退屈したサルはネオナチの手先?NFTアートの代表格BAYCと創設者が問題に

社会・政治

巷で話題のおサルさんたちは実はネオナチの手先だ!と告発されています。……冗談のようですが、本当に告発されています。ただし、おサルさんたちが本当にネオナチの手先だと断定まではできません。

おサルさんというのは、最近セレブが宣伝し、見せびらかしている、ボアード・エイプ・ヨット・クラブ(退屈したサルのヨットクラブ、Bored Ape Yacht Club、BAYC)です。NFTアートの一種です。NFTアートとは、一言で言えば、デジタルアートに所有権の証明書がついているようなものです。詳しくはこちらの記事をごらんください。

こちらがジャスティン・ビーバーの宣伝したおサルさんです。

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パリス・ヒルトンも(本サイト記事)、グウィネス・パルトローも(本サイト記事)宣伝しています。

この手のおサルさんの絵が1万個ほどあり、その所有権が一つ数千万円で取引されています。時価総額$4B(約5000億円)とされています。

なぜこんな電子紙クズが高騰するのかはさておき、なぜおサルさんたちはネオナチの手先だと言われているのでしょうか? 以下、紹介します。

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告発者は?

BAYCを告発したのはライダー・リップス(Ryder Ripps)氏です。リップス氏はアーティストで、アゼリア・バンクスの元彼です(公式サイトはこちら)。二人は性行為中の音声をNFTアートとして売り出したことがあります。この件については、こちらの記事をごらんください。告発者はNFTアート関係者であるわけです。

リップス氏はこちらの告発サイトを立ち上げています。なお、HTMLソースを開くと面白いものが見られますので興味のある方はごらんください。

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ナチのシンボル

リップス氏が最大の問題として挙げているのはナチやネオナチをイメージさせるシンボルが多数含まれていることです。

最大の例がこちらのロゴです。左がBAYC、右側が親衛隊髑髏部隊の徽章です。親衛隊髑髏部隊はナチス政権で、強制収容所の監督を担当していました。

BAYCと親衛隊髑髏部隊

出典:リップス氏のサイト

類似したデザインです1

「サル」というモチーフ

リップス氏によれば「サル」のモチーフも問題です。異人種をサル扱いするのは差別的言説でよくあります。特に近年、米国では黒人をサルにたとえる差別発言がよく問題になります。

太平洋戦争中に、米国で日本軍・日本人を(しばしば醜い)サルとして表す宣伝がされていたことを想起する人もいます2

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(2022年11月28日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)

旭日旗をあしらったデザインや「神風」のはちまきが問題だと指摘する声もあります。

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(2022年11月28日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)

特攻隊員もまた戦争の被害者なのに、このはちまきを「スシバーのシェフのはちまき」と呼ばわりするのはいかがなものか、というまっとうな指摘もあります。

論争をあえて起こそうとしているのでしょうか?

共同創設者の名前

共同創設者の一人のTwitterアカウントはGargamel(ガーガメル)という名前です。これは元々『スマーフ』の登場人物の名前ですが、しばしば差別的な文脈でユダヤ人を指すのに使われます。

共同創設者の別の一人のアカウント名はEmperorTomatoKetchup(トマトケチャップ皇帝)です。この名前は寺山修司の1971年の映画『トマトケチャップ皇帝』からきています3。これは子どもたちが大人を虐待する国の話です。過激なシーンを含み、国によっては児童ポルノに指定されています。

また別の共同創設者のアカウント名はGordon Goner4ですが、その理由は「ジョーイ・ラモーンに似た名前だから」だそうです。しかし、特に似ていません。リップス氏はこれが差別的な文脈で使われる語のアナグラムになっていると指摘しています。

BAYCを制作している会社名にもリップス氏は注目しています。BAYCを制作しているのはYuga Labsですが、このYugaはヒンドゥー教の世界把握における時代区分の一つ、カリ・ユガに由来しています。カリ・ユガはオルタナ右翼の好んで使う用語だとリップス氏は指摘しています5

共同創設者は男性ばかりで、女性アーティストは最近まで名前をクレジットされず、最近になって共同経営者に女性を入れたが多分これは弾よけにするためだろう、ともリップス氏は指摘しています。

総合すると……

証拠は多く、確かに差別的なシンボルが多数含まれているようです。しかし一方で、設立者にネオナチやオルタナ右翼を宣伝する意図があったとまでは断定できないかもしれません。証拠にもやや牽強付会と思われるところがあります6

しかし、設立者が完全に潔白だともいえません。ネオナチやオルタナ右翼のシンボルはアングラな掲示板7では露悪的に喜ばれ、ミーム化しています。設立者が露悪的なミームを意図的に選んだと見るのは正当でしょう。設立者は、常識的な人々が眉をひそめるだろうと想像して喜ぶ連中なのかもしれません。

リップス氏は、「(第一次大戦の頃の)ドイツ軍のヘルメットとドイツ帝国軍旗を学校に持って行ったらナチだって言われた。あいつら第一次大戦と第二次大戦の違いもわかってねぇの。」と書かれた写真について、「確かにこのヘルメットは第一次大戦までのものだが、ナチス政権もドイツ帝国軍旗の意匠を使っていた。ナチスがシンボルにしたものをわざわざ学校に持って行くのは騒ぎを起こしたかったからだろう。何を考えているんだ?」と反論する文章をツイートしています。

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(2022年11月13日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)

BAYCでもドイツ帝国軍のヘルメットをかぶったサルがいます。ほかにも「神風」はちまきをはじめとして、普通なら避けた方がよいと判断する意匠が含まれます。

人々が眉をひそめさせて喜ぶ連中があぶく銭を手にしています。唾棄すべき構図です。

Image: Bored Ape NFTs are Made by 4chan NEO-NAZIS!? Investigating Why Ape NFTs are using Fascist Imagery

  1. リップス氏は歯が18本描かれているのもヘイトのシンボルであると述べている(参考サイト)。その他、リップス氏はBAYCと同じ制作者によるゲームでハーケンクロイツの形に並んだバナナが出てくることや、BAYCの公的な開始日がヒトラーの死んだ4月30日であるとされていること(実際にはそれ以前から稼働していたのに)も指摘している。
  2. 米国は日本と同様にドイツやイタリアとも戦争をしていたが、これらの国々をサルとして表すことは日本をサルとして表すより少なかったとされている。人種的な意図があると考えられる。
  3. 『トマトケチャップ皇帝』には英語版ウィキペディアページがあり、ドイツ語版・フランス語版・中国語版もあるようだが、不思議なことに日本語版がない。
  4. リップス氏はGordon Gonerの名前で検索したとき出てくるように告発サイトのドメインをgordongoner.comに設定している。
  5. オルタナ右翼とヒンドゥー教の関連についてはこちらの外部記事などを参照。
  6. ウィトゲンシュタインとヒトラーの関係についての記述は本記事執筆時点で告発サイトではコメント化されていた。
  7. 4chanなど。
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