デミ・ムーアとマーガレット・クアリーが主演を務める映画『The Substance』が話題になっています。主人公が違法ドラッグ「ザ・サブスタンス」を打つことで新たな若い女に生まれ変わることからストーリーが展開します。
映画を観た人は「誰しも感じる老いへの抵抗をここまでグロテスクに表現する映画は初めて」「ハリウッドへの風刺なのか、家父長制への批判なのか」と感想を述べています。予告編はこちらです。
The Substance
主人公のエリザベス・スパークル(Elisabeth Sparkle)を演じるのはデミ・ムーアです。ダンス番組の看板ダンサーを務めるエリザベスですが、50歳の誕生日に番組を降ろされます。理由は「年寄りだから」。もっと若く美人で溌剌とした女を出せと悪役のプロデューサー、ハーヴェイが話しているところをエリザベスはトイレの中で聞いてしまいます。
悪役のプロデューサー、ハーヴェイを演じるのはデニス・クエイドです1。デニスは私生活ではトランプ支持者で、遊説に参加したこともあります。そのデニスがハーヴェイ・ワインスタインを思わせるプロデューサー役を務めたのはわざとなのか、偶然なのか気になります。
落ち込んだエリザベスは違法ドラッグに手を出し、自分の若い分身スーを手に入れます。スーを演じるのはマーガレット・クアリーです。マーガレットは私生活ではテイラー・スウィフトの常連プロデューサー、ジャック・アントノフと結婚しています。
スーが誕生するシーンも大変グロテスクです。この映画は食事中に観ない方が良いです。
映画のテーマは?
脚本、監督を務めたのはコラリー・ファルジャです。ファルジャはこの映画について自身が体験したプレッシャーや自己嫌悪を表現したかったと話しています。
小さな頃から歪んだ自己像に苦しんできました。常に自分のどこが足りないのかを考えていたのです。年齢を重ねる度に自分の至らなさを見つけてしまう。40代になり50代を目前にするとその考えがますます激しくなっていきました。自分は消えるしかないのか、これで終わりなのか、と。バカげた考えのようですが、本当に悩んでいました。でも、もうこの考え方に縛られてはダメだと区切りを付けたのです。
その歪んだ自己像と、老いた自分を虐めるような視線がエリザベスとスーの確執によって描かれています。映画では決して若さを追い求めるエリザベスや、若さを生かして名声を上げるスーを批判していません。一人の女性が生きている間に自分に課すプレッシャーや社会の反応を描いているのです。
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違法ドラッグ「ザ・サブスタンス」の正体は何なのか、について監督はこのように説明しています。
しかし、痩身を謳う商品や若さを保つと謳う商品は過去もこれからも消えることはありません。それらの商品の象徴として「ザ・サブスタンス」が描かれているそうです。
ここまでの内容はMadMorph Movie Clubが動画で紹介しています。
『ザ・サブスタンス』は放送映画批評家協会賞の7部門でノミネートされています。
‘THE SUBSTANCE’ is nominated for 7 Critics Choice Awards
Best Picture
Best Actress – Demi Moore
Best Supporting Actress – Margaret Qualley
Best Director – Coralie Fargeat
Best Original Screenplay
Best Hair and Makeup
Best Visual Effects pic.twitter.com/8eXRxa0XHM— Film Updates (@FilmUpdates) December 12, 2024
デミ・ムーアはさらにゴールデングローブ賞に主演女優賞でノミネートされています。ムーアはこの映画のメッセージとして「あなた以上のあなたは存在しないと伝えたい」と話しています。
Demi Moore says being back in the awards race after 35 years with her Golden Globe nom for “The Substance” is “icing on the cake.
“I am 62, and I’m just inside myself living and trying to be the best version I can possibly be. In doing so, I hope that I can be part of setting… pic.twitter.com/jeHhEGuX21
— Variety (@Variety) December 9, 2024
エリザベスとスーは劇中で殴り合いをするシーンがありますが、このシーンこそ「自らを虐める人の姿」の象徴で胸が痛くなりました。監督の言うとおり、自分を受け入れ、肯定して生きていく方が、否定して虐めるよりも健全なのでしょう。他者からはなかなか理解できない自己の歪みをこれでもかと『ザ・サブスタンス』は描いています。
日本での公開は2025年初夏の予定です。
注
- 本来、この役はレイ・リオッタが演じる予定だったが他界したのでクエイドに代わった。