クリプトランドがうさんくさい 夢の暗号通貨島の宣伝動画がネタまみれでツッコまれる

テック・科学

これは暗号通貨詐欺を皮肉った風刺? それとも本気の詐欺? YouTuberが騒然としている怪作があります。あなたもその目で確かめてください。

Cryptoland(クリプトランド)へようこそ──南の島に降り立った青年が愉快なキャラクターに案内され、世界初!の暗号通貨の島を巡るアニメです。ミュージカル仕立てで、冒険あり、ロマンスありの感動巨編(?)ですが、すべてがうさんくさいのです。

スポンサーリンク

クリプトランドの紹介アニメの内容は?

アニメは暗号通貨(仮想通貨・暗号資産)で島の土地を買って移住し、夢の体験をしよう!という内容です。アニメの前後に創設者のスピーチとプロモ映像が入っています。

オリジナルは削除されてしまいましたが、コピーが再投稿されています。

recovered youtube x26fUL_YB14

(2022年7月10日:削除されたYouTube動画をキャプチャ画像で置き換えました。)

アニメは、主人公のクリストファー君が現地に向かうヘリの座席で「創設者の宣伝を見てその場で買っちゃったんだよね」と言っているところから始まります。いいカモだ……。

創設者のコニーはコインの形をしたキャラクターで、クリストファーをヘリポートで迎えてくれます。クリストファーは部屋のキーを受け取り、迎えに来た車でブロックチェイン・ヒルズ1を目指します。NFTアートが飾られた部屋を一瞥した後、コワーキングスペース兼カンファレンスホールをのぞき、レストランに入ります。

なんとそこに素敵な女の子が! クリストファーは一瞬で夢中になりますが、女の子はどこかへ行ってしまいます。

ピザを食べた後、コニーとクリストファーが浜辺をぶらぶらしていると、コニーは突如歌を歌い始めます。そう、皆さんお待ちかねミュージカルの時間です! キャッチーで盛り上がるメロディーにクリストファーもたまらず歌と踊りに加わります。……妙に『アラジン』の“Prince Ali”に似ていることには目をつぶりましょう。道理でキャッチーなわけだよ……。

踊り終わってミルクシェイクで一息ついたクリストファーとコニーはゲームセンターへ向かいます。ピンボールマシンやスロットマシンから『ゴッドファーザー』や『スーパーマリオ』にそっくりな音楽も流れますが、これも気づかなかったことにしましょう。

再び外に出てきた二人は、さっきの女の子がハードウェアウォレット(暗号通貨保存用のハードウェア)を鳥に持って行かれて困っているところに出くわします。クリストファーが機転を利かせて「ビットコインは終わったよ」と言うとびっくりした鳥の口からハードウェアウォレットが落ち、無事、女の子の手元に戻りました。

女の子はビアンカと名乗り、二人でかわいいボートに乗るところでお話は終わります。動画はこの後、できの悪いドキュメンタリーのような実写パートに入りますが、アニメほど面白くないので割愛します。

スポンサーリンク

おかしな点がいろいろ

このように紹介すると、よくできたプロモーション映像という気もしてくるのですが、変なところが随所にあります。

アニメのツッコミどころは盗作の曲だけではありません。アニメは、素人作品にしてはよくできており、プロの作品にしては手抜き過ぎるのが気になります。キャラクターはTurboSquidの売っている3Dモデルを使ったようで、一から作っているわけではないようです。

recovered tweet 1481887341622935554

(2024年11月17日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)

動画の実写パートでは30人の3Dアニメーターが一年かけて作った($50万ドル、約6000万円)と語られていますが、話を膨らましすぎのようです。ついでに言えば、キャラクターの声がこもっているように聞こえるときもあります。どのように制作されたのでしょう?

アニメは暗号通貨のネタをふんだんに盛り込んでいるのも解釈に苦しみます。面白いけど。

カーズ』のニセモノみたいな(というかニセモノそのものの)ランボルギーニが“to the moon”と叫び、レストランのメニュー2には、イーサリアム規格の名前のついた「ERC-20サラダ」、ビットコインが始まった当初、1万ビットコインでピザを買った人がいたことにちなんだ「1万Bitcoinピザ」、「フラッシュクラッシュソーダ」など、愉快な料理が並んでいます3

背景にはMtGoxBitconnectなど懐かしい事件がらみの名前も仕込まれています。

ピンボールマシンにあしらわれたスキンヘッドのおじさんはカルロス・マトス(Carlos Matos)で、Bitconnectのミーティングで大暴れしミームになった人物です。島のゲートの“hodler”という変な綴りや、トイレットペーパーがPAPERRRと表記されているのも暗号通貨のよく知られたミームです。

トイレの看板は“Shitcoin”(クソコイン)で、クリストファーがビアンカと最初に出会ったときの台詞「フォークは好きじゃない」はブロックチェーンのフォークのことですし、proof-of-workジムでは重りにASICと書かれています。いずれも暗号通貨の用語です。

ヴラディミルクラブ(Vladimir Club)という名前のクラブもあり、最後にクリストファーとビアンカが乗るボートはNFTアートのクリプトキティーの形です。ローソク足チャートのような模様のあるオブジェもあります。

暗号通貨のネタとミームとバズワードをありったけぶち込んだアニメは、視聴者をおびき寄せてカモにしたいのか、練り上げられた風刺をしているのか、今ひとつはっきりしません。

動画が奇妙なので、コメンタリーYouTuberのモイストクリティカル(MoistCr1TiKaL)やフィリオン(Philion)の格好のネタになってしまいました。

I Explored CRYPTOLAND Before it was Deleted

こちらのフィリオンの動画では、「この動画を見て以来、悪夢に出てくるんだよ。ヴラディミルクラブみたいなのがジェフリー・エプスタインの島にあったよね。」といじられています。

島の所有権がない?

クリプトランドが存在するのはフィジー共和国のビティレブ島から1km離れたナナヌイザケ島(Nananu-i-Cake)です。ナナヌイザケ島は約240ヘクタールで、$12M(約13億円)で売り出されています。この動画が話題になった時点で、ナナヌイザケ島は「売り出し中」でした。普通に考えればクリプトランドを作るためにこの動画を作った人々が島を買い取っていたはずですが、なせかまだ売り出し中のようです。所有権もないのに売り出していたのでしょうか? ……詐欺の匂いがします。

The (un)Believable Reality of CRYPTOLAND

クリプトランドの代表者は何者なのでしょう? 代表者を名乗るのはマックス・オリヴィエとエレナ・ロペス・フラドです。動画の実写パートに登場して投資家たちの前に立つ様子を見せています。打ち合わせの様子らしきイメージ映像も入っていますが、「(イメージ映像)」とどこかに書かれていそうでしらけます。

マックス・オリヴィエ(Max Olivier)、本名Maxim Oliver Jubin Coll(マクシム・オリベル・フビン・コル)はこちらの記事によれば、YouTuberが集まるPlay Awardsというイベントを主催していました。しかし、大物YouTuberのElrubiusのパパラッチをしたため、YouTuberたちから来場を拒否された前歴があります。エレナ・ロペス・フラド(Helena López Jurado)はPlay Awardsの共同設立者でした。二人はマックスの兄弟が監督した映画で共演したこともあります。

ところで全くの余談ですが、マックス・オリヴィエには英語版ウィキペディアページがあります。編集履歴によれば、Bob Clemenceというユーザーが2014年1月に作ったページです。このユーザーが英語版ウィキペディアで最初にしたことがマックス・オリヴィエのページを作ることでした。その後、数個ほかのページを編集したものの、2016年8月に最後に編集したのもマックス・オリヴィエのページで、最後の丸2年間はマックス・オリヴィエのページ以外編集していません。本人だこれ。

クリプトランドの土地を買ったと主張しているカイル・シャセ(Kyle Chassé)なる人物がいます。こちらの動画です。

recovered youtube 3J2na0bKlYA

(2022年5月1日:削除されたYouTube動画をキャプチャ画像で置き換えました。)

暗号通貨界隈では有名人で、要するにうさんくさい人です。

でたらめな運営

このように関係者は怪しい人物ばかりです。当然、運営も無秩序なようです。

「クリプトランドの性的同意年齢はいくつですか?」という問いに「精神年齢が高ければ十分!」と公式Twitterアカウントが答えていました。

recovered tweet 1480292259622834182

(2024年2月18日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)

その後、「性的同意年齢(age of concent)」をスタッフが「クリプトランドのコインを購入できる年齢」だと誤解したと釈明し、さらに「誤情報で私たちの素晴らしい計画を台無しにしようとするのはやめてください」という声明を出しました。

このやりとりも含めて壮大な風刺のようでもありますが、本気であぶく銭をつかみに来ているようにも見えます。結局のところ、風刺なのか、本物の詐欺なのか、あるいは実は大真面目でやっているのか、誰にもわかりません。代表者の二人も、本当の代表者なのか、黒幕の操り人形なのか不明です。

再投稿された動画のコメント欄に、「風刺か詐欺かわからないこんな動画が出てくるからコメディが死ぬんだ」という意見がありました。同感です。

こちらのTwitterスレッドでも逐一ツッコミが入れられています。ホワイトペーパーも読み込んだ労作です。興味のある方はごらんください。本記事を書くにあたって参考にしました。

  1. The Guardianの記事ではhillsといっても丘は一個しかない、とツッコミが入っている。
  2. メニューはご丁寧に“Order Book”と名付けられているが、オーダーブックとは取引所の売り買い価格のリストのことである。
  3. “Rat poison”と書かれた皿が出てくるが、これはチャーリー・マンガーが暗号資産をそう呼んだことから来ている。
  4. Diddleの意味は「だます」「性交する」である。
タイトルとURLをコピーしました