのケン・クリッペンスタインは保険適用を拒む率が最も高いのは暗殺されたCEOの保険会社だ、と他社との比較グラフを投稿しています。
Today we remember the legacy of UnitedHealthcare CEO Brian Thompson
— Ken Klippenstein (@kenklippenstein.bsky.social) December 4, 2024 at 8:30 AM
トンプソン氏は保険適用するか否かの判断をAIを用いて行うシステムの牽引者だったそうです。利益優先の観点からすれば成功なのでしょうが、人として、ビジネスモデルとして、どうなのでしょう。
加えて、保険会社がFacebookに訃報の投稿をすると人々の反応が笑顔になっている点を指摘しています。
People LOATH our healthcare system; the pearl clutchers should ask themselves why
— Ken Klippenstein (@kenklippenstein.bsky.social) December 4, 2024 at 2:53 PM
たしかに人々はCEOの訃報に笑顔で反応していました。投稿は一回削除され、再投稿されています。その際、リアクションの数を伏せる仕様にしたようです。
United made the number of reactions on its Facebook post private… I wonder why…
— Kylie Cheung (@kylietcheung.bsky.social) December 6, 2024 at 11:03 AM
CEOの暗殺を喜ぶのは不謹慎かもしれません。しかし、上をゆく不謹慎があります。なんと、犯人のそっくりさんコンテストが催されていました。
最近そっくりさんコンテストが流行ですが、注目の事件の容疑者までそっくりさんコンテストが開催されるのは驚きです。
マスクを外した監視カメラ映像が出てきたときは、「ホステルの従業員といちゃついていた」と報じられていたのも印象的でした。まるで殺人事件ではないかのような扱いです。
この事件に関連して、保険会社が給付を拒み苦しんだ人々の体験談が多数報道されています。犯人に肩入れする人が出てくるのも無理はないと感じます。監視カメラ映像を分析して犯人を特定するボランティアも今回は協力しないと表明している人がいると報じられています。
容疑者が特定されたあと、容疑者のグッドリーズ(書籍レビュー)のアカウントやTwitter、YouTubeのアカウントまで掘り起こされています。拘束された際、容疑者はゴーストガン(3Dプリンターで製造されたとおぼしき銃)とホステルで使用した偽ID、3ページにわたる犯行声明を所持していたようです。
容疑者のSNSアカウントがどのような投稿をしていたかと、それに対するSNSの反応については次回の記事で紹介します。
注
- あまりにも手際がよいので、トンプソン氏が自分で殺し屋を雇ったのでは、という憶測まで出ていた。
- どういうわけか、ハサンは好んで安倍晋三をネタにしている。例えばこちらの画像。