ロシア人TikTokモデルRenata Riが差別用語を使ったと批判されるも的外れ?しかしやはり差別的

炎上

米国では黒人を指す差別用語のNワード(ni**er/ニ○ー)は完全な禁句です。Nワードを口走っている動画が出回ったせいで猛批判を浴び、消えてしまったYouTuberやTikTokerもいます。

ロシア人TikTokerがインタビューでNワードを発していると指摘され、釈明に追い込まれる騒動があったので紹介します。実はそれは「Nワード」ではなく、むしろ伝言ゲームによる炎上と言うべきものだったのですが、しかし間違いなく差別的な発言でもあった、というのが真相のようです。

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問題の動画

問題のTikTokerはレナータ (Renata Ri, @riwww)です。ロシア出身のレナータは18歳、TikTokフォロワー数は1310万人です。最近は米国に移住してインフルエンサーとして活動しています。

インタビュー動画はこちらです。インタビューはロシア語で行われています。1時間以上のインタビューですが、問題になっているのは1時間1分過ぎのやりとりです。

РЕНАТА РИ О ЛИЦЕМЕРИИ XO, ИЗМЕНЕ С ГЭРИ И ОНЛИФАНС

問題のやりとりを切り出し、英語の字幕をつけたものがこちらのgraysons projectsの動画の5:02から挿入されています。

What's Happening With Renata Ri (riwww)

「最近誰かと付き合ってる?」と聞かれたレナータは、「長いことヤッてない。だってブサい黒人しかいないんだもん。」と答えています。ここで「ブサい黒人(ugly black men)」と訳されたところでNワードを使っていると指摘され、騒動になっていました。

レナータはロシア語ではなんと言っていたのでしょうか? graysons projectsの動画では、ロシア語では「黒人」を指す中立的な単語はнегрだが、レナータは侮蔑語のнеграを使っている、と指摘しています。

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釈明に追い込まれるレナータ

米国では人種差別問題は深刻で、差別発言は許されません。憤激した視聴者からレナータへ怒りのコメントが殺到し、レナータは釈明に追い込まれました。

こちらのTikTok投稿です。「ごめんなさい。英語が母語ではないので、至らない表現があり誤解を招いてしまいました。出回っている動画でNワードは言っていません。誰かを傷つけたり、不快にしたりするつもりはありませんでした。私は人種差別主義者ではありません。ロシアで育ったので、他の人種や異文化への配慮が欠けていたと、アメリカの友人から教えてもらいました。反省しています。」と語っています。

当初、問題のインタビュー動画が出回ったとき、レナータは「訳が間違っている。」と釈明していました。

しかし他のロシア・英語の両方ができる人たちから「訳は合っている」と指摘され、今回の謝罪に至っています。レナータは「文脈が違う、というつもりで訳が間違っていると言ったつもりだった」と改めて謝罪しています。

本当に差別用語を使ったのか?

レナータは差別用語を発したという主張と、差別用語を発していないという主張のどちらが正しいのでしょうか?

graysons projectsの動画では、негрは中立的な単語でнеграは侮蔑的、と言われていました。しかし、実はнеграという語は辞書にはありません(негрの単数生格・対格ではありますが)。

レナータが言っていたのは“негры стремные”(ニェグルィ・ストリョムヌィエ)でした。これが「ugly black men」と訳されています。

レナータの使ったнегр(ニェグル)は英語のblack (people)にあたる語です。語源を遠くさかのぼればラテン語のniger(黒い)にたどりつき、英語のNワードともつながっています。しかし、Wiktionaryなど辞書ではнегрは単純に「黒人」を指し、差別的意味合いはないとされています1。つまり、差別用語のNワードを使ったという指摘は正しくありません。場合によってはнегрよりтемнокожийとかчернокожий(「黒色人種」)と呼ぶ方が品がよいとはされていますが、これは「黒人」より「アフリカ系」の方が好ましいこともあるという程度です。

ではgraysons projectsの「негрは中立的な単語でнеграは侮蔑的」はどこから来たのでしょうか? どうやらこの記事などの誤情報にだまされてしまったようです。

つまり、レナータがロシア語のNワードを言ったというのは言いがかりでした。Nワードと音が近い単語だったので大炎上してしまいましたが、негрそのものはロシア語では問題なかったのです。

しかしレナータの発言は差別的

ここまで見てくると、この事件は伝言ゲームで火のないところに煙が立ち、炎上が大きくなってしまった例の一つのように見えます。

しかしだからといってレナータの発言が問題なしとなるわけではありません。

レナータの放ったнегры стремные(「ブサい黒人」)は非常に問題のある言い回しです。レナータは「ブサい男」とだけ言えば十分なはずのところでわざわざ「ブサい黒人」と言っています。それは差別意識のあらわれにほかなりません。Nワードを言っていないのは確かですが、差別的なのも間違いないのです。

graysons projectsのコメント欄では、ロシア語話者を名乗り、「ロシアは均質な国で、そのため自然と自分たちと違うものに対して差別的になってしまう」と説明している人もいました。米国は多様性の高い国です。米国の外では問題ないことでも米国では問題になることが少なくありません。米国でも活動するつもりなら自国では問題なかったことにも気をつける必要があります。

  1. スペイン語のnegroも同じ語源を持つが、単に「黒い」という形容詞である。
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