自分で試せる心理実験、プルフリッヒ効果・クロノスタシス・ピノキオ効果・シルエット錯視を紹介する。
動画で楽しめる心理実験の紹介です。自由研究のヒントにもなるかもしれません。
心理学の実験の中には、高度な実験装置を使わなくてもできるものが結構あります。昔は映写機がなければできなかった実験も、今では動画を見るだけで体験できます。錯覚の起こるメカニズムを解説してくれている動画もたくさんあります。
プルフリッヒ効果(Pulfrich effect)
この動画を観る前に、眼鏡かサングラスを用意して、片目だけ色の濃いフィルタをかけてください。片目だけセロファンを通して見るのでもかまいません。
特別なカメラで撮影したのでも特別なディスプレイで映したのでもないのに、奥行きがあって三次元的に見えます。なぜでしょうか?
この動画は錯覚が起こる映像を見せつつ、錯覚のメカニズムも説明しています。
色の濃いフィルタのかかっている側の目に見えたものの情報は、フィルタのかかっていない側の目に見えたものの情報よりも少しだけ遅れて脳で処理されます。すると、フィルタのかかった側の目ではフィルタのかかっていない側の目より一瞬前の画像を見ていることになります。これをプルフリッヒ効果(Pulfrich effect)といいます。
この動画ではカメラは一点を中心に回転するように風景を撮っています。すると、フィルタのかかった側の目はかかっていない側の目とは少しだけ横にずれた映像を見ることになります。現実の物体を見ている時のように左右の目が少しだけ横にずれたものを見ることになるので、立体感が出ます。
つまり、カメラを動かすのをやめると三次元的に見えなくなります。実際この動画ではカメラが止まると確かに立体感がなくなるのを確認できます。
少し工夫すれば、同じような効果の出る映像をスマホで撮影できます。どれぐらいのスピードがちょうどよいのでしょうか? 動画の明るさはどれぐらいがよいのでしょうか? どれぐらいの濃さのフィルタを使うとはっきり立体感が出るでしょうか? いろいろ試せます。
クロノスタシス(止まった時計の錯覚)
ふと時計を見ると、秒針が止まっているように見えた経験はありませんか? 秒針は一秒ごとに動くはずなのに、時計を見ると秒針はずいぶん長い間止まっていて、それからようやく一秒間隔で動き始めるように見えることがあります。これはクロノスタシス(chronostasis)と呼ばれる現象です。Stopped-clock illusion(止まった時計の錯覚)とも言います。
こちらの動画では、この現象を解説しています。
なぜこんなことが起こるのでしょう? それは、脳が見ていない間の情報を補っているからです。
私たちは起きている間、いつでも「もの」がちゃんと見えているように感じていますが、実は違います。目はある一点を見続けた後、急に動いて別の場所を見るような動きをします。この急な動きをサッケードといいます。
サッケードの間は動きが激しすぎるので、ものはよく見えません。サッケードの間はものがよく見えないのですが、脳はサッケードが終わった後で見えたものがサッケードの間も見えていたことにしてしまいます。すると、サッケードした直後に見えた時計の針がサッケードの間中ずっと見えていたことになり、長い間針が止まっていたように感じてしまうのです。
脳はいつでもその瞬間起こったことに気づいているのではなく、後で起こったことで前に起こったことを書き換えてしまうのですね。
1秒ごとに動く時計の針の代わりに、2秒ごとや0.5秒ごとに動くものを使ったら見え方はどのように変わるでしょうか? 試してみてください。
ピノキオ錯覚
錯覚というと目の錯覚が多いですが、こちらの動画で紹介されているのは触覚の錯覚です。
この動画では生理学的な原理から説明が始まっています。筋肉の中には筋紡錘と呼ばれる器官があります。この器官は筋肉が伸びたことを検知します。この器官は筋肉が実際に伸びたときだけでなく、筋肉が細かく振動したときにも活動します。すると、脳はこの筋肉が伸びたと錯覚します。
鼻を指でつまんで、上腕二頭筋(力こぶの部分)にマッサージ器などで振動を与えるとどうなるでしょうか。このとき、腕の位置はそのままなのに腕が伸びたように感じるので、鼻が伸びたと感じる錯覚が生じます(ただし、感じ方は人によるようです)。これをピノキオ錯覚といいます。
どこをどのように振動させると錯覚が出るでしょうか? また、反対側の筋肉に振動を与えると逆の感覚が生ずるのでしょうか? 実験できることがいろいろありそうですね。
この動画では、両手を交差させてものを掴んでいるとき、一方の手が刺激された瞬間にその手を見る目の動きが曲線的になるという実験や、プリズムを使った実験も紹介されています。
TikTokで話題になった動画
こちらの動画ではブランコをこぐ人がこっち側を向いているのか、向こう側を向いているのかが話題になっています。
2019年12月にTikTokやTwitterで大論争になっていました。
(2021年7月4日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)
これはシルエット錯視(silhouette illusionまたはスピニング・ダンサーThe Spinning Dancer)と呼ばれる錯覚と類似のものです。
影絵の女性が右回りに回っているように見える人も、左回りに回っているように見える人もいます。ときどき回転が逆向きになるように感じる人もいます。
なぜそのような違いが発生するのでしょう? それは、回転がどちら向きだったとしても同じ影絵になるからです。つまり、どちら向きと解釈してもかまわないのです。この動画の後半では手がかりを追加して右回りと左回りにそれぞれ見えやすくしています。
3Dソフトを使えばこのような影絵を作れます。試してみましょう。
紹介した動画以外にもYouTubeには楽しい錯覚の動画がたくさんあります。“Optical illusion”や“McGurk effect”や“phi phenomenon”などのキーワードで検索してみてください。