2020年アメリカ大統領選挙で誰に投票するか?ヒスパニックの若者たちの声を聞く

社会・政治

2020年最大の政治イベント、アメリカ大統領選挙がほぼ決着しました1。1億5000万人以上が投票し、投票率は120年ぶりの高さとなりました。一人一人の投票者は何を考え、何を願って投票したのでしょうか?

米国ではヒスパニック(ラティーノ、ラティーナ2)の人口が急増しています。2017年には米国の人口の18%をヒスパニックが占めており、ヒスパニック人口は急増中です。2050年にはヒスパニックの割合は30%を超えると推計されています。

このように急増するヒスパニックは選挙の鍵を握りますが、もちろん彼らは一様な集団ではなく、多様な背景を持った人々です3

BBC News Mundoが18歳になり新たに選挙権を得た5人のヒスパニックの若者たちに意見を聞いています。動画の冒頭では米国では30秒に一人のヒスパニックが18歳になり選挙権を得ると紹介されています。

Qué opinan 5 latinos que votan por 1ª vez sobre las elecciones en EE.UU.

この動画はオンラインで行われたインタビューをまとめたものです。4人は英語、1人はスペイン語で答えています。この動画は投票の数日前に公開されました。

ポーリーナ

ポーリーナ・ディエス(Paulina Díez)さんはマイアミ(フロリダ州)在住です。両親は何も持たず米国にやってきて、アメリカン・ドリームを実現したそうです。

ポーリーナさんはトランプ大統領を支持していると言うのは憂鬱だけれど、新型コロナウイルスの感染が広がる前の社会的な自由を取り戻したい、と言います。社会主義4は米国の抱える問題の答えにならないと考えています。不法移民(illegal immigrants)に無料の医療が与えるべきではない、その金を払うのは私だろう、と語っています。誰だってアメリカン・ドリームを実現できるはず、と考えています。

ポーラ

ポーラ・ハイメ(Paola Jaime)さんはLA生まれ、LA育ちです。ヒスパニックの多いBoyle Heightsに住んでいます。以前はポーラさんの家族は小さなアパート(実はガレージ)に住んでいました。

ポーラさんはバイデン元副大統領に投票するつもりです。彼を強く支持しているわけではありませんが、ほかの候補者よりはずっとよいと思っています。ブラック・ライブズ・マター運動に参加したとき、強いエネルギーを感じたと言います。選挙の後、もっと政治に関心を人々が持つようになってもらいたいそうです。誰もが質の高い教育を受けられるようになってほしい、記録されていない移民(undocumented immigrants)の親子が離ればなれにならないようにしてほしい、私たちと同じような政治家に出てきてもらいたい、と言います。

ロヘリオ

ロヘリオ・ペドラ(Rogelio Piedra)さんはウィリストン(ノースダコタ州)在住です。小さな町で、ヒスパニックはあまり住んでいません。釣りと猟が趣味で、銃も持っています。

ロヘリオさんはトランプ大統領に投票するつもりです。ドナルド・トランプ・ジュニアと一緒に撮った写真もあります。ロヘリオさんは石油業界で働いています。自己中心的に聞こえるかもしれないが、自分の利益になるように投票したいと言います5。共和党支持者ではないけれど、民主党と共和党の中間がないのでこの選択になったそうです。トランプ大統領に賛成しているわけではないし、ヒスパニックだから攻撃されているように感じることもある、でも希望を持たねばならない、と言います。

ギリェルモ

ギリェルモ・バラデス(Guillermo Valadez)さんだけがスペイン語で答えています。ミルウォーキー(ウィスコンシン州)で育ちました。両親はメキシコのハリスコ州出身です。

ミルウォーキーについては、誰もが逃げ出したくなるようなところで、移民と有色人種に対する差別がはっきりあると語っています。ギリェルモさんの職場の同僚は99%が共和党支持者です。警察が人々を扱うやり方を変えてほしいそうです。自宅に警察官が来てピストルを向けられたことがあると言います。バーニー・サンダース上院議員の皆保険を目指す政策が好きだそうです。

ナタリー

ナタリー・フェルナンデス(Natalí Fernández)さんはマイアミ(フロリダ州)在住です。住んでいるのはヒスパニックの少ない地域だそうです。

家族の意見は分かれているけれど、自分はバイデン元副大統領に投票するつもりだとナタリーさんは言います。トランプ大統領が大統領になれた選挙システムは考え直さなければならない、自分がアメリカ人であることにもっと誇りを持てるようになりたいと言います。アメリカン・ドリームを称揚する人は、誰もが同じ条件が与えられているわけではないことに目を向けてほしいと語ります。「私たちにはできた。なぜ彼らにはできないのか?」と言うのは間違いだと言います。

まとめ

同じ18歳のヒスパニックといっても、境遇も意見も様々です。支持する候補者も違いますし、理想とする政策も違います。「不法移民(illegal immigrants)」と「移民(undocumented immigrants)」は指すものは同じですが、意図はかなり異なります。

迷いながらよく考えて選択をした人が多いように見えます。彼らの中に多様なアメリカと、多様なアメリカの理想があることが感じられます。

アメリカでスペイン語話者が増えていることについてはこちらの記事をごらんください。

アメリカの公用語は?もちろん英語…じゃない⁈動画で学ぶ米国の言語
米国で一番話されている言語は、今や世界の共通語となった英語(アメリカ英語)です。しかし、それだけではありません。アメリカでは今、スペイン語話者が急速に増えています。また実はフランス語やドイツ語、そしてもちろんネイティブアメリカンの言語も多く...

  1. 予測不能なことが起こる可能性はまだ残っているが、なにしろ予測不能であるので何も言えない。
  2. 米国では中南米にルーツのある人々は、総称してヒスパニック、もしくは、男性はラティーノ(latino)、女性はラティーナ(latina)と呼ばれる。両者を総称してlatinxと呼ばれることも多い。
  3. 米国では移民は民主党を支持する傾向があるとされるが、事情は単純ではない。ヒスパニックは共和党のキリスト教保守思想に親和性が高く、特にフロリダに多いキューバ難民は共和党の岩盤支持層である。
  4. 民主党の政策はしばしば共和党からは社会主義的だと批判される。
  5. トランプ大統領は石油業界を優遇し、バイデン元副大統領は石油業界は優遇しないと見込まれている。
タイトルとURLをコピーしました